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被写体の魅力を引き出すプロフィール写真の撮り方【ポートレート】

1. 写真で伝えたいこととは?

 先日,就活に使うためのプロフィール写真の依頼をいただきました.一般的な証明写真ではなく,LinkedInやEightなどのビジネス特化型のSNS上で使用したいとのことでした.これらのSNSは求人や転職に使われており,個人のキャリアやスキルを見て企業から声をかけるケースなどもあります.
 SNS上のユーザー一覧やトップ画面で表示されるのは顔写真であることから,写真も就職活動,転職活動の重要な要素の一つであると考えられます.無論,写真だけで合否の有無が決まるわけではありませんが,第一印象というのは非常に重要です.

以下に使用する写真はすべてエントリーモデルの一眼カメラを使用していますので,ぜひお試しください.

中望遠レンズかつ低F値のレンズがポートレート撮影に向いています.


 ポートレートを撮る場合,その人のどのような魅力を引き出すかという写真の目的によって撮り方が変わります.下記のような例を出します.

ポートレートの目的
アイドルの写真集
人が主題となる.そのアイドルの可愛さを引き出すためのポーズや背景や構図を選ぶ.
ファッション雑誌
ファッションアイテムやブランドの雰囲気が伝わるようなポーズやアイテムを選ぶ.

 同じ人物の写真でも伝えたい目的によって撮り方を変えなければならなりません.そして,同じファッション雑誌でも価格帯によってポーズは異なるはずです.

ファッションブランドごとの広告写真の特徴
ファストファッション(低価格帯)の広告
生活のワンシーン,自然な表情.
高級ブランド(高価格帯)の広告
黒や金などの背景,キメキメのポーズ.

 このように写真の特徴が異なるのは購買層や年齢など写真(商品)のターゲットが異なるからです.そして背景・ポーズ以外にも写真の特徴を変える写真の要素はいくつもあり,目的に合わせてそれらを選定する必要があります.

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2. 就活に適切なプロフィール写真を考える

 はじめにクライアントさんと相談したのは撮りたい写真のイメージです.

撮りたい写真のイメージ
・証明写真のような真顔ではなく少し笑顔
・服装もスーツではなくカジュアル
背景はなるべくシンプルなほうが良い.

 そしてもう一つ重要な要素が,写真をどう見られたいかです.LINEやFACEBOOKのプロフィール写真を見ていても,その人の性格や好みなどある程度読み取れる印象はあります.

就活の写真で伝えたい印象
●個人のスキルが重要視される職種であるため,自分に自信があること.
●コミュニケーションスキルが高く,上司や同期にもフレンドリーに接することができること.

 相談の結果,以上のような性格が表せるプロフィール写真を撮ることが決定しました.

3. 撮影の仕方

 自然な背景で撮りたいとのことから野外での撮影になりました.実際LinkedInのユーザーの写真は,野外で撮った自然な笑顔のものが多く見受けられました.今回撮影を行ったのはとある美術館です.写真はクライアントさんから許可を得て掲載しています.

撮影条件
撮影場所:シンプルな白壁,レンガ壁,林や花のある小道
天候  :晴れ

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 まずウォーミングアップの一枚.モデルさんではないので,初めのうちはとにかく緊張をほぐすことを意識して撮影します.人は座っているほうがリラックスできるので,一枚目は座ってもらうほうが良いと思います.少し話をしながら「ちょっと撮るね」と自然に撮っていきます.

ポイント
・顔の陰影
晴天時には顔にはっきりとした陰影がつく.陰影がないほうがやわらかい雰囲気に仕上がる.例えばSNOWなどの自撮りアプリでは顔の陰影が減るため可愛く見える.
・場所
人が少ない場所の方が緊張せず撮影できる.美術館等の庭など先にロケハンしておくことも必要.

 ここで課題となっているのは,顔の露出が若干暗めであることと陰影が強すぎることです.そこで撮影場所を変えることにしました.

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 話をしながら座って何枚か撮った後,建物の影に移動して立って撮影した写真です.顔の陰影が減り,ソフトな雰囲気になりました.

ポイント
・顔の陰影
晴れている日には建物の影で撮影することで,直射日光による影を減らすことができる.

 表情はすごく自然ですが,ポーズが100点ではありません.上の写真の印象では”優しい”という性格は伝わりますが,少し猫背で手が前にきていることから少し自信がなさそうな印象を受けます.そこでポーズを変えてみることにしました.

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 今度は自信がうかがえるのではないでしょうか.

