ぼくと粗ドット。

任天堂時代から積み重ねてきた仮説と思考がありました。

ぼくがファミコン世代だからドット絵が惹かれるのか?そうじゃないのか?どうやら違うみたいだ。だって、ファミコン世代ではない若い人に聞いてもかわいいという。『スーパーマリオ3Dワールド』でもドット絵が出てきてかわいい。一世代前のインベーダーゲームのグラフィックはぼくもかわいいと思う。どうやら、懐かしいよりかわいいのだ。2018年2月、ふとファミコンのドット絵を粗くしてみた。ゲームのグラフィックは解像度が細かく進化していったが、これは逆進化だ。

ぼくにとってはゲームではなくおもちゃのブロックだということがわかった。これはぼくクリエイターとしてのフェチだった。「前田さんはPOPなデザインが得意ですよね?と言われるでも違うなと思って「トイチック」(造語)という言葉を作った。おもっちゃっぽい遊び心が感じられる表現だ。キャラクターはTheかわいいではなく、ちょっと間のぬけた感じがキュンとくる。

前田デザイン室を立ち上げる少し前に粗ドットを形にした。何者でもない自分のコミュニティの成功はビジョンや世界観だと考えていた。だから徹底的に作った。粗ドットは、クリエイティブを楽しむコミュニティにうってつけのビジュアルだった。風のうわさで聞いたのですが、どこかのクリエイターコミュニティの人たちがクオリティが低いと言っていたらしい。粗ドットだから正解だし、同じデザイナーなのにはたから見たらそんな解釈なんだなと残念に思った。

それでもぼくはしつこく粗ドットを使い続けた。前田デザイン室のみんなもいろんなプロジェクトで楽しんで使ってくれた。粗ドットに前デの文化が詰まっていた。設立から4年あまり。ぼくが考えてきたこと、初期中期にいた前デのみんながやってきたことをさらに磨き、粗ドットを進化させてくれたのはDOTOWN(ドッタウン)チームのみんなだ。「粗ドットとはなんなのか?」「前田さんはどういう意図で作ったのか?」「これまでのプロジェクトどう作ってきたのか?」それを徹底的に言語化し、前デに新しく入ったみんなに伝えてくれた。実はこの粗ドットは実は世界観を統一するのがとても難しい。それを700点以上もやってのけたのは本当にすごい。大変な制作を楽しくするためにことあるごとに「祭り」というワードを使い、みんなで同時に制作できるfigmaを使ったりしんどいことを楽しくできる天才的な取り組みが生まれた。

実は少し前まで「粗ドットという呼び名は本当にこれでいいのかな?」と前デ初期から自分的にはずっとしっくりきてなかった。でも、DOTOWN(ドッタウン)の開発をみていてしっくりくるようになった。そして、粗ドットの魅力を最大限伝えるWebデザイン、プロモーション。コミュニティとして「おもろ、たのし、いいな」であること。すべてにおいて「粗ドットの魅力」にこだわってくれたことがもっとも尊くでかい。抱きしめたい。

これまで粗ドットを大事にしてくれた前田デザイン室のみんな、本当にありがとう。それに気づかせてくれたDOTOWN(ドッタウン)チームのみんな、本当にありがとう。この5日間、毎日日本中のどこかでバズるという人生で貴重な体験をさせてもらった。脳がずっと震えていたよ。ありがとうね。感謝、感謝、感謝。

ぼくはずっと悩んでいることがある。「この人生でこれをやった」が欲しい。デザイナーとして誰もが知っている代表作が欲しいと持っている。もしかしたら確信に近い。

ぼくの代表作は「前田デザイン室」なのかもしれない。


前田デザイン室 室長 前田高志

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