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展示会のノベルティ体験をデザインする

私がBXデザインを担当している営業DXソリューション「FORCAS」では年に数回ほど、展示会に出展しているのですが、期間中にブースに訪れていただいた方へお渡しする「ノベルティ」 を用意しています。

FORCASのブースの一例

その際にFORCASというブランドとして、ノベルティを通してどういう体験を来場者に届けたいのか、という観点を大切にデザインしています。

今回のnoteでは、私が展示会のノベルティをデザインする際に意識していることをご紹介できればと思います。展示会に限らずノベルティをつくる機会のある方の参考になれば幸いです。


FORCASの展示会の実例

昨年行われた展示会では下記のノベルティをつくりました。

「金平糖」です!
白と緑の金平糖を袋に入れて、白のスリーブ箱でパッケージしています。

では、なぜこのようなノベルティにしたのか、それは次の条件を前提に考えているからです。


FORCASがノベルティに求める5つの条件

①目的を果たすものであること

ここが一番重要なポイントです。なぜつくるのかという目的をしっかりと決めて、その目的を果たせるのかどうかという点を考慮しなければ、効果的なノベルティはつくれません。

展示会におけるノベルティの目的は様々あると思いますが、主に以下の3つではないでしょうか。

1.集客促進:来場者を自社ブースに引き込むこと。
商談やデモなどを体験していただくために会場の通路から自社のブースの中へ入っていただかなくてはなりません。この場合は、来場者の目を引いたり、つい受けとりたくなるようなアイテム、デザインであることが必要だと思います。また、ブースに入るまでとはいかずとも、来場者のリード情報をバーコードで取得しやすくする際の、インセンティブのような目的を兼ねる場合もあるかと思います。

2.認知喚起:ブランドやサービスなどをまずは認知してもらうこと。
いわゆる「名前だけでも覚えて帰ってください」が叶えられるように、とりあえずお渡しだけして、その後は、ノベルティに記載したロゴやURLなどから、受け取った人がHPなどへ情報をとりにいくことを狙ったものです。
この際も、つい受け取りたくなるようなアイテム・デザインであることと、その後のHPへ訪れたくなるように最低限の情報をうまく整理しないといけません。商材によってはサンプルをお渡しすることも効果的かもしれません。

3.印象形成:ブランドやサービスに好意的な印象や記憶の形成を図ること。
これはブランディングを強く意識した目的です。お渡しするシーンも、上記の1・2がバラマキ配布を想定しているものに対して、こちらはブースに訪れて商談やデモなどをした方に、お渡しをする場合が多いかと思います。
そのためノベルティ自体も、他社とは違う特別な体験を提供しなければならず、特にこだわったものを用意しなければいけません。

これらの中から展示会でノベルティによって果たしたい目的を定義し、その目的を果たせるように、ノベルティを検討していくことが重要です。

― Case:FORCASの金平糖 
この時は「3.印象形成」を目的にしたため、特別感・独自性の高いアイテムとデザインを意識して、ノベルティとして落とし込みました。

箱の形状を生かして、ブースにディスプレイしました。


②一般的なアイテムではなく、特別なアイテムを選ぶ

上記目的の「印象形成」を目的としている場合、この観点は特に重要です。一般的なアイテムは取り扱っている制作会社も多く、納期も調整しやすく、金額もリーズナブルなものが多いため、出展企業としては非常に助かります。

しかし、展示会に出展している他社のノベルティと似通ってしまう可能性もあり、その中で埋もれてしまうこともあります。ブランディングを考える上で「差別化」は重要な観点なので、いかに他社との違いを出し、そのブランドらしい特別感を出していくのかが大事になってきます。

― Case:FORCASの金平糖 
当初は「アメ」が候補に上がりましたが、他社からも貰いそうな一般的な印象がしてしまうので、アメに近いアイテムは何かを考え「金平糖」にしました。アメや金平糖の透明感のある質感がFORCASの白を基調とした世界観にマッチしそうと思ったのが理由の一つです。


③もらって困るものは避け、誰もが好意的に受け取れるものを選ぶ

上記②の「特別なアイテム」を意識し過ぎて、あまりにもニッチすぎるアイテムにしてしまっては、受け取った人が困ってしまいます。特定の人にしか興味がなく、使われないものや、好みがあるもの、食べ物だとアレルギーに懸念があるものなど。それらは持ち帰った後に、家に帰って捨てられてしまう可能性が高くなります。そのようなネガティブな印象を少しでも与えてしまうと、ブランドイメージを低下させる要因になってしまいます。

