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とにかく要素が多い『日本沈没2020』各話感想

質問箱にこんな投稿がありました。

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もはや質問でもなんでもないのですが、そこは自分の質問箱ではデフォルトなので置いておきます。

そういえばやるとか言ってたな、と思ってネットフリックスを開くとマイリストに当然のように保存しているじゃないですか。見ようか迷っていたのですが、そこまで言うなら、と見始めて数話を見終わった頃にはこうなっていました。

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何もかも唐突に起こるシナリオ、死ぬためだけに出てくるモブ登場人物、いろんな人が出てくるのにステレオタイプ系が多い人物造形、ラップバトル、時々英語で喋る弟、ディザスターものなのにめちゃくちゃ薄い現実感、謎パラグライダー、大麻畑などめまいがする要素が盛りだくさんで頭がくらくらしてきたのです。

普段アニメをそんなに見ない俺は「あれ? アニメってこういうのだっけ?」と思ったのですが、勧められて見た『メイドインアビス』は全然そんなことがなく普通に面白かったので、アニメ全般がこういう傾向ということではなく、日本沈没2020がとびっきりにピーキーだったということなのでしょう。

そのまま一気に最後まで見ましたが、頭の中の疑問符は増えるばかりで最終的には完全にパンクしました。この感覚をみなさんにも味わっていただきたいので、ぜひ見てほしいです。

その不可解さを伝えるために、ここから先は1話ごとに感想を書いていきます。当然、ネタバレありです。映像を見てから読むほうがよいかと思いますが「ここまで言われてるアニメを見るのに時間を使うのがもったいない」というのももっともなことなので、その場合はネタバレ上等で読んでください。


ここからネタバレ始まります


1話 オワリノハジマリ

『なぜ人はアニメの各話タイトルをカタカナ表記にしてしまうのか?』2020年7月18日発売 光文社新書、って感じですが、なぜカタカナにしてしまうのでしょうか。カタカナにした時点で中二感が跳ね上がる効果がありますね。導入パートはまあまあ普通で突然地震が起こるのですが、そこの描写は結構ちゃんとしてます。主人公・歩の弟の剛が要所で英語を使うという謎仕様でそれが気になる程度ですね。あと、地震が起こって母親が乗っている飛行機が海に不時着するんですけど、避難中に母親が泳いで溺れてる子供を助けます。津波来るのにそんな呑気なことやってていいのですか。

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あと、父親は途中で高速道路から生身で落ちるのですが、無傷です。むちゃくちゃ頑丈。超合金です。ただ、その後に離散した家族を集めるためになぜかイルミネーションを神社でやる父親。「電気とか大丈夫なの?大震災後だよ?」とこちらが心配になってしまう上に、けっこう大掛かりなイルミネーションなので「こんな非常時に何を考えてるんだ!」と自粛警察が突っ込んできそうでハラハラします。

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足を怪我した歩ですが、なんとか神社に辿り着きます。この足の怪我、ちょいちょい気にしているんですが、ロクに手当てをされることもなくこのまま進みます。ともかく一家が集まりました。あと近所のお姉ちゃんの七海さんと主人公・歩の部活の先輩の引きこもりもいました。そして記念撮影をします。このアニメでは要所で記念撮影をするのです。次に空から人が降ってきます。火災旋風らしいですが、描写はありません。いまのところそこそこ突拍子ないのですが、1話目は割とまだちゃんとした災害ものでしたね。この後、このアニメがとんでもないことになるとは僕たちはまだ知らないのです。

2話 トウキョーサヨナラ

東京のカタカナ表記は「トウキョウ」または「トーキョー」しか見たことがないので「トウキョー」は初めてです。新鮮ですね。さて、一家は神社に浸水が迫ってくるので旅に出ることにしました。避難していた団体と一緒に神社を出て、近所のねーちゃんと顔見知りの引きこもりも連れていきます。この引きこもり、歩が昔憧れてた陸上部の先輩なのですが、なぜ引きこもったかというのはこの時点では明かされません。というか、結局明かされませんでした。めちゃくちゃ暗いです、こいつ。そして団体は東に向かうと言って、家族たちは西に向かうところで別れます。ここでも記念写真を撮るのですが、東に行った団体が今後の話に出てくることはほとんどありません。最後のまとめで団体の中の1人の少年が写真を見る姿はあるものの、それでも何か少しくらいあってもいいのではないでしょうか。そして、家族+αの西への逃避行が始まるのですが、ここが絶妙にリアリティが薄くてとてもいい。東京からちょっと歩いて山の中です。そこで急に沢下りに飛び込んだり、イノシシを狩ったりとサバイバル能力の高さを見せつける父親。いや、非常時なんだからもっと安全策を取れよ、と思います。

