追憶2

演劇の大会は花火大会の日でもあった。暮れゆく空の下、私は制服のまま、走る。浴衣を着た人々が私を見る。あなたは林檎飴を私に買い、花火の音を背にあなたを見送る。雑踏に消えていく、群がる人間に取り込まれていく。

貨物列車はとても早い。駅にいる人々を顧みもせず、過ぎていく。けたたましい警笛とともに。地下鉄に生ぬるい旋風を巻き起こす。私は名古屋と岐阜を往復する。

春なのに雪が降っている。流されるように大学生になった。場違いな私と季節違いの雪。

テレビは甲子園を映し出している。予選から見始めていたのに、決勝を待たないで、いなくなってしまった。今年はどこが優勝したか知ってる?

海に差し込む光のよう。夜行バスの窓から柔らかな光。塵までも映写機のごとく輝かせる。あなたに会いに行くまでの、何もかもが美しい。

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