見出し画像

NO.95 「ベートーヴェンによるアイルランドの歌」に出会った朝


今朝Spotifyでクラシック音楽のニューアルバムのアンソロジーを聴いていて、「ベートーヴェンによるアイルランドの歌」というアルバムの中の一曲が流れてきた。

僕は寡聞にしてベートーヴェンがアイルランド民謡を数多くの歌曲に編曲しているということを知らなかった。

少し調べてみて、音楽史家でベートーヴェンについての著書も数多く出している平野昭氏のこんな文章を見つけた。

「ベートーヴェンは1806年ころから20年ころまでに、180曲ちかい民謡編曲を行っている。その中心をなすのはスコットランド、アイルランド、ウェールズといったイギリス各地の民謡およそ130曲ほどだ。18世紀末のヨーロッパでは各国で民謡への関心が高まっていた。その背景には啓蒙思想と近代的な国家形成へと向かう民族自決の意識の芽生えがあった。民謡はそれぞれの民族の伝統的な生活文化と歴史文化そのものであり、だれにも郷愁感を抱かせるという特性を有している。とくにイギリスでは早くからスコットランドやアイルランドの民謡が好んで愛唱されていたため、民謡旋律集などが出版されていた」

「ベートーヴェンによるアイルランドの歌」というアルバムでは、その中から選んだ楽曲を、オリジナルのピアノ、ヴァイオリン、チェロではなく、アイルランドゆかりの伝統的な楽器をとりいれた編成で演奏している。

民謡だけに素朴で微かな憂いを帯びた旋律の味わいが魅力的だけど、しばらく聴いているとアイルランドの荒涼とした風景の中を吹き抜ける風や小さな草花の姿を感じて、どこか懐かしい気持ちになってくる。

ちなみにこの音楽のことを調べていて平野昭氏がベートーヴェン生誕250年の年である2020年にベートーヴェンの音楽を作曲年順に紹介している「おやすみベートーヴェン」というサイトを見つけた。

これから会社を卒業して時間が出来る機会に、(『PERFECT DAYS』で主人公の平山が毎日木漏れ日の写真を撮影して記録していたような)日々のルーティーンとして、ベートーヴェンの音楽を作曲順に聴いていくという生活も悪くないと思ったりしている。

https://ontomo-mag.com/article/playlist/oyasumi-beethoven-digest01/


【演奏情報】
マリア・ケオハネ(ソプラノ)リチェルカール・コンソートフィリップ・ピエルロ(指揮)サラ=ジェーンズ・サマーズ(フィドル)ゾフィー・ゲント(ヴァイオリン)ジョヴァンナ・ペッシ(ケルト・ハープ)ダニエル・ザピコ(ギター)ブノワ・ヴァンデン・ベンデン(コントラバス)
フィリップ・ピエルロ(バリトン)録音:2020年3月7-9日、ベルギー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?