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【好きなモノの話】トゥルーマン・ショー

 今回は、好きな『映画』について書いていきます。「トゥルーマン・ショー」です。
 1998年公開のアメリカ映画で、監督はピーター・ウィアー、主演はジム・キャリーという豪華な顔触れです。
 好きなモノについて語るので、勝手な解釈や主観的な意見には、ご容赦下さい。

 とある島で暮らすトゥルーマンは、会社に勤め、美人な奥さんと仲の良い親友がいて。つまり、絵に描いたような平穏な暮らしをしていました。しかし、彼は自分の環境の異変に気付きます。周りの不自然さに。
 それもそのはず。実は、トゥルーマンは生まれてから今までの全てを「トゥルーマン・ショー」という番組で放映されていたからです。つまり、周りの全てが作り物なんですね。妻も友達も全員が役者で、彼の周りには24時間体制で隠しカメラがついています。さらには、彼の住む島までもが巨大なセットだったんです。そして、数十年経った今、彼が綻びを見付ける訳ですね。
 自らの状況を理解し始めたトゥルーマンは、それを打破するために奔走します。

 この映画の凄い所はやっぱり設定ですよね。観た事の無い人は上記の説明だけで面白そうだと思うはずです。
 人の生活の全てを放映するなんて、倫理的にどうかと思いますが、映画内では大人気番組となっています。そして、現実で同じ事をしても、やはり人気番組になると思うんですよね。その辺りの、現実と創作の折衷点が秀逸だと思います。
 また、メッセージ性の強い映画なので、アンチテーゼや風刺が多い所も好きですね。
 
 個人的に好きな部分は、設定を存分に生かした展開です。例えば、広告のために不自然な動きをしてしまうシーンですね。24時間放映する必要があるため、CMを流せないから、トゥルーマンの前で奥さんが不自然にも商品を紹介するんです。でも、それがおかしいと彼に詰められる結果となります。設定から起きる必然で面白い展開は、無駄が無くてスタイリッシュに感じます。

 もう1つ語りたいシーンとしては、映画の最後の数秒のシーンです。ファンの間では有名ですが、秀逸な風刺となってるんですね。
 テレビの前の視聴者。つまり僕達へ。
 トゥルーマンが自分の状況に勘づき、世界からの脱出を試みますが、テレビ局側は勿論それを阻止しようとします。そこで、トゥルーマンvsテレビ局の闘いが始まります。視聴者としては目が離せません。数十年続いた番組がどうなるかのクライマックスですから。終いには、番組のプロデューサーが出てきて、トゥルーマンと言葉を交わします。「ここが君の世界だ」と。しかし、彼はその世界を飛び出しました。そして、番組は終了します。視聴者は大きなカタルシスを感じる訳です。
 しかし、そんな視聴者達も次の瞬間には、他の娯楽を探し始めるのです。
 1人の人間の人生を使った壮大な物語も、テレビを通せば、他と変わらない娯楽の1つでしかないという事でしょう。
 そう考えると、トゥルーマンを最も愛した人物は番組のプロデューサーなのかもしれません。皮肉な話です。
 
 ジム・キャリーの演技も凄いんですよ。コメディが得意な役者は、表情が豊かな方が多いと思っているのですが、彼はトップクラスですよね。この映画では、シリアスとコメディの2色のキレがカッコいいんです。特に笑顔です。彼の笑顔は人を幸せにするコメディアンのそれだと思っています。だから、逆にシリアスも映えるし、この物語に説得力が出てくる。雑な言い方をすると、『人を騙せる笑顔』なんじゃないかと思います。

 『トゥルーマン症候群』というものがあり、映画と同じ様に自分も誰かに監視されているのではと思う被害妄想の事らしいです。
 映画と同じでなくても、規模が大きくなくても、誰もがトゥルーマンのように、自分を取り巻く得体の知れない何かと戦っていると思います。将来への不安、人間関係、周りからの重圧などもあるかもしれません。
 映画では、自分を囲む世界に穴を空け、新たな世界へ進んでいきました。物理的に。それこそ、雛が卵を割って出ていくように。
 僕達もまだ、自分が今いる世界より外の世界を知らない。だから、トゥルーマンのように今いる世界と闘い、新たな世界へと進むべきなのではないか。
 僕はこの映画から、そんなメッセージを受け取りました。

Fin

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