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そして父親は山芋掘りで不発弾を掘り当てて爆死します。これはタイプミスではないです、ほんとに山芋掘ってて爆死するのです。父親は進んでリスクを取っていく姿勢だったので、ヤマイモを掘ってる最中に不発弾で爆裂四散しても不思議はないものの、唐突すぎます。何がすごいって全然地震関係ないことで死んでるのがすごいし、山芋掘りで爆死する登場人物は中々いないんじゃないでしょうか。爆笑してしまいました。

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このように登場人物がスナック感覚で死んでいくのですが、それが必然性が薄かったりするので、こちらとしては知らない学校の同窓会に出ている気分になります。

3話 マイオリタキボウ

父が亡くなっても旅は続きます。途中で乗せてもらったトラックの運転手が「こんな時代に何かっこつけてんだよ、一緒に楽しもうぜ」とディザスターもので1人は必ず出てくるモラル崩壊モブなのですが、あっさりと撃退。

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近所のねーちゃんの七海がやたらと蹴りが鋭いのですが、なんかそういう格闘技やってた設定でしたっけ……(たぶんない)。ちなみにこのモブの顔を見てるとなんとなく、自己防衛おじさんの顔を思い出しました。

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そんなこんなで旅をしている途中に歩が母親に「なんでお父さん死んだのに普通にしてるの!?」とキレます。同感です。ここまで母親が悲しむシーンがゼロなのです。この後も誰かが死んだ後に思い返したりするシーンはほぼほぼ皆無なので、どういう感情してるんだこいつら、という気分になります。感情のコストカットですね。そして謎毒ガスが急に出てきて近所のねーちゃんが瞬殺。そこに謎パラグライダーで有名YoutuberのKITE(カイト)が飛んできます。

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このパラグライダーみたいなの飛ばなくない?物理法則おかしくない?とモヤモヤしますが(実在するそうです!)、こんなところに引っかかってはダメです。日本沈没2020に疑問を持ってはダメなのです。そしてどっかに4人で行くことになりました。KITEが案内する理由はよくわかりません。理由がないのが日本沈没2020なのです。途中のスーパーに入って急に弓矢で襲われます。弓矢て。そして弟の剛が矢で射抜かれたところで次回へ。不思議なほどにドキドキしません。

4話 ヒラカレタトビラ

さて、剛を弓矢で撃ったのは店主の老人でした。ただ、ゲーム機に当たったおかげで助かります。なんやかんやあって光速で仲直り。展開が早いのも日本沈没2020の特徴です。そして矢が射貫いた剛のゲーム機をハンダごてで店主が直すのですが、いや、液晶画面を射貫いてるのにハンダ付けじゃ直らないでしょ……と思ったら超速で修理完了!やはりハンダごては万能機械だった!

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この直ったゲーム機は、食事中にゲームしてることを注意されて以後プレイされることはありません。嘘でしょ。その後、なんやかんやあってじいさんも一緒に旅立つことになり、途中で謎の外国人ダニエルを拾います。ダニエルは胡散臭すぎる上にマギー審司のネタを丸パクりで別の意味でハラハラしてきます。シャンシティとかいうユートピアがあるらしくてそこに行くことになり、すっごい歓迎される。でも明らかに怪しい、絶対宗教やん。そこに匿われてカレーを食べるシーンでほぼRPGのNPCみたいな扱いだった引きこもりがようやく存在感を見せます。

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「お母さんの味だ!」と泣きながらカレーを食べます。しかし、このがっついてるカレーがなんと大麻カレーであることが発覚。お前のお母さんは何を食べさせていたんだ。

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とてもまっすぐな目をしているな。クセになるのは当たり前です。味平のブラックカレーみたいになってきました。そしてスーパーの爺さんがモルヒネ中毒であることが発覚。いるのか、その設定。

5話 カナシキゲンソウ

なんとシャンシティの責任者であるマザーは少年を通して死者の声が聞けるらしいです。なんだってー!しかし、その少年の風貌なのですが、ちょっとアキラに寄せすぎではないでしょうか。

