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姉が生きてたら、の話。

聞かれたら困る質問が2つある。

「血液型なに?」



まず、血液型は知らない。検査したことがない。でも多分AB型なんじゃないかな。姉がAB型らしいから。

「兄弟姉妹はいるの?」

めんどくさいときは「一人っ子だよー」と答えている。現に、一人っ子として生きてきた。ただ、姉は生まれてすぐ亡くなったというだけ。流産。

幼い頃は自分に姉がいたことすら知らなかった。
家にある仏壇はただのインテリアの1つとしか考えていなかったし、部屋に飾ってある赤ちゃんの写真は当然自分の赤ちゃんの頃の写真だと疑ってもみなかった。親から、「この写真誰だと思う?」と聞かれて、自分だと答えたら、「違うよ」なんて言われちゃって、当時はただの冗談だと思っていた。

いつ姉のことを知ったのかは覚えていない。姉とは3歳差だから、13回忌のタイミングで知ったのかもしれない。でももっと前かもしれない。

亡き姉がいる場合は一人っ子にあたるのか。
まあ当然人生の歩み方としては一人っ子なので、一人っ子と考えることもできる。
では高齢の兄弟の兄が85歳でなくなった場合、弟はその瞬間に一人っ子になるのか、と言われたらそんなこともない。だから答えに窮する。

ずーっと一人っ子のつもりで生きてたし、姉のことなんて知らずに生きてきた。だから亡き姉がいるという事実は感情に変化をもたらすものではなかった。生まれた時に既に亡くなっているひいひいおばあちゃんに対してなんの感情も抱かないのと同じで、その死について悲しむもいうものでもない。

ただ、家族が3人なのか、4人だったのかというのは、かなり違う。

成長していくに連れ、そして母親との関係が悪化するに連れ、姉がいたらこうはならなかっただろうなぁ、と思うことが増えた。

一人っ子の悪いところは、サンプルが自分1つしかないこと。親が相対的な視点を持とうとしなければ、自分が唯一にして絶対的なサンプルになってしまうのだ

結構頑張ったつもりでも、比較対象がないから、それが普通だと捉えられる。
良くも悪くも、母数が1なら100点を取ろうが0点を取ろうが、偏差値は50なのだ...

母親とはうまくやれなかった。母親はやっぱりどこか異常で、でも母親はそれが普通だと思い込んでいた。

でも、自分絶対神の母親からしたら自分がかなり異常で、異端に見えたんだろうな、と思う。
母親はノーマルを良しとして、枠にハマることを望む人間。逆に自分はアブノーマルであることを求め、枠にハマりたくない人間。分かり合えないため、軋轢は生まれた。本当に分かり合えない、価値観の合わない親子だった。
だからこそ、サンプルがもう1つあれば、色々と変わったんだろうなとも思う。

父親は基本的には干渉してこないし、時折は味方になってくれたけど、やはり同じ立場にはなれない。

要は家の中に味方がいなかった。同じ立場にある人がいなかった。自分が異常なのではない、と証明してくれる人がいない生活は辛かった。

親に非があっても、自分が間違ってるんじゃないかと考えてしまうし

親から人格を否定されると、それが真実なんじゃないかって思ってしまうし

今思い出しても泣きそうになるくらいには辛かった。

そういう時に、姉のことを考えた。どういう人だったんだろうな。仲良くできたのかな。それとも一般的な姉弟のように仲は悪かったのかな。どんな音楽が好きなのかな。性格は似るのかな。

完全なるタラレバ、机上の空論ではあるけれど、どうしても、「姉が生きてたら、」の話を考えてしまう。

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