NO.81 聴いているようで聴いていなかったかも知れないバッハの《無伴奏》に就いて
今年最初の日に能登半島で起きた地震発生以降、本を読んでもクラシック音楽を聴いてもどこか遠い世界の出来事のようで心に入ってこない日々が続いていた。
3週間経ってもニュースでまだまだ復旧には遠い映像を見るにつけ、胸が塞がるような思いの日々が続くけれど、昨日Amazonで取り寄せた音楽の友社から出ている「もっと極める1曲1冊シリーズ」の中のバッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》の那須田務著による解説書を読んでいて、無性にこの曲が聴きたくなってきた。
僕はこの曲が好きでこれまでいくつかの演奏を聴いてきた。
そもそもこの名曲を録音しようとする位のヴァイオリニストは超のつく演奏者ばかりだからいずれも名演だけど、もちろん中でも特に好きな演奏、自分に合うと思う演奏はいくつかある。
この曲には、大きく分けてモダン楽器による演奏とバロック・ヴァイオリンによる演奏の2種類があるわけだけど、ミルシテイン、シェリング、メニューイン、ヒラリー・ハーン、五嶋みどりらの流麗な《無伴奏》、クイケン、レイチェル・ボッジャー、佐藤俊介らのバロック・ヴァイオリンによるどこか懐かしさを感じる《無伴奏》…
好きな演奏は数多い。
しかし、この曲の全体像や各曲の構成、時代背景などについてはあまり知ることはなかったし、うかつにもそれでもこの曲は十分楽しめるはずだと思っていた。
もちろんそれらの知識がなくても感覚的にこの曲を楽しむことはできる。
しかし、今回那須田務氏がこの本で、
「どんな音楽も演奏家と聴き手(の意識)がともに作り上げるものと言えるけれども、弾き手と聴き手の想像力が求められる《無伴奏》はなおのことそのような性格が強い」
「《無伴奏》の各曲は、ヴァイオリンと弦楽合奏と通奏低音による協奏曲やオペラのアリア、ヴァイオリン2本と通奏低音のトリオソナタなど、様々な編成の音楽を聴き手に想像させる。そのことが分かると、いったいこれまでこの曲集に何を聴いてきたのかと思うくらい面白くなる」
と書いているのを読み、各曲の丁寧な解説を見ながら改めて《無伴奏》を最初から聴き返して、ほんとうに「いったいこれまでこの曲集に何をきいてきたのか」と愕然となったのだ。
それはどういうことか…
についてはまた改めて。
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