11/30 抄読会

TMDU統合感染症学分野です。

今日は2週に1回の抄読会がありました。
JAMA network openで掲載された手指衛生の論文を井手先生が担当されましたので紹介します。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37883088/

MRSAなど接触感染を起こす病原体が検出された部屋では接触感染対策(contact precaution; CP)が必要で、手袋やガウンの着用を行います。患者さんの部屋への入室前には通常、手指衛生を行いますので、手指衛生→非滅菌手袋着用という流れになります。手袋着用前に手指衛生をすべきという明確な記載はないのですが、入室時には手指衛生を行わなくても手袋の汚染率は変わらなかったという報告(AJIC 2013;41:994-6)もあり、手袋着用のみでよいとしたら順守率は変わるのかというテーマでした。

まずはベースラインの順守率(table 1)がそもそも3割以下のところも多いことが気になる点でした。ERで8%というのは驚きです。
介入である、手袋のみでよいというルール設定をしたときの順守率(この順守率は手袋だけでなく、手指衛生も行った場合にカウントとしています)は、ルール設定をしなかった場合よりも有意に高くなりました(41% vs 87%, p<0.001)(Table 2)。
ただし、部署別で見てみると、手袋のみとした場合には手袋からの病原体の検出率や菌量(コロニー数)が特にERでは増えたとしています(Table 3)。

手袋のみでよいとすると、手指衛生率までも上昇するという不思議な結果でした。ただし、ERでは菌の検出率や菌量という点では逆の結果となっており、すべての病棟に適応できるのかということはまだ疑問がのこるという結論でした。

感染対策のテーマなので、かなりdiscussionが盛り上がったためすべては記載できませんが、以下のような意見がでました。

・感染制御的な観点では、臨床的なハードアウトカムが分からないので(この方法で手指衛生の順守率を上げることが、耐性菌の検出率や患者さんの予後などを改善するかどうか)、日本など特に手指衛生の順守率が低い状況では導入しにくそうプラクティスだと考える。そもそもWHOが推奨している5つの場面での手指衛生率を上げるほうが重要性が高い。
・ただし、公衆衛生的/行動科学的な観点では、やらなくてよいことを一つ増やすと、やってくれることが一つ増える(ー1+1の考え方?)という点では、医療従事者の行動変容を起こすためのヒントになるかもしれない。公衆
・病原体の検出の有無だけを見ているので、常在菌なのか、耐性菌なのかでclinical impactが変わりそう


ちなみに、同じグループから、グローブをしたままアルコールをしたらどうなるのかというstudyも同じ時期に出ていました。

https://www.cambridge.org/core/journals/infection-control-and-hospital-epidemiology/article/alcoholbased-decontamination-of-gloved-hands-a-randomized-controlled-trial/D33C5416360C0DBE943A7DC6328D7E98

当科のjournal clubは、journal clubが終わった後の雑談が非常に盛り上がっています!実はこの著者はこういう人で・・・この大学はこういう研究が盛んなところで・・・なぜこの研究はJAMA openに載ったのか(と想像するか)・・・など、記事には書けない裏話もたくさんでて面白かったです。

是非、見学に来られる際は木曜日(の隔週)がおすすめです!

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