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これは、デザインをしてはいけない。

こんにちは!まえだたかしといいます。

株式会社NASUというデザイン会社をやっていたり、前田デザイン室という約350人のクリエイターコミュニティをやっているデザイナーです。最近は「クリエイターを紹介してください!」と声をかけられることが増えました。

今回このnoteを書こうと思ったきっかけは、ロゴの提案をする時、ふと「あ〜、僕はこんな提案の仕方もするのか」と思ったからです。デザインの勉強してる人の気づきになれば幸いです。今、『勝てるデザイン(仮)』幻冬舎という本を書いていて、僕のデザインの価値の啓蒙活動の一つです。

デザイナーは、同じデザインの作り方をしない。

デザインの提案は、相手や状況にTPOに合わせて「デザインの仕方をカスタマイズ」する必要があります。いわば「デザインのデザイン」とでも言いましょうか。クライアントに親身になれる人ほど、意識してやってるわけではなく自然とそうなっていくものなのですが、まずは意識してやってみてください。

デザインっぽいだけのデザインが嫌い。

僕は、デザインっぽいだけのデザインがあんまり好きではないんです。というか嫌いです。デザイナーは「〇〇のデザインが好き」でデザイナーになったというきっかけの人が多い。僕の世代(現43歳)だとCDジャケットのデザインがしたいとかいう人が8割といっても過言ではない。だから、かっこいいデザインを作りたい、おしゃれなデザインしたいと大体なります。この気持ちは僕もよくわかりますが、やっぱりプロとしては健全ではないと思います。

なまじ「かっこいいデザイン」に一定の効果があるから、なおのこそ厄介で。「そうじゃないんだ〜」ってなります。かっこよくておしゃれな「だけ」なデザインは手抜きの基礎工事のようで脆いのです。

デザインをしてはいけないデザインを。

萩原清澄さん(以下、キヨトさん)が立ち上げた株式会社LUROWのロゴをデザインしました。僕は、今回「デザインをしてはいけない」と真っ先に思ったんです。

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(完成したロゴ)

キヨトさんは、赤坂の人気中国料理店Wakiyaの総支配人をやっていた人で、「アソビカタサロン」オーナーであり、渋谷の会員制パフェバー「Reamake easy」の仕掛け人でもあります。他にも様々な飲食ビジネスに携わっています。

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あ、忘れてはいけません。
前田プロデュースの「たかし餃子」もお世話になったのです。

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株式会社LUROW(ルロウ)のロゴデザイン

LUROWのロゴデザインの話に戻ります。ロゴデザインをする時は、通常ヒアリングから行います。ですが、今回は1秒たりとも打ち合わせをしていません。LINEにコンセプトが送られてきました。コンセプトが明快でヒアリングの必要がなかったんです。だから「デザインをしてはいけない」「今回は職人に徹したほうが良いな」と思った理由はそれです。それが今回の「デザインのデザイン」です。

意味1

意味2

(ロゴの提案資料より)

方針が「流浪の剣士」とハッキリと定まっていたので、ディレクションの必要が一切なかった。彼自身、コンサルティングやブランディングをしている人なので愚問ですよね。それにしても、自分のことは見えにくいはずなのに客観視ができてるところがさすがです。

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デザインは「思考」と「造形」で作られます。「思考」の部分はもうできている。あとは「造形」を磨くだけなのです。

今回は、2つの意味で「デザインをしてはいけないデザイン」なのです。

・思考をしない(造形のみに集中する)
・デザインっぽいデザインをしない

僕がやるべきことは職人に徹すること。いかに“LUROW”の世界観を伝えるべく、見え方を作っていくか。いや「作っていく」という表現より、と試行錯誤を繰り返し、最善の形を「選ぶ」が正しいかもしれない。今回最も制作に時間をかけたのは「書体選び」です。トータル、最低でも40時間はフォントを探していたと思います。めまいでクラクラしました。

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(ロゴの提案資料より)


ようやく見つかったフォントがこちら。MyFontsといいうアメリカのフォントストアで探し当てました。選定のポイントは、シャープさ(切れ味)、文字としてのクオリティ(歪さがないか)。「R」の払い(テール)がまさに刀だったのでこれがベストと判断した。

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もうひとつは「文字の組み方」です。このフォントでどう組むか。

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良いフォント(最高の食材)を選び、それをどう料理するか。変に凝った料理は避けた方がいいなと思いました。


検証はとても細かく無数の作業になりました。まさに刀鍛冶です。

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焼いて、打って、磨いての繰り返しです。

・近くで見たり
・離れてみたり
・壁に貼ってみたり
・地面に置いたり
・声に出してみたり
・名刺を作ってみたり
・キヨトさんのTwitterのタイムラインにおいてみたり…

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いろんなことを試していきます。
最後の方は酸素が薄くなる感覚に近い。息苦しくなりながら最終Fixします。

受け手にどう届くのか?

造形を美しくするだけではいけません。それが受け手にどう届くのか?も同時に考えます。

普通にフォントを並べるだけではどこかでみたアパレルブランドのようになったり、大きい変化はチャレンジ精神を感じさせます。「LUROW」という見慣れない文字列に感じたので、一文字ずつゆっくり認識させたいなとか。文字を整然と並べるより、流浪の殺陣のイメージさせたほうがイメージが伝わるかも?あらゆる受け手の想像を考えて造形を磨いていきます。

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デザインぽいデザインになってないか?という話で言えば、最後まで「o」に切れ目(スリット)を入れるか悩んだ。「流浪の剣士」だから切れ目(スリット)というのが当たり前のアイデアすぎて、でもそれはデザイナーとしてはおしゃれなアイデアを出したかがってるだけじゃないか?と何度も自問自答した。でも、今回は「流浪の剣士」を表現することに力を注ぐことが僕の仕事と決めた。スリットは表現する上でどうしても必要だと判断した。


こうしてLUROWのロゴは完成しました。

WEBサイトも同じ世界観で作っています。WEBデザインは、牧瀬誠也くんにお願いしました。僕はディレクションです。

今回のデザインの仕方は刀鍛冶職人

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今回の僕の仕事は刀鍛冶職人でした。なんども刀を焼き、叩き、磨き上げる。そんなデザインのデザインでした。今後、萩原清澄さんはこの刀を武器に、飲食業界を流浪していく。最強の流浪剣士の刀を作れたことは光栄でしかない。

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デザイナーは状況によって、「デザインのデザインを変える」というお話でした。前に書いた記事「それは、デザイン案ではない」(今でも定期的に読んでもらってる人気記事です。)では、短時間のスピード勝負であったため、方向性を探るためにいろんな切り口で提案をしました。

デザインの依頼が来たらまず、「デザインのデザイン」をどうしようかな?と考えてみるといいですよ。

ぜひ、試してみてくださいね。

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(名刺 黒箔/銀箔/用紙はキュリアススキン)
名刺のド真ん中を開けているのは、キヨトさんがクライアントの参謀になる。最強の裏方であることから。

(追伸)LUROWのロゴの提案資料は前田デザイン室で公開中!

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【ちなみに】※萩原清澄さんに提案した「プレゼン資料」を許可を得て、前田デザイン室にアップしています。前田デザイン室にはこうしたインプットのコンテンツもたくさんあります。よかったら入ってね!



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