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そして、やべー勢いですげー大麻育ててます。その収穫を通して労働の大切さに気づいてしまう引きこもり。

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もはやなんでもありのシャンシティですが、ドラッグパーティーも行われています。

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危機の際にそれを忘れたいがために享楽に浸るということを描きたかったと思うのですが、前述の宗教っぽい死者の代弁とこの部分があまりにもかけ離れているので全然リアリティが出てこないのがとてもよいです。また、引きこもりがここでDJをして更に生きがいを見つけていきます。大麻栽培とドラッグパーティーで人間性を取り戻していく引きこもりの姿に胸が熱くなりますね。

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そうこうしているうちに、じいさんが教団に特攻をかけます。自動の車椅子に乗って弓矢で拳銃を持っている相手をガンガン殺していく無双スタイル。前世は呂布でしょうか。なぜ警備の人が拳銃を持っているのかも謎ですが、拳銃よりも強いです。じいさんはアキラっぽい子供を奪って車で暴走するものの、障害物に衝突して誘拐失敗。このアニメはどこにいこうとしているのでしょうか。

6話 コノセカイノオワリ

カタカナで「セカイノオワリ」と書かれると無条件にベッキーの笑顔が浮かんできますね。と思ったら、それはゲスの極み乙女。でした。風評被害で申し訳ございません、セカオワ様。ベッキーには幸せになってほしいです。なげーよ、宗教施設編!じいさんが消えますが「またそのうち出てくるよ」と歩たちは呑気に過ごしています。いいのか、それで。日本沈没2020はストーリー上の都合で主人公たちの気持ちや行動が不自然になることが多いです。それと、寝たきりのおっさんがなんとか研究所の小野寺さんって人だということがわかります。日本沈没を予言していたすごい人らしいです。どういう訳か首から下が不随になっていますが、この経緯については一切語られません。なぜこの施設に辿り着いたかも不明です。というか、昔一瞬だけ見た新聞記事からこのおっさんが小野寺さんだと気づく歩の直感力はすごいです。ニュータイプかもしれません。

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小野寺さんによるとすげー勢いのやべー地震が来るらしいです。この寝たきりの状態で何を感じ取ってそれを予言するのかわかりませんが、予言通りすげー勢いのやべー地震が来ます。天才過ぎる、小野寺さん。そんなことができたら半身不随も治せるのではないだろうか。さて、小野寺さんの地震が来て、なんか料理人の元八百長力士が剛を瓦礫から守って死にます。なんの感慨も起きません。そして、教団内では金を巡って殺し合いが勃発。『レザボアドッグス』を思わせる構図、刀を持ったマザーという『キル・ビル』なシーン、このアニメはタランティーノ作品であることが判明しました。

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そうこうしているうちにアキラっぽい少年が瓦礫で死にます。秒で死にます。瓦礫に当たる前に喋れなかったのが喋るようになるのですが、一体それが死者の代弁をする能力になんの関係があるのか全然わからないので、こちらも感情を動かしようがないです。瓦礫はめっちゃ強い。

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KITEに助けられたじいさんは施設内に残って、歩たちに襲い掛かってくる暴徒を弓矢でどんどん射殺していきます。高所からとは言え推定100m以上ある地点から百発百中の恐ろしい弓矢の腕前で、現代の那須与一と言っても過言ではないでしょう。スーパーの店主をしている場合ではありません。そして、マザーと信者はなんか死んだんだか死んでないんだかよくわからないまま終わり。出てきた意味がほとんどわからないダニエルはなぜかここに残ります。なんでだよ。お前の目的はなんなんだよ。とにかくいろいろな要素が多すぎるので一つのことに時間をかけられず結果として記号だけが残っていくというのがこの日本沈没2020の特徴です。

7話 ニッポンノヨアケ

だんだん東京事変の曲名みたいになってきたサブタイトルです。なんとようやく7話目にして初めて自衛隊と警察が登場します。日本のディザスターものでここまで登場しないなんて、温存がすごくないですか? 阪神の外人みたいじゃないですか?