― Case:FORCASの金平糖 
この時は金平糖という「食品」を選びました。いわゆる「消えモノ」は食べてしまえば、受け取った人がいつまでも家に置いておく必要がない(=気軽に扱える)という点から、比較的セレクトしやすいアイテムです。ただ、その気軽さのままだと、一般的な印象が強くなってしまうので、今回はパッケージこだわりました。詳細は次の項目で紹介しますが、パッケージをこだわることで簡単に捨てられないようなもの、あわよくば箱を何かに使いたくなるような仕上がりにすることで、いつまでも受け取った人のそばにブランドの存在を感じられるようになることも狙っています。


④安っぽさは避け、仕上がりの品質にこだわり抜く

これは主に、アイテム自体の品質や、パッケージの観点です。

選んだアイテムが使いやすい、おいしい、役に立つ、などアイテムの特性に応じた役割をきちんと果たすことは大前提です。またアイテムによっては、どうしても既製品っぽさが出てくる場合があります。そういう時こそパッケージで工夫するようにしています。

パッケージは予算次第で大きく仕様やデザインに幅が出てくるので、アイテム自体の単価とパッケージの単価を調整しながら、ノベルティ自体の予算をやりくりするのが難しいポイントです。

その中で、選んだアイテムをより魅力的にするパッケージは何か、そのブランドらしさを表現するパッケージは何か、渡した時に「おぉ」と思えるようなパッケージは何か、といったノベルティにまつわる体験を全て想像しながらデザインしていきます。

― Case:FORCASの金平糖 
今回の金平糖というアイテムにふわしいパッケージとしてスリーブ箱を選びました。金平糖は少しカジュアルな印象がしてしまうので、箱自体はフォーマルで洗練されたデザインにし、スライドさせたらその中から金平糖が見えるという流れが驚きを提供できると思い、その仕様にしました。
仕様が決まればその「品質」を最大限に高めるために、いろいろ検討します。箱のサイズはどのくらいがいいか、その箱のサイズに収まるには金平糖の内容量はどのくらいがいいか、デザインはどうすればいいか、ロゴの印刷はどのようにしたらいいか(最終的に黒の箔押しにしました)などを検討しました。
特に今回こだわったのは、パッケージに使用した用紙です。FORCASはシンプルで洗練された世界観を一貫してデザインで表現してきたので、通常であれば用紙もシュッとしたクセのないものを選んでいたとは思いますが、今回はノベルティを通して「特別な体験」を提供したいと思い、質感のある「キャンバス地」の用紙を選定しました。

用紙のサンプルを何枚も取り寄せ比較検討しました。


⑤ノベルティにブランドらしい意味を込める

そのノベルティがブランドにとって関連した意味やストーリーを内包できるものだと、さらに体験として強い印象になります。選んだアイテムの意味や特性が自社のサービスや発信したいメッセージと掛け合わせることができるように狙います。

― Case:FORCASの金平糖 
今回は以下の写真のように、メッセージをトレーシングペーパーに印刷して金平糖と一緒にスリーブ箱の中に入れました。


以上が、私がノベルティをデザインする際に意識している条件です。もちろん、バラマキ用途の場合は、全ての条件を考慮する必要はありませんが、ブランディングを目的とする際は、これらの条件を整理し、ノベルティ体験として落とし込むことを目指しています。


最後に

その後、今回のFORCASの金平糖は、主に以下のような効果がありました。

・受け取ってくれたユーザー様やお客様から嬉しいお声をいただいた
SNSにアップしたいただいたり、デザインやメッセージなどについてポジティブなコメントをたくさんいただきました。

・FORCASのインサイドセールスが、受けとってくれたお客様へお電話する際に役立った
コールする際に「金平糖をお渡ししたFORCASです…」と説明するだけでも、思い出していただいたり、アイスブレイクになったりと、思いも寄らないシーンで効果を発揮していました。

このように、FORCASにおいては、ノベルティをデザインするというよりは、ノベルティを通して届けたい体験を考慮した「ノベルティ体験」をデザインすることを意識しています。もしFORCASのノベルティを手にする機会がありましたらぜひ受け取ってもらえると幸いです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。


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Cover Design: Kurumi Fujiwara

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