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写真展鑑賞記録(2) 「情念との反芻」展ギャラリーツアー編

前回に続き,「情念との反芻」展の感想です.

「質量への憧憬」の特別版購入特典としてギャラリーツアーがありまして,10/12に落合陽一さん直々にコンテキストや作品の説明をしていただくというなんとも贅沢な内容です.

しかし,台風です.

会社を半休させてもらい,前日入り.

そして,台風です.

結局当日は延期になり,13日にリスケになりました.
台風で行けないかもしれないということで,逆にモチベーションが上がるという人の性質で,ツアーの価値が個人的に釣り上がりました!
また,関東にいる先輩の家で地球防衛軍をひたすらやるという台風の日でした.(どうでもいい)

本題.「情念との反芻」展

おさらい

全体的な感想として,写実的というより,絵画的な写真が印象的で,まさしく「情念」を感じました.ステートメントからも前回の質量への憧憬から比べると,かなりご本人の世界に入ってきたなあという印象を持ちました.

ライカレンズの持つ偶発的かつ唯一的な光のボケを調整していく中で,調整するための落合さんの感性が「情念」で,調整を繰り返す作業で「反芻」した結果,これらの写真ができていると思うとかなりエモい.

そして,あくまでスナップ写真にこだわっているところについてもエモポイントだと思います.ステートメント抜粋.

異なる世界をのぞくように,レンズとセンサというメディア装置を通じて,物理的なこの世界と精神的な環世界に通底する感覚を探している.デジタルから見える物質世界への憧れを突き詰めた先が質量への憧憬ならば,ここにある閉ループは,デジタルに切り取られたはずの物質世界と,僕の情念との反芻だ.

被写体を意図してコントロールしてとるのではなく,”物理的なこの世界と精神的な環世界に通底する感覚を探している”からあくまでスナップ写真を作品にしているんですね.

メディアアート「情念との反芻」はフィルムをプロジェクターで投影して,ライカで撮る作業を繰り返します.写真は文字通りで見た通りに,機械的に撮影しているがその作業に情念を感じさせます.この情念は機械が持つのか?見ている鑑賞者が持つのか?作者か?少なくとも,ロボットアームに感情が動かされる感覚は心地いいです.

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さて,実はこのギャラリーツアー,もう一つ楽しみにしていたことがありました.落合塾生で目に障害のある方も参加されるということで,どのように落合さんが説明されるのかが気になっていました.
以下の記事が発端です.

言葉でアートを説明する落合陽一 うん、エモい.

当日は早めにいって予習しました.そこで当の塾生さんと初めてお会いして一緒に回りました.奇しくも,先に説明する側に!全然説明できない!その方は全盲ではなく,狭い範囲なら視認可能とのこと.スマホで撮ると画面が小さくなるので見やすいと聞いて,撮影の補助をさせてもらいました.1枚1枚撮影しながら,拙いながらも説明をしてみました.なんだか普通に見るよりすごく楽しかった!
傍から見れば,私が案内しているようでしたが,むしろ深く鑑賞することができて感謝しています.

そして,落合さん登場.作品を文脈から鮮やかに説明していく様はかなり気持ち良かったです.頭の中でピースがハマっていく感覚.なるほど,構図を説明しつつ,その文脈や撮ったときのことを織り交ぜながら,特徴のある色に比喩を加えながら説明するのか!

廊下の展示では,オリンピックを来年に控える中で,日本が高度経済成長をする発端となる前回のオリンピックと経済成長が著しい中国,成熟しているイギリスなど行き交いしながら対比となる写真を配置する.公的と私的のつながりを感じました.

また,海洋漂流していたプラゴミや流木を使った作品の写真をプラチナプリントで印刷したものがありました.経済活動によって環境を汚染するゴミは,経済活動のサイクルからはじき出された物質ですが,これに価値を付ける試みがされているわけです.エコシステムへの回帰の可能性が表現されて新しい視座がもらえた感覚です.

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「複製画の村の少女」は展示スペースのすぐに大判で展示されていました.深圳の複製画が多く作成されている村でとられた写真で,背景の窓や複製画,手前の花もボケて分からなくなった中で少女がぱっきりと映し出されています.この村ではネット上にある絵画の画像を油絵にしているそうです.また,「ルーブルにおいてある絵画は18世紀にインスタがあったら貴族があげていそうなイメージ」と表現されていて,そんな交錯された中で少女という人間性が映し出されています.感想としては,インスタなどの外部に表現するイメージはそのイメージそのものより,投稿者本人の意図や人間性のようなものが現れるんだろうなと思いました.写真において一人称が消えないということが,表現されているようでとても面白く,雰囲気も好きな一枚です.(写真展では撮り忘れたので写真集から)

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最後にどなたかがした質問で,写真を取るときにどういう気持ちで取りますか?だっただろうか.それに対して,ワクワクするから撮ります,との回答.当たり前なんだけど,なんか腑に落ちた感じ.

終わった後,落合塾生の方々と飲み会しました.アートの話から,写真の話,自分の知らない業界の話,この日はすごくいい日でした.

感謝です!

次は「燐光する霊性」です.

#質量への憧憬 #情念との反芻 #落合陽一 #写真展 #感想 #落合塾

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