ああ誤送信
メールの誤送信、気付かずにやってしまう場合もあれば、送信ボタンを押した瞬間に気付いて、いまの取消、取消!と無駄な悪あがきをする場合など様々だろう。
たいていの人は一度くらいは誤送信の経験があるのではないかと思う。Aさんに出すべきメールを間違ってBさんに出してしまったなど。まあ大抵は謝ればすむ場合がほとんどだと思うが、そうでないこともある。
自分が自覚しているメールの誤送信で忘れられないものがある。それも極めて痛恨の誤送信だった。
そのころ秘密の関係で付き合っていた女性がいた。いつものように別れた後、メールのやり取りをしていたところ、その彼女から緊急事態を知らせるメールが入った。
「今、そこで知らない男の人に路地裏にひきづりこまれて、乱暴されそうになった!」
彼女のことを本気で心配した俺。急いでメールを返そうと思うその焦りがよくなかったのだろう。
「今、そこで知らない男の人に路地裏にひきづりこまれて、乱暴されそうになった!」
という完全にオウム返しのメールを送ってしまったのだった!
その後、何度電話しても彼女は電話に出てくれなかった。
「電話に出んわ」
いまならこんなダジャレも浮かぶところだが、当時(30代前半)の俺はものすごく焦ってしまった。当然だろう。あんなに怖い思いをしたのに、心配するどころか、それを茶化すようなメールが送られてきたとしたら。もちろん意図的ではないのだが。
しかし、止まない雨というものはない。何度も電話を掛け続け、やっと電話に出てもらうことができた。ほとんど口をきいてもらえなかったが、何度も謝り倒すことで、関係を修復することができた。
数年後
その彼女からメールが入った。彼女と言っても俺は既婚者、彼女は独身ということで、きっと彼女には別にいい人がいたのだと思う。そのあたりは話題にしないというのがお互いの不文律であった。「今度いつ会える?」みたいなメールだろうと思ったら、全然違った。
「ねえ、今ジャニーズのなんとかがテレビに出てるよ!見て!」
俺と彼女の間でジャニーズのタレントの話をしたことはなかった。
「ジャニーズのなんとか?誰か別の人宛のメールなんじゃない?」
「ごめん、友達と間違えた・・・」
そのときの俺は、以前に自身があれほどひどい誤送信をしたこともすっかり忘れていて、その見えない別の男への嫉妬心をかきたてられていたのだった。
しかし、今振り返ると
友達って、女友達なんじゃないか?ジャニーズなんだし!(能天気)
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