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Un petit roman

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#短編小説

整えられた髪

整えられた髪

彼は子どものころに祖父につれられて初めて理容室にいった。

部屋の中央に一つだけおかれた、子どもにはあまりにも大きすぎる革の椅子に座り、髪をきってもらった。きってもらっているあいだじゅう、祖父と理容師のおじさんは話をしていた。何を話ていたのかはまったく覚えていない。

切り終わったあとに、肌に泡のクリームをぬられた。肌の表面があたためられ、カミソリがすっと空気をはらんだ泡をすくっていく。終わった後

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