即時性と再現性のある成約率を1.2倍上げる方法

会社の売上に直結する成約率は、弊社も含め多くの企業にとって最も重要であり、悩ましい課題でもあります。

実は弊社は約30の商談を行ったものの、月締めで受注ゼロという結果に陥ったことがあります。このままでは売上ゼロ!?と当月末から翌月にかけ、必死でこれまでのフローを点検し、成約率とそれを構成する要因を猛勉強したところ、結果翌月は10件受注が取れました。

この時の経験から、成約率改善のための操作が可能な変数は幅広くあると分かりました。また、商談前、商談中、商談後に加え長期フォローと、各段階で実施できる実務も多岐にわたります。しかしすべての施策が今日やって明日成果がでるものではないのです。

よくある施策として、営業力に長けた優秀な人材を獲得するため採用に注力、社員のスキルを上げるための研修等がありますが、これは必ずしもすぐに効果が表れる方法ではありません。

成約率を上げるため、今日始めて明日成果がでるくらい足の早い施策なら、営業プロセスの点検をする必要があります。一方中・長期的な改善には、営業のコンテンツ(内容)の見直しが必要となります。

この記事では、前者の足の早い施策である営業プロセスの点検の中から、最も簡単ですぐ始められる弊社オリジナルの概念とその具体的な方法を詳しくお伝えします。

あの時の弊社ほどではなくても、成約率にお困りのnote読者の方々に還元できればと思います。


受注に関する企業の課題


累計700社、現在100社様と関わる中、受注に関する課題で最も多いのは、担当者によって成約率が異なる新人が受注が取れない点と実感しています。

弊社も営業活動を行っていますので、同じような課題を持ち、過去に何度も営業担当者を変えています。そのため、担当者のスキルに左右されない再現性の高い成約率を上げる方法を模索してきました。

なぜなら今後事業を大きく展開していきたいと考えたとき、肝要となる成約率を強化しないわけにはいかないからです。

企業の営業システムは2種類に分類されます。ひとつは営業担当がリードの獲得から商談、受注まですべて行うシステム。もう一方はThe Model(ザ・モデル型)と呼ばれる分業制の営業組織です。

前者は、たとえば営業担当者の給与が50万円だとすれば、50万円以上の粗利が取れればいいのでシンプルですが、弊社を含むThe Model(ザ・モデル)型組織の場合はそう簡単にはいきません。

その理由は、商談を行うフィールドセールスのもとに1リードやってくるまでには、広告費、インサイドセールスの費用等がかかってくるからです。

たとえばフィールドセールス担当者が2名いるとします。1名は成約率が10%。もう1名は5%。その場合受注コストは2倍も変わります。

1件10万円かかった商談に携わる場合、成約率10%の担当者は1成約100万円、かたや5%の担当者には200万円のコストがかかるのです。1成約につき10万円の商談が10個必要な場合と20個必要な場合の差は明白でしょう。

100万円、200万円もしくはそれ以上といった金額は、企業の規模に関わらず、経済的に難しい指標となってきます。
さらに、成約率の低下は、経済的な悪化だけではなく、企業の存続をかけた未来をも左右します。

成約率の低下がもたらす多大な弊害

受注コストに最も影響するのが広告ということはご存知でしょう。参考までに弊社では、検索連動型の広告を使用しています。

検索連動型の広告とは、GoogleやYahoo!のユーザーが検索したキーワードに連動して広告が表示される仕組みで、広告がクリックされるごとに料金が発生します。弊社の場合CPA(リード単価)は1万5千円かかっていますが、これは費用対効果がいい数字と言えます。

けれども、検索連動型の広告に限らず、たとえうまくいっている施策でもひとつの施策で倍のリードを獲得することはできません。理由は広告を打てる量には上限があるからです。

となるとこれ以外の方法で広告を打つ以外、手段はありません。テレビCM、タクシー広告、ラジオ、雑誌等様々な広告がありますが、いずれも検索連動型の広告よりCPAが高くなり、それに伴い受注コストも上がります。
先ほどの例で具体的な数字を見てみましょう。あらたな方法で打った広告のCPAが、検索広告の倍の3万円とします。必然的に受注コストも倍の価格です。

つまり、CPAが1.5万円の場合に100万円だった受注コストは200万円に、200万円だった受注コストは400万円にも上がってしまいます。

受注コストが400万円という高額になった場合、販売している商品やサービスの粗利が追いつかない事象が起きてもまったく不思議ではありません。
また、1件400万円のコスト分をフィールドセールスが稼ぐという考えが厳しい数値にもなってきます。

もちろん同時に商品のLTV(顧客生涯価値)を高める施策も必要ですが、これに頼ることも厳しいでしょう。

すると結果的に、CPAが高くなることを理由にあらたな広告が打てず、事業の拡大は不可能に。企業にとって事業を拡大できないということは、やがて衰退の道を辿ることを意味します。つまり成約率が低い企業は、事業の拡大どころか次第に縮小の道を進むことになるのです。

