見出し画像

入社してすぐ転職サイトに登録する人が過去最高に。これをどう見るか

Revueのサービス終了に伴い、そちらに掲載していた記事をnoteに移設しています。本記事は、Revueにおいて 2022/7/2 に掲載したものです。

2022/12/21

dodaの調査では2022年4月に新社会人がdodaに登録した数を見ると、11年前に比べて実に28倍になったそうです。

11年4月にdodaに登録した新社会人の数を1とすると、18年以降、20倍超えが続く。新型コロナウイルス対策として1回目の緊急事態宣言が発令された20年4月は、働く環境が一変したことを背景に、登録者は減少したものの、その後は右肩上がりの状態が続き、22年4月は、対11年比で過去最高となる約28倍にまで増加した。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/14/news136.html

doda編集長の喜多恭子氏は“転職ネイティブ世代”だとコメントしています。これはネガティブなことなのかポジティブなことなのか、評価するのは難しいでしょう。ただ、1社で勤め上げることが稀になり、どんどんと転職が当たり前になっているトレンドが、新卒にも来ているのだという証左ではあります。

60歳で3割程度が転職経験なし。けれど20代でも4割は転職している

では、そもそも実際に新卒入社してから転職せずに1社にずっと在籍している人はどれくらいの率でいるのでしょう。

少し古いデータですが、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査2017」をベースにしたもので、最初に就職したときに正社員だった人に限定して、各年代ごとに転職回数を聞いたものがありました。

http://www.hosonism.com/archives/237
http://www.hosonism.com/archives/237

これによると、60歳前半の男性で転職経験のない人は約3割いらっしゃいます。女性ではそもそも働き続けている人が少なかったり、一度産休で職場を離れ、復帰するときに職場を変えるからか、20代後半から30代後半までの減少率が大きくなっていますね。

これらの数字を見て、もともとからそこまで転職自体が特別なものではないじゃないかと思うか、35年くらいは1社で働く人が3割もいるならすごいことだと思うかは個人の主観によるので、ここでは論じません。

注目したいのは20代後半、そして30代前半です。ここでも4割近いかたは転職しているのです。これまでも転職する人はいたので、特別なことではないのです。

転職潜在層が増えている?

転職すること自体はもともとからあったけれど、エージェント登録率が高まっているのは事実です。これは、今の会社に耐えられなくなって転職を意識してから転職活動をする人が多かった昔から、転職をいつかするかもと思って登録だけでもしておく人が多くなっているとも考えられます。つまり、潜在層があまりおらず顕在層だらけだった昔に対して、潜在層が膨らんでいるというように捉えられます。

確かに潜在層向けのサービスは増えてきています。例えば、ウォンテッドリー、Meety、YouTrustのようなサービスは「会社を知ろう」「話を聞いてみよう」といった転職しようとする以前のライトな潜在層向けのサービスで、これらのサービスは転職を決めて、職務経歴書を仕上げて動く、これまでのサービスとは設計思想から違います。

僕は1年目からエージェントと会っていた

僕は外資系証券会社へ入社早々に同じ部署の先輩から「転職するしないに関わらず、エージェントとは情報交換しとけ」と勧められ、実際にエージェントと会っていました。別にエージェントと付き合うこと自体は悪いことではなく、それが普通という感覚でした。

外資系証券会社の場合、いつ会社都合で切られるか分からないので、日頃から備えておくというのが意図ではあったと思いますが、別に転職するつもりがなくともエージェントと定期的に会話をしておくと、あの会社が強化に出ているとか他社の動向も耳に入るようになり、自分が昇進などについて会社に対して強く出れるのか今は弱腰でいるべきなのかも分かるようになります。自分のキャリアを自分でつくる、プロフェッショナルとして自立心を持つという感覚はよく分かりました。

野球選手やサッカー選手を想像すれば分かりやすい

「エージェントとの会話を通じて、マーケットの状況を見る」というのは、野球選手やサッカー選手のようなイメージだと分かりやすいです。

あのチームは外野手のポジションが弱いとか、オーナーが変わって補強に力を入れているとか、そういうのが分かれば、年俸交渉もしやすいはずです。あのチームならこれくらいもらえるかもしれない、けれどレギュラーをとれるかどうかは分からない、すぐに契約を切られる可能性もあるなど、想像しやすいですよね。

逆に自分のいる業界や業務の動向なんかも、エージェントと会話することで感じとることができるはずです。

外野手を続けるのは厳しいのでコンバートしよう、センターフォワードだけでなくもう少し様々なスキルを身に着けてポリバレント性を高めようとか、そういう感覚も持てるはずです。

チーム側も要求が行き過ぎていれば要求を断るでしょう。フェアバリューがいくらなのか、お金だけでなくスキルのアップに協力するなどお金以外でもサポートできる部分はないかなど、考えるでしょう。通訳を付けるとか出場機会を約束する、引退後のキャリアを残すなど、お金だけではない様々な価値提供があります。

選手側もお金だけではなく、俯瞰して考えたほうがよいでしょう。巨人にFAで高給取りになって移籍してもあまり出場できずFA後の2年で引退になるくらいなら、生え抜きの今のチームにずっと残って、自分を愛してくれるファンを大切にしながら、コーチや監督、最低でも球団スタッフとして残る道を選ぶのもありです。一度でも転職すれば、生え抜きという特別な勲章は失われます。

自分の大切にするモノは何か?を考えておきたい

僕自身、外資系証券会社に入社を決めた時、きっとどこかで転職するのだろうと感じました。日本の大企業の多くは生え抜きを大切にしています。給料だけを見れば日本企業は外資系に劣ることが多いでしょうが、逆に生え抜きに優しいのも事実です。同じ企業で長く携わるということは、それはそれは難しいことです。それだけ特別なことなのです。

生え抜きに優しいなんて成果と関係ないことを大切にするから日本企業はダメなんだとかいう人もいますが、安定的であることもとても価値あることです。心理的安全性が大切とよく言われますが、そのとおりだと思います。

僕は「日系企業の生え抜き」という特別なモノを手にすることはないのだ、と覚悟をしました。

エージェントとの会話を通じて、自分の大切にするものが何かをちゃんと考えておきたいものです。同時に、何が今市場に求められているのかだけをしっかり吸収し、その場にとどまることも、エージェントと会話することの価値です。

エージェントとしては「転職させてなんぼ」なので、ポジショントークも入り混じります。自分のハンドルは自分で握り、エージェントに握らせることはないよう、情報のスクリーニングはしっかりしましょうね。

サポートしてくださった方のご厚意は、弊社の若手とのコミュニケーションのためのコーヒーショップ代にさせていただきます。