見出し画像

GF20-35mmF4 R WR

待ちに待ったと言っても過言ではない。それほどまでに待ち焦がれていたGFX用の超広角ズームだ。F4通しの広角域は最初期に発売されたGF32-64mmがあるが、あちらは広角から標準域なので用途が微妙に異なる。32-64mmは持っていないが似た焦点距離の35-70mmを持っているので使う場面はあまり変わらないだろう。

それはさておき。
このレンズは35mm換算で16mmから28mmまでをカバーする超望遠ズームだ。真っ先に挙がる用途としては風景だと思うが、意外と使える場面が多い。

星景写真については先日の長野旅行で長々と書いたのでそちらを参照していただく方が早い。改めて書くとまた長文になりそうなので。

単焦点に匹敵する描写

直線がきれいに出る。ややアオリ気味なのは腕の問題。

超広角〜広角につきまとう歪みはあるが、基本的に自動補正が入るので気にならない。光学補正のみで歪みをなくすのはサイズや値段等を考慮して難しいと判断したのだろう。
では描写に影響があるかと言われると、多くの人は分からないはず。

左上の全体を見ると周辺光量落ち自体は味になるかもと思ったり。

上の写真から補正プロファイルを切って隅を等倍にしたが、像が流れるような感じはない。周辺光量落ちは大きいが、20mmの開放なのでこればかりは仕方ないだろう。

風景を撮るときは回折が気にならないレベルまで絞るのが一般的だと思う。絞った方が被写界深度が深くなるし、隅の画質も向上する。
特に単焦点と比較したとき、ズームレンズは描写面で不利だと言われることが多いので絞り込んで撮るに越したことはない。

構図に若干のズレはあるがF4とF16の撮り比べ。もはや間違い探し。

そう思っていたが、今回風景を撮り比べてみて驚かされた。絞りによる描写の変化が分からない。つまり開放から使えるし、絞りは被写界深度やシャッタースピードのコントロール以外の役割を持たない。

Lightroomで隅を等倍表示にしたが、どちらがF4かこれだけ見てわかる人はいないのではなかろうか。

携帯性の高さ

良い写りをするレンズは大きく重たい。巨大なレンズというと超望遠をイメージしやすいが、超広角も実は大きいものが多い。
ちなみにGF23mmF4は同じフィルター径で845g、かたやこちらは725gと若干ながら軽い。全長ではあちらの方が短いが、ズーム機構が入ってなお軽いというのは特筆すべき点だ。

鏡胴の太さが先端まで同一なのも収納性やホールドの良さに繋がっている。とはいえレンズフードが一回り以上は大きいので、逆付けしてもかなり幅を取るのは留意する必要がある。

実用面に重きを置いた機能性

サイズ以外にも実用性を高めている要素がいくつかある。その一つがインナーズーム機構。読んで字の如く、ズームをしてもレンズの全長が変わらないのだが耐候性への安心感が高い。寄って撮るときも被写体への接触を気にせずに済むのもメリットだ。

次にフィルター径。開放をF4に抑えたことで円形フィルターを付けられる。当然角形フィルターも付けられるのでイメージ通りに撮影しやすい。もちろん重ね付けはケラレる可能性が高くなるので、使う焦点距離とフィルター枚数を試行錯誤する必要があるが。
また前玉が飛び出していないので、出目金レンズと比べれば取り扱う際に神経をすり減らさずに済む。出目金は使ったことがないから想像でしかないけど。

テレ端のほぼ最短で。開放だが丸ボケも案外きれい。

そして最短撮影距離、つまり寄りでの性能だがズーム全域で35cmとなっている。レンズの全長が10cm強、マウントからセンサー面までの長さも入れれば12cm強だろうか。つまりレンズ先端から23cmくらいまで寄ることができる。
広角マクロ、と呼ぶには弱いがそこはラージフォーマットのトリミング耐性の生かしどころ。俯瞰で撮るテーブルフォトにも良いだろう。

フードなし運用は要注意

右上の画面外から中央に向けてゴーストが出ている。許容範囲内かどうかは個人差がありそう。

光源を画面外に置いてもゴーストが出ることがある。逆光耐性がめちゃくちゃに高い、とは言えないが、長野では角形フィルターを使う前提でフードを置いてきたのでレンズにとっては意地悪なシチュエーションとも言えるが。

だが携帯性のところで書いたように、フードの有無で収納性は大きく変わる。フードなしならバッグはあまり選ばないが、フードを付けると途端にフルサイズの超望遠が入るような幅を要求されるので目下の悩みとなっている。

さらなる沼の深淵へと導く銘玉

超広角レンズは多くのものを一度に収めることができる。近景の草花から遠景の山まで何でもだ。そうなったときにどこまで緻密に描き切ってくれるのかという悪魔の囁きが聞こえてくるのである。

焦点距離の面で手持ちスローシャッターがやりやすい。
理屈上は5.5段の手ぶれ補正=広角端で手持ち1秒ができるはず。

俺が持っているGFXシリーズはエントリーモデルと言って差し支えないGFX50S llだ。画素数は初代から据え置きの50MP、マイクロレンズを改良して描写性能は上がっているらしいが写りに関しては100MPのGFX100シリーズに劣るだろう。

お気に入りのGF120mmは50MPでも十二分に精細な写りをしたため、50MPより上の描写は不要だった。ハーフマクロなのでトリミングすれば等倍以上にできるし、その画質にも不満がなかったのでデータ量が増えるメリットはあまりなさそうだということもある。

じゃあ超広角ではどうか。広ければ広いほど画面内に入るものが小さく、多くなるのでそれを描くための点、つまるところ画素数の影響が大きいはずだ。
そう考えるとGFX100シリーズで使ってこそ、このレンズは真の描写性能を発揮すると言える。

ちなみに比較スクショのF4は下の画像でした。
並べて見るとF16は回折の影響が出始めて、少し甘くなってましたね。

GFXで風景を撮るならGF20-35mmが必須だという主張は変わらない。変わらないが、「たかが趣味」をここまで突き詰めるということは深淵からも覗き返されるということだ。

まとめ

GF20-35mmF4 R WRを買って後悔しない人

  • 最高画質で目前の風景を残したい人

  • 「されど趣味」に全(財)力を惜しまない人

ここまで書いていて思ったけど、要するに病気の人ですね(自己紹介)。
GF20-35mmに限らず、GFXシリーズ自体コスパが悪いという見方もできる時代。ただ写真を撮るだけならスマホでも十分(特にこのレンズはスマホのカメラと画角も被りやすい)なのに、高い金を出してラージフォーマットカメラなんて奇特なものを使うのは一般には理解されません。

それでもGFXを使う、使っているのならこのレンズは必携です。
足元まで沈んだなら膝まで、膝まで沈んだなら腰まで、腰まで沈んだなら頭まで。GFXに手を出すということは吹っ切れるということ。中途半端に沈むくらいなら初めてGFXを手に取ったときの高揚感を思い出し、沼を潜水するくらい吹っ切った方が得られるものも多いのではないでしょうか。

この記事が参加している募集

#カメラのたのしみ方

55,080件

最後まで読んでくださってありがとうございます! 写真や文章を気に入っていただけたらフォローしてもらえると嬉しいです。サポートいただいた分は機材の購入や旅費にあてさせていただきます。