けれども受注率さえ高ければ、高いCPAも許容することができるため、広告を追加しリードの数を増やすことで売上につなげ、新たな事業展開を望めます。

弊社オリジナルの受注率の概念とは

弊社では、成約率を次のような概念で捉えています。

成約率=受注ポテンシャル×訴求強度

詳しく解説していきましょう。

受注ポテンシャルとは、潜在的な受注の可能性を意味します。関連するものとしては、ターゲット、BANT状況(Budget予算、Authority決定権、Needs必要性、Timeframe導入時期),競合比較の3点です。

訴求強度とは、見込み客に対して発揮できている魅力を表します。いかに購入する理由を増やし、購入しない理由を減らすか。加えてナーチャリングによって訴求強度を上げていくことも可能でしょう。

これらを掛け合わせることで、成約率は驚くほど改善できます。

これからお伝えしていく成約率アップの施策は、営業支援サービスを提供する弊社が、自社の受注がまったく取れなかった時期に、分析、研究し導いた多くの施策のなかのひとつです。この記事では、様々なポイントで数ある施策の中でも、最も即時性と再現性があり、商談中にできる簡単なものを選びました。

弊社では、この施策のおかげで月間受注ゼロのピンチを切り抜け、現在もお客様の支援に役立っています。

次の項では、なぜ営業で最も重視されるヒアリング力に頼ることが得策ではないかをまとめています。

成約率アップに対する一般的な施策とは

成約率を上げようと考えたとき、まず思いつく施策は、営業に長けたより優秀な人材を採用することではないでしょうか。

ところが採用には、中堅以上の即戦力となる人材で、1人当たり平均約300万円~500万円もの金額がかかると言われています。そのようなコストをかけて入社した人物が、すぐに採用コスト以上の受注を取れる保証はありません。

加えて、営業において重視されるヒアリング力の改善に努めるかもしれません。確かにヒアリング力は成約率に関わる重要な要素で、優秀な営業担当者は一概に「ヒアリング力」が高いです。

しかし、ヒアリング力は担当者個人のスキルによるところが大きいのが問題です。熟練した営業担当者と経験の浅い担当者では、成約率に倍以上の差が出ることは珍しくありません。

新人教育に力を入れても、経験の浅い担当者が、見込み客をしっかりとヒアリングし、正しい解釈のもと情熱をもって話せるようになるには相当な熟練を必要とするでしょう。

また、いくらヒアリング力が高いフィールドセールス担当者でもたかが30分や1時間の商談で、人生の悩みやキャリア、会社の現状、コンプレックスなどすべてを話してくれる人はいません。実はヒアリングで聞き出せる課題は100個中せいぜい5個程度なのです。

ヒアリングで少しでも多くの課題を聞き出し信頼され、商談を成約に導くには、徹底した「SPIN話法」習得の必要性があります。

「SPIN話法」とは、顧客の潜在ニーズを引き出すためのヒアリング方法を指します。SはSituationの頭文字で、状況質問。Pは、Problem 問題質問。Iは、Implication のIで、示唆質問。NはNeed-Payoff 解決質問を指します。

ここでは詳細は省きますが、示唆質問は特にベテランでも難しいポイントとされており、初心者が習得するには一定の期間が必要でしょう。

これらの事実の下、スピード感を持って事業を拡大させたい場合、採用への注力とヒアリング力の強化だけに取り組むのは得策ではありません。

弊社も成約率に関しては創業時から同様の悩みがあり、試行錯誤を繰り返してきました。そんな経緯から、個人のスキルに依存せず、コストも時間もかけずにできる方法を見つけ、困ったときにまず最初にやってみる施策としています。

再現性の高い受注率を上げるたったひとつの方法とは

後の項で少しご紹介していますが、成約率を上げる方法は他にも多々あります。行うポイントも異なれば、短期的にできること、長期的に行うことなど色々です。その中から、今回は今日やって明日から、誰でも簡単に成果を上げる方法を知りたい方のための施策をご紹介します。

フィールドセールス担当者の経験やスキルに左右されず、初心者も熟練者も一定の成約率を上げられるその方法とは、「訴求点の打ち込み法」です。
まず「訴求点」は、大きく分けて2つに分けられます。

ひとつは魅力。もうひとつは懸念を払拭する点です。

具体的には、見込み客との商談の際に、「訴求点」の打ち込み回数をできるだけ増やすこと。簡単に言うと、訴求点である魅力と懸念を払拭する点をできるだけ多く盛り込みましょうということです。

