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NO.62 2023年のクリスマス・イブにリヒテルの弾く《平均律》を聴くこと




今日はクリスマス・イブ。(本来は12月25日の夜のようだけど…)


朝起きて今日はどんな音楽を聴こうかとぼんやり考えていて、ふいにリヒテルの弾くバッハの《平均律》が聴きたくなった。


ブログを見返すと、僕は世の中が大きく変わり心騒ぐ時にバッハの《平均律》が聴きたくなるようだ…


2011年3月の東日本大震災の後、しばらく音楽が聴けなくなった時、久しぶりに聴けたのは《平均律》だった。


2020年春、コロナ禍で緊急事態宣言が発令され在宅勤務となり不安な気持ちに襲われた時にもやはり《平均律》を聴きながら過ごしていた。


リヒテルの弾く《平均律》は、残響の多い録音のせいもあり、霧の向こうの側の遥か彼方から聴こえてくるような冒頭の音楽がとても神秘的で、まだバッハの音楽を聴くようになって間もない頃だったから「バッハの音楽はこんなにロマンティックな音楽だったのか」と驚いたことを、この演奏を聴くといつも思い出す。


バッハの音楽を初めて意識的に聴くようになってから20年以上経ったけれど、21世紀に入って以降、世界はますます騒然とし、この国の政治的混迷は増すばかりで、時折ふと「末世」という言葉が頭をよぎる…


まだ子どもの頃、「21世紀」という言葉には輝かしい未来というイメージがあったような気がするけれど、現実は随分かけ離れてしまったようだ…


そんないささか暗澹たる思いのよぎる2023年のクリスマス・イブに聴くリヒテルの弾くバッハの《平均律》は、少し寂しげだけど無限の慰めもまた与えてくれるように響くのでした。




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