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GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

正式名称がとんでもなく長いこのレンズをお迎えしたのは1月下旬。買うまでに散々悩んだのも含めつつ、この子についてあれこれ残しておく。

総評としてはGマウントにおけるXF90mm、つまり神がかった写りをする至高のレンズだ。

純正Gマウント唯一のマクロレンズ

現在富士フイルムのラインナップにおいて唯一のマクロレンズだ。一般にマクロレンズというと被写体を大きく撮れる、寄れる、解像力が高いといった特長がある。
もちろんこのレンズもそれらの要素を兼ね備えているのだが、あえて最大の長所を決めるなら寄れるという点だ。

最近は他社含め寄れるレンズが多い印象だが、GマウントはそのサイズもあってかXマウント以上にサードパーティが少ない。
採算が合わないということもあるだろうが、特に海外メーカーでは技術力という部分も理由にありそうだと思っている。これは技術力が低いということではなく、ラージフォーマットという極々マイナーなセンサーサイズでの開発経験の有無だ。

閑話休題。
純正ということは当然センサーの特性を知り尽くした上で開発している。つまりラージフォーマットの性能を完全に出し切る設計をしているだろうという期待が持てる。

F4, 1/100 s, ISO200

最短付近の開放からこの描写力の高さ。ボディが5000万画素だということを忘れそうになる。そして5000万画素だと思い出すと今度は「1億画素ならどれほどの写りになるだろう」という興味が湧く。
実に悪魔のようなレンズだ。

ボケはややうるさいことがあり、状況によっては二線ボケが生じることもあるがXF90mmほど出やすくはない印象。

圧倒的な描写力

F4.5, SS 1/60, ISO100

花を撮っていて、こういう花弁の透き通った感じを出したいと思うようになっていった。もちろん光源の位置や背景など、カメラに関係のない要素もあるがXマウントではどうしても満足できていなかった。
このバラの上部の光の感じは自分でも気に入っている。これはレンズの解像性能だけでなく、センサーのダイナミックレンジの影響も多分にあるが。

F4.5, SS 1/80, ISO250

トーンの優しい感じといい、花弁の縁の線の細さといい、これぞGFXでしか撮れない写真だと見返す度に実感する。
花を撮るのにこれ以上の組み合わせはないだろう。開放の暗さも近接域ではボケすぎるのでF4もあれば十分。奥行きのある花だと開放ではボケすぎるかもしれない。

本来は三脚に据えて絞って撮るべきだろうということは分かっているが、手持ちで撮れる気軽さは何にも勝る。

換算約100mmの中望遠レンズとして

F4, SS 1/100, ISO100

もちろん普通の中望遠レンズとしても使える。こういう撮り方ではボケが物足りないと感じる人もいるかもしれないが、その辺は好みの問題もあるし撮り方の工夫でカバーできることもある。

風景を撮るときに開放を使うことは少ないので、俺の場合は十分なボケ量だ。
ポートレートを撮る人には物足りないと感じる人も多いだろうが、このレンズは細部まで写りすぎるのであまり喜ばれないだろう。

実際に使ってみるまでこの「写りすぎる」という感覚が分からなかったが、使ってみると良くわかる。開放のF4の時点でキレが良すぎるのだ。
大概のレンズは開放の描写が甘くなることが多い。Xマウントは「フルサイズを開放から1段絞って使うなら、開放から使えるAPS-Cレンズで対抗できる」という設計思想があり、事実いくつかのレンズは開放から躊躇なく使える。

マクロレンズは他社製含めて開放から使えるものが多いという印象だが、中判用のこのサイズで開放の描写を妥協していないのだから驚嘆に値する。

引きになると描写性能が落ちるマクロレンズもあるらしいが、ことGF120mmに関しては全く当てはまらない。この写真も拡大するとピントを合わせた中央の薄紫のアジサイに刻まれた脈の1本1本を数えることができる。

焦点距離の近いGF110mmF2 R LM WRは開放F値と最短撮影距離の違いで選び方が変わってくるだろう。
遠景でも大きくボカしたい、近接域で使うことがないならGF110mmの方が良いかもしれない。ボケ量は工夫でカバーする、描写力を活かした近接撮影をしたいのであればGF120mm一択だ。

GF110mmはポートレートにおいては無敵かもしれないが、より幅広い被写体を撮るのであればGF120mmの汎用性の高さが役立つ。

ラージフォーマットセンサーとの相乗効果

F4, SS 1/100, ISO100

描写はレンズだけでなく、センサーの影響も当然ある。特にこの下のアジサイのように青紫から赤紫へと変わるような、微妙な変化を捉えるにはダイナミックレンジの広いセンサーが必須だ。

この写真は17時半頃、つまり日陰が多い。先に挙げたハイライトトーンとは異なり光の当たっていないシャドートーンの再現力が重要となるが、GF120mmとGFX50S llのコンビは見事に満足できるものを撮ってくれた。

重量もギリギリ1kgを切る設計でフィルター径72mmと使いやすいのも活躍の場が多い要因となっている。

100Sまたは50S llを使っているのであれば、SmallRigのLブラケットをつけるのがおすすめだ。小指の若干の浮きが解消されるし重量バランスも僅かにボディ寄りになって取り回しが良い。
アルカスイス互換の雲台を使うときに縦横の切り替えがすぐできるし、動画を撮る予定がなくても買って損はない。

まとめ

GF120mmを買って後悔しない人

  • ポートレートはあまり撮らない

  • 一番大事なのはボケ量じゃない

大事なことだがこのレンズでもポートレートは撮れる。撮れるが肩にかかった髪から背景にかけて大きくなるボケや、周囲から浮かび上がるような立ち姿を撮るのが難しいだけだ。
おそらくポートレートを専門的に撮影していない限り困ることはないだろう。

一方で焦点距離が被るGF100-200mmF5.6 R LM OIS WRと迷う人はいるかもしれないが、GF120mmとは性格が大きく異なる。どちらかを買えばもう片方の代用ができるというものではないので、よく撮るロケーションで決めるのが最善だ。

単焦点レンズは足で構図を決める。そういう撮り方が好きだったり、マクロ撮影が多いならまずこちら。
足を使えないロケーションが多い、テレコンを使ってでも焦点距離を稼ぎたいならGF100-200mmを先に買うことをおすすめする。

もっともGFXのトリミング耐性の高さを考えると、大体の場合はGF120mmで十分な気がしなくもないが。

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