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■ロシアW杯■敗者たちの挽歌 その5


ウルグアイ

好チームだったが、フランスのジェットストリームアタックによって粉砕された。ディフェンスはCBゴディン、ヒメネスの中央が異常に固く、この2人ならばちょっとしたテポドンくらいなら跳ね返せるのではないかというほどの信頼感。中盤もこぼれ球ダイソンと化したトレイラ、ステキゲームメーカーのベンタンクールを中心として非常に能力が高かった。前線は言わずもがなのスアレス、カバーニの世界最強クラスの2トップ。悠々とグループリーグを抜け、ベスト16ではロナウド率いるポルトガルをカバーニの強烈な2得点で粉砕。ロナウドから乳首を見せるチャンスを奪った。しかし、この試合でカバーニを怪我で失ったことがベスト8で響く。代わりのストゥアニも頑張ってはいたが、さすがにカバーニと比較するのは酷だし、ストゥアニって名前がなんかスカしててダメだった。結局ヴァランにセットプレーから叩き込まれて先制され、その後にはグリーズマンの無回転ジルーをGKムスレラが痛恨の後逸でトドメ。惜しくもベスト8で散ることとなった。もう少し先までいってもおかしくない、よいチームであった。今大会でゴディン、ムスレラ、スアレス、カバーニという選手たちが軒並み峠を過ぎるため、タバレス・チルドレン時代はいったん終焉ということになるだろう。しかし、ヒメネス、トレイラ、ベシーノ、ベンタンクールはまだ先があるので、それほど大崩れはしないのではないだろうか。タバレス監督の後が難しいといえば難しいのだが、そこさえ間違わなければなんとかなりそう。また、今大会最大の朗報はスアレスが何も問題を起こさなかったこと。2010年にはハンドでガーナを止め、2014年にはキエッリーニに噛みついたことを考えれば、今大会何もなかったことは奇跡に近い。ひょっとしたら今大会では「はしゃぎ過ぎてホテルを燃やす」くらいのことをやるかと思ってた。そう考えると、相変わらずとんでもない転がり方をしたりしてたが、それくらいは許容していただきたい。ただ、おとなしいウルグアイは少し物足りなかったのも事実。2016年の南米選手権でウルグアイ国歌と間違えてチリ国歌が流れた時になぜかゴディンが歌ってて、チームメイトたちが「え!?」って顔してたような衝撃の映像を次回のW杯には期待するとしよう。

ハリーポッターとゴディンの歌詞

ブラジル

スペインもポルトガルもドイツもいなくなった!大チャンス!か~ら~の~?とテンション高くベスト8に臨んだものの、ベルギーに粉砕されてしまった。グループリーグは初戦でスイスに引き分けたものの、その後はコスタリカ戦でネイマール劇場を開きながらもなんとか2勝で首位通過。ベスト16ではおっぱいぱーりーぴーぽーのメキシコに地力の差を見せつけて粉砕。さあベルギー戦というところで、今まで中盤底でぎくしゃくしてたデ・ブライネをベルギーが唐突に解放。対策は後手後手に回って失点し、結局デ・ブライネのスーパーミドルで決勝点を叩きこまれた。それまであんまり出番のなかったフェルナンジーニョが出場停止のカゼミロの代わりに出ていたが、オウンゴールをしたフェルナンジーニョが悪かったというよりは強豪相手にカゼミロと組めなかったことが痛かったのではないか。マルセロ、ネイマール、コウチーニョの左サイドは破壊的だったが、同時に守備では弱い部分が多く、ミランダの驚異的な守備能力でぎりぎり破綻を防いでるシーンも多々あった。ここをたとえばフェルナンジーニョをインサイドハーフに起用できたらもしかしたら結果は違っていたのかもしれない。ま、どっちにせよ後のマルセロ!ただ、ほとんどルカクをマンツーで封じていたミランダは異常だった。しかし、今大会は攻守のバランスもよく、タレントも豊富で「エデルソン使わないんならくれ」とかイングランドあたりは思ってそうな重厚な陣容だったが、結局ベスト8どまり。フアン・ジェズスの不発や、サイドバックの相次ぐ途中離脱(マルセロは最後には戻ってきたけど)など不測の事態も多かったにせよ、ちょっと期待外れだった。勝負は怖いと言われればそれまでだが、たとえば監督がブラジル人縛りになってるところとかはアルゼンチンと同様にけっこう影響が出ているのかもしれないなあ、と。さて、今大会のネイマールですが、姿勢、回転数、飛距離、芸術点、滞地時間ともにウルトラE難度の転がり芸はたびたび話題になり、トータルの転がった時間がベスト16までで14分を記録するなど、さすがの出来。ちょっと大袈裟ではあったが、ネイマールがほんとに痛がってないことなどは周知の事実なので許容範囲内であり、まさに金メダル級の演技と言えるだろう。イランの大回転・団体も魅力的ではあったが、やはり個人の絶対大回転王者として君臨するネイマールの敵ではなかった。次回のカタール大会でもキレと凄みを増した回転で大会を制して欲しい。あと大会途中でかた焼きそばみたいな髪型からNBAの高卒ルーキーみたいな髪型になるのは笑えてずるいからやめて欲しい。