ポイント
・ポーズ
姿勢を良くし,腕組みをすることなどで自信があるという印象付けをできる.

 しかしながら背景のレンガがすこし強い(顔より彩度が高い)ため,もう少しシンプルな場所で撮ることにします.

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 ここまでで30枚ほど撮影しています.緊張もほぐれてきたようなので,少しかっこつけてポーズをきめてもらうことにしました.この本当の目的は,かっこつけた後の「ちょっと恥ずかしい」という笑顔やその写真を見せたときの「かっこよく撮れている!」という笑顔なんです.表情をつくってもらうより,自然に笑う写真のほうが魅力的ですよね.

ポイント
・構図:一点透視
一点透視のパースで,消失点を顔付近に置く.壁や天井の延長線上の中心点が被写体の顔に重なることで,表情が強調され迫力が出る.
・顔の陰影
強い自然光の入る室内で撮影していることによって顔の陰影が少なくできている.これによって表情が笑っていなくても雰囲気はやわらかくなっている.

 ここまでの撮影で,一番良い表情・ポーズ・背景が分かってきました.ここからはカメラの高さを変えることによって最も良い印象を探していきます.

4. カメラの高さで変わる写真の印象

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 被写体の下側,正面から撮った写真です.

 この写真はカメラを構える高さを腰のあたりにしています.印象として高圧的で自信があふれているように見えるのではないでしょうか.ポケットに手を入れるポーズの効果もありますが,下から見上げるように撮ると被写体の迫力が感じられる写真になります.

ポイント
・下から撮る写真
迫力がある,高圧的,自信があるように見える.
■下側からあおるのは高級ブランドの広告写真などで見かける撮り方.

 このように撮る場合の注意点は,被写体の鼻の穴です.ポートレートの基本では鼻の両穴が見えないように撮ります.そのため下から撮る場合にはそれを伝え,あごを引いてもらうようにするほうが良いはずです.

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 あごを引いてもらい,下側から撮った写真です.

 顎を引き,さらに斜めから撮ることで鼻の穴が写りにくいようにしました.このほうが印象としては自然です.遠近感によって足が長くみえますね.

ポイント
・斜め下から撮る写真
先ほと比べて自然.しかしまだ見下ろされているようなイメージはある.この撮り方のメリットは遠近感により足が長く,顔が小さく見えることだ.

 上の写真はファッション雑誌などでも見かける撮り方ですがプロフィール写真には上半身だけで良いため,適切とはいえません.
 それでは上側から撮影するとどうなるでしょうか.

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 カメラをを高めに,上から撮影しました.

 下から撮影すると見下ろされているようなイメージがありましたが,逆に見下ろす形で撮影することによりそのイメージがなくなりました.先ほどの2枚よりもフレンドリーそうです.
 人は無意識のうちに自分より大きなものに対して警戒心を持ち,小さなものに対して警戒を解くという心理的な性質があります.これを利用することで,カメラの高さだけでも印象をガラッと変えることができます.

ポイント
・上から撮る写真
自分の立ち位置の方が高く,被写体の印象がフレンドリーに感じられる.


5. まとめ

 ここまで写真の目的から適切な撮影方法について書いてきました.どのように撮るかというのは,写真をどのように見てほしいかによって決まるんです.就活のプロフィール写真に適切な,「やわらかく,フレンドリーで自信がある」ように見える写真の要素をまとめると次のようになります.

撮り方のポイント
・自然な笑顔のタイミングで撮影する.
・顔の陰影は少なめに撮影する.
・被写体の目の高さより少し高めで撮影する.

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 これら上記の3つのことを意識することによって,写真の印象をコントロールすることができるようになります.上記の逆を心掛けて撮影すれば,かっこいい・クール・冷静などのイメージを印象づけることも可能というわけです.

 最後にプロフィール写真ではありませんが,同じ被写体・背景でも撮影の目的と撮り方によってイメージが全く異なるという例を添付します.

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クールでかっこいい印象
・ロートーン(露出を下げて)かつ低彩度で撮影.
・ローアングルから見上げるように撮影.
・あとから被写体以外を暗めに編集.
・左側にスペースを大きめに開けることで何か考え事をしているようなイメージを与える.


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神秘的な印象
・ガラス越しに撮影.フィルターがかかったような柔らかい雰囲気に.
・アイレベルは同じ高さ.


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大人っぽい印象
・足を組むポーズでよりスタイルが良く見える.
・背景のレンガから渋い印象を伝える.またメインの被写体である人に目が行くように,上下の色の境目に座ってもらう.

最後まで読んでいただきありがとうございました.

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