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日本脱出の船は、マイナンバーで船に乗れる人が決まるそうです。謎エクセルで管理しています。セキュリティの方は大丈夫でしょうか。しかし、歩はなんかリレーの選手だから将来有望で船に乗れるらしいです。そんな選別思想、このご時世に何かにひっかかりませんか。しかし、その別れの間際、母親のマリが心臓を手術してペースメーカーになっていたことに気づいたため、歩は船を飛び降りていきます。家族一緒にという気持ちはまあわからないでもないですが、それだったら初手で拒否してるのではないでしょうか。乙女心、揺らぎますね。そうこうしてるうちにもう一度エスパー小野寺が地震を予知、すぐにすげー勢いでやべー地震が来ます。なんか逃げる家族たち。途中でけっこうぶっといパイプが飛んできて引きこもりに刺さりますが、命に別状はないらしいです。この怪我、特にこの先に意味はありません。

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さて、行った先で謎の国粋主義集団の船に乗ろうとしますが、母親のマリがフィリピン人で子供二人がハーフなので乗船拒否。途方に暮れていると、変なじいさんが船に乗せてくれます。途方に暮れたと言っても、5秒ほどの出来事です。スピーディーなご都合主義がとてもいいです。結局このじいさんが何者なのかもわかりません。その船にちょっと乗ると、国粋主義者の船が沈没しています。光の速さの展開です。伏線とその瞬時の回収が日本沈没2020の特徴です。これに気づいて国粋主義者の船に乗ることを嫌がった小野寺さん、もはや地震の研究者とかではなくやはりエスパーなのではないでしょうか。

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そして、なんかやべー波が来て、歩と剛とじいさん以外はみんな波に飲まれます。3人はテントっぽいゴムボートに乗ってなんとか脱出。話の展開が早すぎてヤバいです。

8話 ママサイテー

光の速さでじじいがサメに食われます。まさかのサメ登場。このアニメのちぐはぐさをどこかで見たような気がしていたのですが、それはサメ映画だったのです!日本沈没2020は立派なサメ映画だった!

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そこからは姉弟の漂流教室が始まります。腹が減って見た幻覚で父が「鳥を捕まえろ」と謎のアドバイスをしてきますが、それに従って鳥を捕まえたら魚を三匹ほど吐き出します。わざわざ現世に戻ってきてまで言うほどのスケールではなくて笑いました。

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そして死にかけたところに何の脈絡もなく母と引きこもりが到着して合流します。しかし、彼らがなぜ助かったのかは一切わかりません。飲まれたやん、波に。全体的に説明不足なので納得感もゼロ。まだ教団の大麻が効いていて幻覚を見ているのかもしれません。

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また、小野寺さんが残した数字が座標を示していて、それが岡山のあたりの場所だということを瞬時に剛が看破。数字の羅列で具体的な場所までわかるという恐ろしい才能です。そして手漕ぎボートで漂流していると、モーターボートを発見。しかしロープが引っかかっていて発進できない。ちょうど都合よくペースメーカーの充電が切れたマリが海に飛び込んでロープを外します。しかし、心臓が停止してマリは死亡。全体的に死が唐突すぎます。悲しむタイミングがわかりません。

9話 ニッポンチンボツ

さて、母との別れは一瞬で終わり、モーターボートを使った旅が再開。ここでこれまで引きこもりが唐突に「レッツゴークレイジー!」と叫び始めます。度重なる災害のストレスでついに精神に異常を来したのでしょうか。剛が「かわいそうに……」という目で見ているのが気になります。

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そして、いきなり謎の高性能船が現れます。なんとそこにはKITEが乗っていたのです!あまりにも脈絡がなさ過ぎて爆笑してしまいました。そう、この脈絡のなさこそが日本沈没2020を貫く1つの思想なのです。確かに災害は脈絡が全くないのですが、ドラマツルギーでそれをやられるとこちらは困惑するしかないですよね。小野寺さんも生きています。どうやってあの波から助かったのでしょうか。歩たちはマリが命を賭けて動かしたモーターボートを何の逡巡もなく捨て、KITEの船に乗り移ります。過去は振り返らない、素晴らしい姿勢です。ちなみに高性能船は自衛隊からパクってきたらしいです。ガバガバすぎませんか。

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その後も唐突ストーリーは続き、いきなりのラップバトルが始まります。突然のラップバトルはどうしていいのかわからなくなりますね。全然知らないジャンルのオフ会(テトラポッド研究会とか)に来てしまった気分になります。

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そしてその5分後にミッション・インポッシブルも始まります。座標が示す研究所でアーカイブを手に入れるとなんかいいらしいです。