コストも時間もかからず誰でもできる簡単な方法ですが、たったこれだけで成約率は1.2倍も異なります。

訴求点の数による商談結果の違い

実際に、弊社のトップ営業担当者とあまりうまくいっていない営業担当者の商談を録画し、細かく分析してみました。

その結果、うまくいっている営業担当者とうまくいっていない営業担当者では、商談内で伝えた訴求点の数が、なんと3倍も違ったのです。ちなみに同月の比較でトップ営業担当者は15件受注うまくいっていない営業担当者は、4件受注。結果に約4倍もの違いがあります。

 提供するサービス、商品の魅力的な点と、見込み客が懸念する点を払拭できるポイントを数多く伝えただけで、結果にこんなにも差が出るのです。

商談に訴求点を盛り込む具体的な方法

では次に、商談においてどのように訴求点を数多く伝えるのか、効果的な方法をお伝えします。

まず初めに、取り扱う商品やサービスの訴求点(魅力と見込み客の懸念を払拭するポイント)を思いつく限りすべて書き出します。それらを見やすくまとめ、あらかじめリストにしておくと、商談後の振り返りにも使えます。

このように訴求点を的確に押さえた上で、商談で具体的に話していきます。極論、できるだけ早口で訴求点をどんどん盛り込んでいくのが望ましいです。 

とはいえ「いや、やはり見込み客に刺さりそうな訴求点をあらかじめ選択して、伝える方がいいのでは?」と思うかもしれません。答えは「ノー」です。

なぜなら人は、概ね訴求点を聞き流しているので、たとえ訴求点の羅列を聞いても聞き苦しく感じることはありません。たとえば30個訴求点を盛り込んだとします。すると見込み客は、聞き流しながらも自分に関係のあるものを瞬時に判断し、自ら訴求点を5、6個拾ってくれるのです。自ら選んだそれらの訴求は、強い魅力づけとなり印象に残ります。

さらに、訴求ポイントを多く伝えることで、見込み客が自覚していない潜在的な課題に気付くことがあります。この場合、しつこい売り込みと捉えられるどころか、「自社の課題や問題点に気付かせてくれたありがたい存在」として感謝されることになるのです。

こうなると商談の結果はおのずと見えていると思いませんか?たとえ見込み客が他者の商談も受けていたとしても、選ばれるのは、訴求点を多く上げていない競合他社ではなく、見込み客に大事な気付きを与えた側です。

訴求は外れてもマイナスにならない

 多く伝えれば伝えるほど外れる訴求点が多くなるのは明白ですが、決してマイナスにはなりません

 例として、先日弊社で次のような出来事がありました。LPのテストツールを購入したのですが、そこには求めていなかった離脱防止用のポップアップもついていました。通常それだけで5~10万円するものが2、3万円。必要か不要かと言われれば不要ですが、あっても損ではないので購入に至りました。

同様の状況を想定すると、たとえば「弊社はサポートに力を入れています。優秀な人材を揃えています」と言ったとします。見込み客はツールにしか興味がなくても、あっても損にはならない無料特典のような感覚で受容するでしょう。

刺さらない訴求点もマイナスの印象にはならないのです。

同時に行うことで効果がさらに上がる改善

即時性のある簡単な方法をお伝えしてきましたが、同時に中・長期目線での改善も行うとより効果的です。

中・長期的な改善で必要となるのは、ナーチャリング活動の点検ターゲットとポジショニングの見直しです。これらの施策も即時性のある施策と並行して実施することで、効果はさらに揚がります。

ここでは深く取り上げませんが、即時性のある営業プロセスを点検する施策の中でも、点検するポイントは訴求点だけではありません。

簡単に行えるものだけでも、オファーと定期フォローの強化クロージングの徹底があります。さらに、価値提供と選別基準行動基準の強化といった中難度の施策や、課題抽出や選別の精度を上げていく難易度の高い施策も行う価値のある改善でしょう。

成約率を上げるために訴求点が最適な3つの理由

この記事では、再現性と即時性があり、コストもかからない成約率を上げる手段として、商談で訴求点をできるだけ多く伝えることをお伝えしました。この方法を推奨する理由は、以下の3点です。

  1. 個人の技量に関わりなく、成約率を上げられる

  2. 見込み客の潜在的な課題を刺激できる

  3. 訴求が外れても購入に至る

最大の理由は、成約率において最も重要とされるヒアリング力など、個人のスキルに頼るものではなく、営業初心者も熟練者も誰でも一定の結果が出せる方法だからという点です。

もうひとつは、訴求点を通して、見込み客自身も想定していなかった課題に気付き、感謝され、訴求点を重視していない競合他社より選ばれる存在になれる点です。

最後に、訴求が外れても決して受注にマイナスになることはないという点です。

つまり訴求点こそが企業の営業活動の最大のポイントです。今すぐ訴求点を洗い出し、次の商談から実践されることを推奨します。

今回は訴求点に絞ってお伝えしましたが、これ以外にも成約率を上げる方法は数々あります。今後お伝えしていきます。


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