MTG アリーナに興味を持った貴方へ
MTG ArenaがMTG アリーナになる日
MTG Arenaについて貴方はどの程度の事を知っているだろうか。
それが長い歴史を持つカードゲームをコンピューターゲーム化した物である事を知っているだろうか。
それがPCで遊べる事を知っているだろうか。
それが無料で遊べる事を知っているだろうか。
知っているなら問題は無いし、知らなくても問題は無い。
2019年2月15日にMTG Arenaに日本語が追加される。
それだけを知っておいてくれれば良い。
次は公式サイトの日本語化をお願いしたい。
「これハースやシャドバじゃいかんのか?」と思う貴方へ。
MTG アリーナ(以下アリーナ)とはMTGのスタンダードフォーマットをPC上で遊べるようにしたデジタルカードゲームで、要するにハースストーンやシャドウバースみたいなヤツだ。
もちろんアリーナはそれらのクローンではない。アリーナはMTGだけが持つ魅力(例えば土地とか)と理不尽(そして、これも土地とかだ)をコンピューター上に再現し、そこに配信映えする派手な演出と開発者も言及したハースストーンのようなUIを加えた、古くて新しい最新のデジタルカードゲームだ。
MTGことMagic: The Gatheringの歴史は長い。一説にはその起源を古代エジプトにまで遡るとされるマジック&ウィザーズほどではないが、2018年には25周年の節目を迎えており、MTGの大半のカードとフォーマットを網羅するコンピューターゲームとして知られるMagic Online(以下MO)も2017年に15周年を祝っている。だが、Free to Playとして間口を広げたモダンなデジタルカードゲームとしてはハースストーンやそのフォロワーの後塵を拝しており、アリーナのクローズドベータの開始が2017年9月、オープンベータに移行したのが2018年9月とつい最近の事だ。
更にアリーナは現時点ではスマートフォンには対応していない。そういう観点から「これハースやシャドバじゃいかんのか?」と思ったのならそれは仕方のない事だし、それに対してはこちらも「ええんやで」とニッコリ笑うしかない。それでも、アリーナにはMTGをこれまで以上に手軽に遊べるという魅力が存在する。そしてこの魅力はデジタルカードゲームの先達の中に埋もれてしまう程弱いものではない。
だから、もし貴方がアリーナを別のゲームで代替できるだろうという観点から「これハースやシャドバじゃいかんのか?」と思ったのならこちらとしては「いかんでしょ」と返す以外に無いのだ。
試しに遊んでみるかという気持ちになった貴方に言っておきたいお金と対戦の話。
リアルではお値段1枚7000円の男
MTGは金の掛かるゲームであるとの印象を持たれがちだが、実際問題としてそういう側面は有る。安く遊ぶ方法も多く存在するが、多くの人が遊ぶスタンダードやモダンなどの構築フォーマットで強いデッキを作ろうとすると社会人でもちょっと二の足を踏んでしまう金額になるケースも少なくない。執筆時点での高いカードの代名詞と言えば[ドミナリアの英雄テフェリー]、或いは[ハイドロイド混成体]だが、このどちらかを4枚使用するデッキを作ろうとすれば、ゲーム機本体を買える金額を投入してまだ足りないとなる事も有る。
アリーナではこの金銭上の問題がかなり緩和されている。好きなカードを作成できるワイルドカードによって、レアリティがカードの価値を定める唯一の指標となったため、紙やMOでは高くなりがちなデッキが比較的安価に、二ヵ月ほどデイリークエスト毎日こすならばだいたい無料で作成できるようになった。課金をする場合の目安としては、50ドルで安めのトーナメントレベルのデッキが一つと余剰のカード資産、100ドルで高額デッキと余剰のカード資産が、ある程度運も絡むが手に入る事になる。
ただ、全てがこれまでのMTGと比較して安価になったわけではない。ワイルドカードによってカードの価値が均された結果、同じ神話レアながら1枚7000円オーバーのテフェリーと1枚120円の千年嵐が同じ価値を持つようになってしまい、ワイルドカードを使って千年嵐を集めるのに心理的障壁が生まれ、ネタデッキながらとても楽しい千年嵐デッキが組みづらくなってしまうというケースも有る。
そういう事例も有るが、総合的に見ればアリーナはアナログと比べて安価だと言い切れる。まず、アリーナでは全てのチュートリアルクエストが終了すると15個のデッキが貰えるため、スタート時点でかなりの量のカードが手に入る。更にこれらのデッキをカスタムして使っている間はトーナメントレベルのデッキとはそれほどマッチングしないようになっているため、無課金で始めてコツコツ資産を増やしていくという遊び方でも一方的に蹂躙されるというケースは少なくなる、らしいのだが、正直さっさと課金したためこの辺の事情はあまり良く判っていない。ここから先は君達の目で確かめてくれ。
