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女王様と青豆ごはん

 お庭のすみに植えたさやえんどうももう終わりに近づいてきました。今年初めて種から蒔いてみたけどおかげで春から初夏の今まで毎日少しづつ甘い絹さやえんどうを届けてくれた。でもいくらかは見逃してしまい収穫時期を逸して太ったりっぱなさやに成長させてしまった。こんな時はさやから出してお豆だけお味噌汁に入れたり目玉焼きのはじっこに入れて焼き美味しくいただきます。祖母がよく言っていたっけ、「蕨取りに山に入って行くとき、もう先に来て蕨を取って帰る人とすれ違う、。『もうこの山の蕨は取りつくしてしまいました』とその人は言うけれど実際に山に入ってみるとまだたくさん蕨は見つかる。そんなものなのよ、蕨は・・・。」。蕨もさやえんどうも似たようなものなんだな。自家製グリーンピースを食べながら思い出します。
 グリーンピースのもう一つの思い出と言えばちょっとかわいそうな青豆ごはん。5月に毎年シリコンバレーで行われる日系人のお祭りでいろんな団体が模擬店を出すんだけど照り焼き、焼きそば、巻きずしなどの向こうの日系コミュニティーでおなじみの屋台フードが並ぶ中で私の目が止まったのが年配の女性ばかりが集まってやっている地味~な屋台でした。見るとそこで出しているのはおべんとうのパックに入ったエンドウ豆の炊き込みご飯だけ。その地味~な青豆ごはん以外何も入ってない容器を山と積んで売っています。周りのヤキトリだのテリヤキだのお肉を使った食べ物の模擬店はドンドン売れて行ってるのにその店の前にはお客は誰もおらず閑古鳥が泣いています。
 青豆の炊き込みご飯なんてあなたが日本から来た日本人でもお祭りに来て食べたいものじゃないでしょう。一般のアメリカ人であればほぼ選択しないのではないでしょうか。それにしてもなぜ客観的に見てあまり売れそうもない青豆ごはん1択にこの団体は突っ走ってしまったのでしょうか。
『ああそういうことね・・・。』私は何かこの団体の内部がどんなものか分かってしまったような気がした。多分そこには独裁的な女性リーダーがいて模擬店で何か出すとなった時、個人的に思い入れのあった「青豆ごはん」を押したのではないだろうか。時期的に青豆の季節だし、作るのは簡単だし、何より自分が作って持っていくと皆美味しい美味しいと食べてくれるではないか。確かに豆の炊き込みご飯は美味しいけどお祭りの出店の中でそれが競争力があるかどうかというのはまた別問題だがだれも彼女にはそれを言う事ができない。皆女王様のご機嫌を損ねたくないイエスマン(ウーマン)ばかりだからだ。あるいは失敗が見えていたとしても彼女を良く思わない人たちが故意に黙っていたのかもしれない。
 グリーンピースを見るたびあの北カリフォルニアの初夏の午後の熱い日差しを浴びてどんどん傷んで来ているだろう大量の青豆ごはんを前にした女性たちの悲しそうな困り果てた顔を思い浮かべてしまう。

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