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NO.32 映画《パバロッテイ 太陽のテノール》のこと

ルチアーノ・パバロッテイと言えばオペラ《ラ・ボエーム》のロドルフォ。
あの伸びのあるハイCの高音を初めて聴いた時は鳥肌が立った。

そして何よりホセ・カレーラスとプラシド・ドミンゴとの三大テノールの競演!
まさにエンターテイメントの極致だと感じた。

しかしそれ以上パバロッテイについて何を知っているかと問われると困ってしまう。
いや、何も知らなかったのだと、昨日から公開されたドキュメンタリー映画《パバロッテイ 太陽のテノール》を観て思った。

この映画では彼を良く知る家族やプロデューサー、彼と共演したオペラ歌手やロック歌手等が生前の彼の思い出を率直に語る。

そこには底抜けに明るく陽気でチャーミングなパバロッテイと共に、悩み惑う彼の姿も垣間見ることが出来てその意外な素顔にも心撃たれる。

世界中を飛び回るスターとして活躍した晩年、再びオペラに挑戦した時、観客はもはや全盛期を過ぎた彼に冷たかった。

しかし映画の最後近くで歌われる彼の代表作の一つオペラ《道化師》の中のアリア「衣装をつけろ」のこんな歌詞はまさに彼の人生と重なるようで深く僕の胸に沁みた。

「笑うんだ道化師よ
それでお客様は拍手喝采さ!
苦悩と涙をおどけに変えて
苦しみと嗚咽を作り笑いに変えてしまうんだ」

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