南アフリカにも煽られて

スウェーデン

とにかく守るぜフィヨルドディフェンス!!IKEAの家具よりボルトが固い!という具合に守り倒したが、ベスト8で力尽きた。4-4-2で巨人を揃えて中を固め、とにかく隙のないディフェンス。2トップのトイヴォネンとベリからしっかりと守るこの布陣に対してほとんどの国が攻めあぐねて、パスはうろうろとブロックの外を回るばかり。とにかく試合開始から5分くらいでもう眠い。攻撃はライプツィヒのネオワーワーサッカーの申し子である百日紅じゃなくてフォルスベリを中心にカウンターを繰り出すのだが、得点はPKとか相手選手に当たって方向変わったとかオウンゴールっぽいのとかそんなんばっかり。イングランド戦もぐだぐだの展開になるかと思われたが、スウェーデン以上に単調で眠いイングランドがセットプレーで胸板マグワイアのヘッドで先制。そこからがんがん攻め込むものの、第三戦目をターンオーバーに当てたフレッシュなイングランド相手に得点することはできず、最後は服装のセンスがどうかしてるデレ・アリにヘッドを叩きこまれて終戦。もったいない敗戦ではあったが、戦力的にはここらへんが限界で、よくやった方だと言えるのではないだろうか。その一糸乱れぬディフェンスは非常に美しく、ここにイブラヒモビッチがいればと思ったが、イブラヒモビッチを入れると途端に守備が決壊するのだろうなと思ったので、呼ばなくてよかったのではないか。さて、今大会のスウェーデンで10番を背負ったフォルスベリはライプツィヒ所属らしくハードワークができる選手で、単調なスウェーデンの攻撃にラーション別人のキックとともに変化を加えられる存在だった。金髪で端正な顔立ちで「ネクスト・ベッカム」という呼び声も高いが、なんか顔をよくよくみると端正さよりも無骨さの方が際立ち、ネクスト・ベッカムというよりはヨーロッパ犯罪映画で裏切り者として最後には組織に殺されそうなネクスト・血まみれのライアン・ゴズリング感のほうが強いのだがいかがだろうか。次回作はニコラス・ウィンディング・レフン監督でよろしくお願いいたします。

この後めちゃくちゃストックホルムの路地で蜂の巣にされた

ロシア

前評判が最悪だったロシアだが、ベスト8まで辿りついたのは開催国として面目躍如の大成功だった。初戦でサウジアラビアを5得点で粉砕し、次のエジプトもなんとか勝利して決勝トーナメント進出。ベスト16ではスペインを相手に一歩も引かずにPK戦まで持ち込んで勝利。ベスト8のクロアチア戦でも、前の試合でPKまでいったにもかかわらずなぜかさっぱり理由はよくわからないのだけれども延長戦でも走りまくって、一度は勝ち越されながらも同点に追いついた。PK戦で散ったものの、大健闘とも言える内容だった。予想外ともいえる活躍にプーチン閣下もにっこりと笑ってチェルチェソフ監督の処分を記した文書の破棄を命じたとか命じてないとか。躍進の最大の要因は、桁違いの走力。総走行距離・スプリント回数共に他国の追随を許さない数値を叩き出し、ホームの大声援と常日頃からのトレーニングとの成果を見せつけましたね(にっこり)。また選手としては俺の推しだったジュバがスモロフをベンチに追いやって前線に君臨してハイボールをものにしては驚異的走力の味方が来るまでしっかりとキープして攻撃の軸となった。その他にも魔法のキックと驚異的な走力を誇ったチェリシェフは元レアル・マドリーの実力を見せたし、アイデアと驚異的な走力を誇ったゴロビンは次世代の中心としてロシアを支えていく逸材だということを見せたし、ザゴエフは驚異的な走力を発揮する前に初戦で張り切り過ぎて肉離れした。ただ、驚異的な走力はあったもののチームとしてはかなりまとまっており、チームに鉄の規律と驚異的な走力をもたらしたチェルチェソフ監督には何かプレゼントしたい。さて、今回のロシア代表の活躍を見てロシアのスポーツ界に興味を持った人も多数いるかもしれない。そんなあなたにオススメのロシアスポーツドキュメンタリーはこちら。スポーツの楽しさ、爽やかな汗、弾ける人、そして謎が謎を呼ぶミステリー要素と盛りだくさんの内容でアカデミードキュメンタリー賞を獲った作品を是非ご覧ください!!あれ?こんな時間に誰かが部屋をノックしてるな……誰だろう……?

ロシアスポーツ界を代表するナイスドキュメンタリー!!


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