この項の締めくくりとして、対戦を重ねて資産が増え、新しいデッキが欲しくなった時、目安となるだろう比較的安価なデッキリストのリンク先と簡単な解説を纏めておく。これらのデッキは作成された当時の環境に合わせて調整されている場合が殆どであり、MOによってデジタル化されて以降のMTGは環境の変化が特に早いため、実際の対戦の結果に基づいて随時調整した方が良い。サイドボードは一本勝負が主流のアリーナでは使用しない場合が多いので資産に余裕が無いのなら無視しても構わない。
イゼットドレイク
墓地の呪文を参照して強化される飛行クリーチャーを呪文で援護しながら相手を殴る。レアの土地をコモンのギルド門に変更すれば更に安価になるがテンポロスで負ける可能性が増す。
青単テンポ
軽量の回避能力持ちクリーチャーにCurious Obsession / 執着的探訪を張り付け、そのクリーチャーを守りながら戦う。インスタント呪文が重要になってくるため、MTG特有の駆け引きを味わえるだろう。
赤単
アリーナにおけるメタゲームの一角。相手にダメージを与え続けて早期決着を目指す、安くて速くて強いの代名詞。デイリークエストの消化とも相性が良く遭遇率がかなり高いため、赤単対策として回復を多用するデッキも増えているが、その回復が追い付かない事もあるくらい今の赤単は速い。
マーフォーク
初期に貰えるデッキの中でも完成度が群を抜いている青緑マーフォークは、アリーナを無料で遊ぶ人にとっては有力な選択肢であるため対戦する機会は多くなるし、場合によっては貴方も使う事になるだろう。そのプレイングは単純明快、並べて殴る。初期デッキをカスタマイズすると完成する為安価だが、欲張ってカスタマイズしだすとワイルドカードを大量に消費する事になるのでその点は注意。
アリーナを楽しんだ貴方に見て欲しい対戦の外の世界。
MTGのカードの文章欄を眺めていると、少なくないカードにゲームに作用するルール文とは異なる、様々な形式の文章が書かれていることに気が付くはずだ。フレイバーテキストと呼ばれるそれは、そのカードに関連する物語やMTGの世界観を端的に表現したものであり、対戦している盤面の外には多元宇宙を舞台とした膨大な量の物語が存在している事を示唆している。
MTGの世界には――ロードス島以降に形成された日本人のエルフ観を骨と共にへし折ったエルフが居り
魚でありカニでありタコであるクリーチャーが居り
プレイヤー達からはこの世の災厄の全ての様に扱われ、実際問題その通りの事をやらかしまくった両目が宝石の救世主が居り
マジック界における究極の悪の黒幕を倒したTetsuo Umezawaなる人物が居り
要塞のエヴィンカーにして闇の末裔、愚者滅ぼしにして荒廃の王、漆黒の手の主にして陰謀団の永遠総帥などと過去の設定を借りパクしまくった悪魔王が居り――と、非常に強烈な経歴と個性を持つキャラクター達があっさり死んだりやたらと長く生き延びたり、ゲーム中では有能だけどストーリー上での死に方が完全に出オチだったりしながら数多の物語を紡いでいる。
こういった世界観を、フレイバーテキストや公式サイトの記事、関連書籍などを蒐集して楽しむ人々はヴォーソスと呼称され、それ単体でも一つの趣味を形成している。
対戦に疲れた時、ふと気になるフレイバーテキストが目に入った時、ほんわかふわふわした気持ちになった時、脊髄移植の成功度を悲鳴の上げ方で測るおっさんを見たくなったりした時は、25年に渡って蓄積されたMTGの世界を読み解いてみるのも悪くないだろう。その際に参考となるサイトを末尾にに纏めておく。
それでは、願わくば2月15日に。
マジック:ザ・ギャザリング日本語公式サイト
READINGやWORLD OF MAGICとして世界観と登場人物の紹介、Web小説や開発秘話などの膨大な量の記事が存在しており、MTGの舞台に興味を持ったらまずここを読み漁ると良い。
MTG Wiki背景世界
MTGを遊ぶのであればこのサイトになにかとお世話になるだろう。背景世界だけではなく、カードリストやルール文の解説と言った膨大な量の情報が纏められている。
晴れる屋 あなたの隣のプレインズウォーカー
カードショップ晴れる屋のウェブサイトで連載されている記事。未翻訳の海外情報も含めてMTGの物語を解説している。
MTGフレーバーテキスト集@wiki
フレイバーテキストが纏められている。現在も更新は続いているがリストは完全ではないので、気になるならいっそリアルのカードを買おう。
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