ランチと犬の散歩
パリにつき翌日。昼食を食べにカフェに入る。以前はフランス語のメニューは全くわからなかったけれど、今回は少しだけ分かってきた気がする。ビールとかワインだとか(それの赤だ白だとか)飲みものやら魚やら牛やらを、なんとなく覚えていたのはとても役にたった(まだそんなものなんだけれど)。パリジェンヌサラダという、なんとも最初のランチにふさわしい名前のサラダを注文する。これでもかというぐらいに、葉っぱ、トマト、きのこ、チーズ、ハム、ゆで卵で山盛りになったサラダが運ばれてきた。日本の標準のサイズからすると、2倍ぐらいはあった。これがまた美味しい。このカフェはカウンター、テーブル、テラス、タバコなどの販売、という風に、構成されていた(これがいわゆる街のカフェのスタイルみたい)。エスプレッソをさっとのんで行く人も入れば、気軽にビール1杯という人も多い。ビジネスランチで、ワインを空けている人もいた。3人で1本あけていたので、けっこう楽しくなってきたみたいで、みていても楽しいものだった。もちろん僕もハイネケンの生ビールをのんだ。
オペラ近辺に用事があったので、(この日は瑠衣さんのルサージュへの入学の日だった)ギャラリー・ラファイエットという百貨店に寄ってみる。色々なブランドの香りのブースが、広々とあるのが、なんといってもここの魅力だ。ここまでしっかりとスペースをとっていれば、周りの香りをきにせずに、落ち着いてみることができる。自分が知らなかった香りのものを、中心に見てまわった。去年の夏に発売された、ガブリエルシャネルの人気がとてもあるらしく、ブースのつくりも豪華だった。この香りは街ですれちがう人からよく香ってくる。どういうい香りが、流行っているのかを、リサーチするのにはパリが一番だと、調香師の手帖という本にも書いてあった。そのとおりなきがする。そして、友人に教えてもらっていた、freshという、とても可愛いリップクリームも見にいく。スタッフのフランス人がとても気さくで、白のブラウスに紺のパンツ姿が似合っていてとても素敵だった。これはまだ日本にはないんですよとか、この色がおすすめですよとかそういう話をしながら、入学のお祝いにと買わせていただく。ラッピングもとても素敵で、おまけもしてくれた。とてもありがたい。
休憩がてらにカフェでエスプレッソもよくのんだ。バーで飲めば1ユーロだし、座っても2ユーロ。バーで飲んでいる人で、当たり前のように入れた砂糖の袋を下におとした。そういえば、たしかに下に、大量の砂糖の袋がおちている。気になって僕の左下に落ちている数を数えてみるとなんと13個もおちていた。僕にはまだまだそういうことはできなそうだ。
この日はやりたいことをひとしきりやって、時間がすこしあったので、外でスケッチでもしていた。向いにある建物を書いていた(これがとてもでこぼことしているし、窓がひとつずつ凹凸になっていて、各階ごとに若干のデザインが違う、しかも5階だてということだから、書くのに少々時間がかかった)。しばらく書いたところで、フランス人のおじいさんが近寄ってきて、スケッチブックをゆっくりとのぞいてきた。 『いいスケッチだね。ところで、おれも絵をかくんだよ。ちょっとかしてみな。』といわれたので、どうぞどうぞ。と鉛筆とスケッチブックを渡す。なにを書くのだろうかなと、となりで見ていると、裸の女性が犬の散歩をしている絵をかいていた。これがまたいい感じのスケッチだった。女性の足はしっかりと散歩をしているぞという意思があり、それで裸ということには本人ですら何も気にもしていないような絵だ。むしろ見ているこっちがただ単に裸だという(しかも犬の散歩をしているという)ことに気を使ってしまっているだけなんだろう。数分で書きおえて、この絵の説明と、彼はいままで絵を描いては、いろいろなところで売ってきたんだという話をきき、スケッチブックを返してもらった。サリューとお別れの挨拶をかわし、瑠衣さんも学校が終わる時間だったので合流して滞在先に戻る。
近くのスーパーマーケットで必要そうな食材を買い出しにいく。パスタ、ペンネ、トマト、リンゴ、キウイ、その他いろいろな野菜、ビールにワイン2本とあれこれを、家主の人から借りた、ころころとするかご袋にいれていく。僕の足もとに鶏肉のかたまりがころころと(むしろ一匹まるまると)落ちてきた。とてもびっくりしていたら、にぎやかなスタッフの女性がさっと拾い、僕に『クゥクゥクゥクゥ』と近づけてみせてきた。『クゥクゥクゥクゥ』とだ。そしてまたその、一匹の焼いたらとても美味しそうな、鶏肉のかたまりをどこかに持っていった。
少しづつパリでの生活らしくなってきた。
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