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平穏の保ち方-アンプラグド-

2019年の夏、星野源が表紙を飾った「anan」
そこで彼が語ったインタビューが、時を超え2020年の、春とは言い難い春に私を救ってくれている。

(ここからインタビューのネタバレを含みます。もしあなたの手元に右肘を着いてこちらを見ている星野源がいるのであれば是非。)

その号のテーマは「こころとカラダ、整理整頓。」
その中の「こころを整える」というページ。
そこで彼はとある素敵な言葉を教えてくれた。

インタビュアーの「どのようにして平穏を保っているのか」という質問に彼は申し訳なさそうに笑って平穏は無いと答えた。なんだか胸が苦しくなった。私が彼のファンになってからというもの毎日のように新しい景色を見せてくれた。決して穏やかな生活では無かっただろう。私たちには到底想像できない事が沢山あっただろう。それでも私たちに素敵な景色を見せてくれる星野源に本当に頭が上がらない。

それから彼はせめてもの思いで平穏を保つには「情報を受け取らない」ということだと語った。

様々な媒体から、溢れ出るように先の見えない状況に関する情報が流れてくる今の世の中。沢山の情報の中から言葉を失うほど悲しい、拳を握り締める程怒りたくなるような情報が流れてくる。その度、心は削られているのだ。当たり前のように情報を受け取りながら、負の感情を抱きぶつけている。それは勿論、当たり前が当たり前だった世の中でも同じだった。要らぬ情報を知らぬ間に受け取って、知らぬ間に心を削って、気が付いたら辛くなっている。何だか情けない。偶然受け取ってしまった情報に、負の感情ひたすらぶつけていられる程、私たちは暇では無い。そんなことは不毛で無駄な行為だ。

そんな不毛で無駄な行為に心を削られていた近頃、去年の夏に読んだこのインタビューで彼が教えてくれたこの素敵な言葉をふと思い出した。

“アンプラグド”
プラグを抜く、情報の回路を断つということ。

この説明は少し受け売りにはなってしまうが仕方ない。私なりの説明を…と思ったのだが、ここだけの話、検索窓にこの言葉を打ち込んでもこの説明は出てこない。流石、文筆家星野源だ。

今の世の中は決して平穏とは言えないだろう。
そんな中でせめてもの思いで平穏を保つ術を持っているというだけで削れた心がほんの少し癒える。

正直、全ての情報を遮断する事が良いとは言えない。自分と周りの命を守って生きていく上で必要な情報もある。それなら、その事だけを調べれば良い。この便利な世の中、重要で、正しい情報が必ず発信されているはずだ。自分が信じたいと思うものを真っ直ぐ信じればいいのだ。嘘に踊らされたり、価値観の合わない意見に悩んだりする必要は無い。この世に溢れ出る、本当か嘘か分からない情報を全て得なければならない理由なんてものは無いのだ。誰も守ってくれないこの世の中では、自分は自分で守るしかない。要らない情報を得て、無駄に心を削るなんて事をしていたら、ただでさえ削れてしまっている心が遂に無くなってしまう。そんな時間は、削れた心を癒す時間に使おう。傷は元には戻らないから、少しでも癒してあげよう。

そして、この文章も要らぬと読み返してみて思った。私がどう思っているかなんてこの世の大概の人は興味が無い。何故こんな文章に大事な時間を費やしてしまったのかとここまで読んでくださった方は思うだろう。申し訳ない。しかし、私は書く。知らぬ間に削られた心を癒すために。プラグを挿して、自分から発信する。傷は元には戻らないから、こうして書くのだ。そう思ったら少しだけ満足して、窓の外の雲ひとつない青空を見上げた。

今は紛れもなく春だ。

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