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創作に詰まったら、テーマじゃなくてモチーフを探そう

創作は難しい

 小説を書く、音楽を作る、脚本を書く…。一般に「創作」と呼ばれるそれらの活動において、まず問題となるのは「何を表現するか」ということだ。最初からそれが決まっていると楽だが、締切ありきの創作というのも多々あることだろう。そんな時、人は必死にデスクやメモ帳をひっくり返して探すけれど、答えを手に入れるのは結構難しい。 

テーマじゃなくて、モチーフ

 多くの場合、人は創作のテーマを探してしまう。例えば「少年少女の孤独」や「自分の意見を言えないもどかしさ」などが創作のテーマだ。しかしながら、テーマというのは往々にして漠然としており、作品に昇華させるためのヒントとしては非力である。

 そこで一つ提案をしたい。テーマではなく、モチーフを決めようということだ。具体的には「少年少女の孤独」を「みにくいアヒルの子」や「ソクラテス」、「自分の意見を言えないもどかしさ」を「シンデレラ」や「唖」といったモチーフに置き換える。つまりは、「少し前に別れた恋人に対する主人公の複雑な気持ち」というテーマをもとに創作をするのではなく、「ドルチェアンドガッバーナの香水」というモチーフをもとに創作をしようということだ。これでお分かりいただけただろう。

モチーフ創作の利点

 たしかに、創作を始めるに当たっては、自分の考えていること全てをその創作に詰め込みたいと思う。モチーフをもとにした創作だと、自分の思考のいくつかの部分が捨象されてしまいそうで不安になる。それでも、モチーフをもとにした創作をおすすめしたい。

 モチーフがあることで自分の思考を形にしやすくなる。前述の例を見てもらえれば分かるように、テーマからモチーフを選ぶときには、一つの価値判断がなされている。つまり「少年少女の孤独」というテーマからは、「みにくいアヒルの子」というポジティブなモチーフも、「ソクラテス」というネガティブなモチーフも取り出せるということだ。どのモチーフを選ぶかというところでまず、作品の方向性が決まる。あとは、モチーフをもとに話を広げればいい。

 そもそも、自分の思考すべてを一つの創作にまとめることは難しいし、できたとしてもその創作は特色のないものになってしまう。だから、モチーフを一つ決めて、それに沿って自分の思考を成形していくのが良い方法ではないのか。

 また、モチーフがあることによって、そのままでは平板でつまらない表現内容が映像としてイメージしやすくなるし、面白くなる。少しマニアックな話にはなるが、欅坂46の「黒い羊」の表現内容は、「孤独な少年が周りとの齟齬に絶望して、そこから立ち去る・自死を選ぶという不条理さ・切なさ」である。このテーマは純文学ばりのものであり、普通に表現しようと思うと平たく・つまらなくなってしまう。そこで、「黒い羊」や「ヒガンバナ」というモチーフを持ち出すことで、内容を直感的にイメージできるように工夫している。

モチーフ図鑑を作りたい

 いま私はモチーフのストックを増やしたいと考えている。

 「ハルジオン」というモチーフについて皆さんはどう考えるだろうか。ある人は「春のほがらかさ」といったポジティブなイメージ、ある人は「外来種の跋扈する様子」や「花言葉『貧乏草』」といったネガティブなイメージ、またある人は乃木坂の楽曲を思い浮かべるだろう。このように、一つのモチーフをとっても、その解釈は人それぞれである。しかし、「正しい解釈」というのがあるのも事実である。突飛な解釈は、創作の鑑賞者をびっくりさせてしまう。だから、モチーフに対する勉強は必要だ。

 モチーフはオブジェクトに限らない。想像しやすいのは「犬」や「猫」、「仏像」といったオブジェクト(個としてあるもの)だ。一方で、オブジェクトがもつ性質も立派にモリーフになりうる。「森の中のY字路」や「崩れそうな吊橋」など。それぞれ「道路」や「吊橋」の一つの性質に過ぎないが、「Y字路」や「崩れそうな」などの修飾語がつくことによって、明確かつストーリー性のあるニュアンスが追加されている。モチーフ探しにおいてはただ図鑑に書いてあるようなオブジェクトを探すのでは足りず、オブジェクトの性質についても注目しなければならない。

まとめ

 モチーフ創作は、特にJ-POPでよく見られる。
 米津玄師の「Flamingo」「感電」「パプリカ」「Lemon」、Mr.Childrenの「HANABI」「himawari」、欅坂46の「黒い羊」、乃木坂46の「逃げ水」「革命の馬」など。

 勘のよい人なら気づいていると思うが、要はアナロジー(類推)を創作に取り入れようという提案である。こうすることで、創作しやすくなるし、伝えやすくもなる。アナロジーは非常に優れた方法だ。しかし、それを使いこなすためにはモチーフの十分な理解が欠かせない。

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