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怒涛の展開です。なんか小野寺さんのアーカイブを手に入れると日本が救われるかもしれないとのことです。その過程で小野寺さんが死にかけて、データを守ろうとした引きこもりが華々しい死を遂げます。

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展開が早すぎます。振り落とされないようについていくのが精一杯です。なんか結局引きこもった理由がよくわからなかったんですが、なんだったんでしたっけ。

10話 ハジマリノアサ

さて、最終話です!データから沈んだ日本が最初に隆起してくる場所まで移動しますが、何も起こりません。隆起してくるのはいつになるかわからないそうです。だったらここに来る必要はなかったのでは?なんか命をかけてデータを守った引きこもりがかわいそうになってきます。そこで、KITEはなんと偶然に気球を見つけ(仕込んでた?でも、だとしたらどうやって?)、それで飛び立っていきます。理由は上空で電波を発して漂流している歩たちを誰かに気づかせるため?みたいです。この一連の流れで、KITEは生死不明みたいな感じになります。それは機材だけ飛ばせば良かったのでは……と思ったのですが、そこを突っ込むのは無粋ですね。というか、強すぎませんか、Youtuber風情が。どれだけYoutuberに期待してるんですか。もしかしてヒカキンも生死を巡る現場でこれくらい活躍できたりするんでしょうか。

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KITEの目論見どおり、歩たちは秒で救出されます。やはりこのアニメの展開はすさまじく早いです。そしてロシアの病院に収容されるのですが、そこで日本が沈没したことを知ります。地味に韓国が巻き添えになってるのがウケます。

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歩は怪我のせいで足を切断することになります。教団とかで何度かチャンスはあったもののロクに治療をしようという意志さえなかったので、あまり同情できません。そこからは怒涛のまとめです。様々な記憶と希望を胸に日本の一部が隆起します。なんと数年後です。あっという間です。剛はe-sportsの選手に。歩は義足でパラリンピックに出場します。なんか今までの伏線を回収してるんだかしてないんだかわからないですが、このとっ散らかった要素を全部ぶん投げて感動する方向にまとめようという豪腕には感服しました。この怒涛部分でKITEのドンデン返しなどがありますが、ここらへんは本編を見ていただくほうがいいかもしれません。最初に母親のマリに救われた男の子が成長して昔撮った記念写真を見たりとか、とにかくいい感じにまとめようとしているのですが、今までの光速暴走活劇を見てきた身からすると完全に置いてけぼりにされた気分になります。その急速な復興とあまりにも希望に満ちた感じが非常に唐突すぎて、これはもしかして8話で漂流した歩と剛はすでに死んでいて、その二人が末期に見た夢なのではないかという気さえしてきます。オリンピックに合わせてアニメを制作したのに、現実ではオリンピックが延期になるという不幸な偶然も見逃せませんね。あと、最後に歩がパラリンピックに出ているシーンで終わるのですが、それが幅跳びで笑いました。リレーとか短距離走じゃねえのかよ!!

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総評

ネットでは反日がどうこうとか言われていますが、そんな感じは全くしませんでした。作画もまあこういう味なのだろうという感じです。それよりも、圧倒的に疑問符が浮かんだのは劇作のクオリティに対してです。日本沈没から逃れる一家族という本筋だけでも大変なのに、そこにジェンダーマイノリティ、ラップ、多様性、クラブ音楽、タランティーノ、大麻、エコ、愛国心、引きこもり、サメ映画、弓矢じじい、山芋不発弾など多彩な要素を貪欲に盛り込みすぎたので、1つの要素にかけられる時間が恐ろしく少なくなってしまいました。その結果としてストーリーの展開を早めざるを得ず、それがシナリオのご都合主義を強調して、全体のリアリティが雲散霧消してしまった感は否めません。とにかくやることが多すぎました。

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アニメなのでリアリティがなくてもという意見もありますが、たとえば『崖の上のポニョ』のようなファンタジー映画ならいいのですが、現代日本に立脚したリアルなアニメを目指しているのなら、アニメだからこそリアリティに余計に気をつけなければならないのではないでしょうか。ただ、ここまで乱暴でむちゃくちゃな怪作にもなかなか出会えるものではないので、ぜひNetflixの潤沢なマネーを使ってもっと突拍子もないものをどんどん作っていきましょう。次はこのノリでバック・トゥ・ザ・フューチャー2022とかをアニメで勝手にやって、アメリカ人を激怒させてほしいです。よろしくお願いしますね!


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