かわりゆくもの、かわらないもの ~劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン感想~

劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン、観てきました。

大変良かったので、簡単にですが感想を。ネタバレ注意です。


私はTVアニメ版で「ヴァイオレットとギルベルトは再会できなかった」ということが好きで。出逢えないからこそ募る想いと積もる手紙が大変うつくしいなと感じたものでした。また、去年公開された外伝も前半パートが大変好きで(だって深窓の令嬢たちの舞踏会ですよ!?)。だからこそ、今回の劇場版はどうなってしまうのだろうという思いがありました。


まず、TVアニメ版は放送当時に見たのみ、きちんと復習してないけどどうかしら……と思いましたが大丈夫でした。あの依頼人のお孫さんが語り部になるとは……当時にぐっとなった思い出がぶわっと蘇りました。Twitterのフォロワーさんが「マスクの替え必須」と言った意味がいきなり分かってしまいました、まさかこんな序盤で泣くなんて……。

そしてちょくちょくギルベルトらしき人影の描写が入るたびに「えっほんとに生きてるの……?ほんもの……?」と色々複雑な思いになってしまったのですが。「ギルベルトに再会できるかもしれない」と伝えられた時のヴァイオレットの様子ですべてが吹き飛びました。今までに無いほど声を震わせ、上気した頬で瞳を輝かせるヴァイオレット。その恋する乙女の表情を見た時、「彼女は彼に会わなければならない」という想いに駆られました。

そのため、そのあとのギルベルトの言動についてはお、お前~~!!!となりましたが、周囲の男性陣が殴ろうとしてたり麻袋に詰めようとしてたりしてたので助かりました。ありがとう社長……ありがとう大佐……。

ただ、ギルベルトの思いも共感できることではあって。「会いたいけれど会う資格がない」、この感情をヴァイオレットが別の方法で理解することができた、というのが上手い構造だなあと思った点でした。病床の少年、ユリスとの出会い。

病気で弱っている自分を見せたくないがために、親友であるリュカを突っぱねてしまったユリス。リュカに謝罪と感謝を伝えたい、という彼の想いを聞いていたヴァイオレット。その時が訪れたのは、奇しくもヴァイオレットがギルベルトに再会を拒絶された直後のことでした。結果としてユリスはリュカに想いを告げることはできましたが、ギルベルトが拒絶した理由をここでヴァイオレットは改めて考えなおすことになったのではないでしょうか。だからこそ「最後の手紙」だけを残し、島を後にした。

この流れについては、もうひとつ上手い構造だなあと思った点がありました。「想いの伝え方」の主流が手紙であったために機能してきたドールたち。しかし、電話の登場により、郵便社に危機感が漂い始めます。特にその点を強く感じていたのがアイリスでした。電話という存在を憎んでいた彼女でしたが、最終的にユリスがリュカに想いを伝える方法として選んだのは手紙ではなく電話でした。きっと、ドールの仕事は「手紙を書くこと」ではなく「想いを伝えること」だと思ったからなのではないでしょうか。このアイリスの考え方の変化にもぐっときました。

ただ、だからといってすべて電話に変化すればいいという訳でもなく。ギルベルトに再会の後押しをしたのはヴァイオレットの「手紙」でした。すぐに伝えられなくとも、じっくり紡げるからこそ伝えられることもやはりあるのです。ギルベルトと再会できた時のヴァイオレットが言葉を詰まらせていたのを見て、それを強く実感することとなりました。


どんな形であれ、想いを伝えること。その大切さを改めて考えさせられる映画となりました。またじっくり味わいたいです。あと、書き漏らしてしまいましたがヴァイオレットの衣装や挨拶の所作はやはり最高でした。それを劇場の大画面で見られたのも良かったです。ありがとうございました。



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