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図書館のこと

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私設図書館「シン図書館」を運営することで考えたことや、本の紹介をしています。
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記事一覧

【募集】館長代理を募集します!

毎週土曜日の13:00-18:00にシン図書館で館長をしてくれる方を継続的に募集します。シン図書館は建築設計事務所シン設計室が運営する私設図書館になります。 館長代理のお仕事開館時間の土曜日の13:00-18:00に間にシン図書館、もしくはその隣の事務所にいてくれる 13:00-18:00の間は本を読んだり、パソコンなど自分の作業をしてok 本の貸出の対応をする たまに飲み物を注文される方もいるので、注文があったら飲み物を提供する 来館者の方に話しかけてもいいし、話

ビジネスパーソンの焦りと不安からの「ファスト教養」ブーム

最近レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』という本を読みました。去年読んだ、稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』にも通ずる本です。 教養は必要だと思うけど、最近の教養本にもやつきを感じていました。この本では「過去の「教養」という言葉と比較して、今の「教養」が特に色濃く帯びているもの。それは、ビジネスパーソンの「焦り」である」と指摘しています。この本を読んでいると、不安とビジネスの相性の良さに、少し暗くなる部分もあり

「ファスト教養」ブームから考える資本論

最近は白井聡さんの『今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義』を読みました。その前に、レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』という本を読んだのですが、昨今の「教養」主義はビジネスパーソンの「焦り」によってもたらされているという内容でした。 ファスト教養は「ビジネスに教養が役に立つ」ということで人気があります。簡単に言ってしまうと、「ビジネスに役に立つ」=「金を稼ぐのに役に立つ」ということになります。でも、現代のビジネスパーソンがお金にしか興味がないから、こ

2022年読んだ本の中のおすすめ3冊

2022年読んだ本の中のおすすめ3冊2022年に読んだ本の中でおすすめの3冊です。ちなみに2022年は40冊程度読んでるかなという感じです。 その中からのおすすめ3冊になります。 言語が消滅する前に |國分功一郎 , 千葉雅也 建築家の解体|松村淳 みみずくは黄昏に飛びたつ|川上未映子 , 村上春樹 もう少しきちんと推薦文や感想をまとめたいと思いつつ、まとめるのが先になりそうなので、読んだ当時に簡単にまとめた感想などを掲載しておきます。 言語が消滅する前に以前、n

私設図書館「シン図書館」について

埼玉県所沢市で設計事務所と私設図書館を運営している高橋真理奈と申します。所沢生まれ所沢育ちです。本業は建築設計をしておりますが、週に一度だけ、私設図書館を開く活動をしています。基本的に毎週土曜日の13:00-18:00に開館しています。 開館時間であれば、どなたでもご来館いただき、自由に館内で過ごしていだたいで大丈夫です。館内で過ごすのも、本の貸し出しも無料で行っています。 この私設図書館の運営に興味を持っていただくことが多く、様々な媒体で取材を受けており、数も溜まってき

日々の生活が政治そのものである

松村圭一郎「くらしのアナキズム」6/26(日)10:30~12:00に「シン図書館」とお隣の「サタデーブックス」と共催で読書会を開催します。毎月最終日曜日に読書会は開催していますが、今月は「シン図書館」で選書を行いました。課題図書は松村圭一郎さんの「くらしのアナキズム」です。 著者の松村さんは文化人類学を専門にする方です。アナキズムは日本ではよく「無政府主義」と訳されます。意味としては、国家権力や宗教などの政治的権力を否定する主義と紹介されることが多いです。歴史的にアナキス

自己紹介的なまとめ記事

埼玉県所沢市で設計事務所と私設図書館を運営している高橋真理奈と申します。所沢生まれ所沢育ちです。 自己紹介や活動の内容を把握できるような、過去に受けた取材記事などをいくつかまとめました。設計事務所と私設図書館を運営している人ってどんな人?と思う方に読んでいただけると嬉しいです。 所沢の公共トイレ「インフラスタンド」について2021年に埼玉県所沢市で設計事務所を開業しましたが、それと同時に色々なご縁があって、所沢市内で公共トイレを設計することになりました。公共トイレを設計す

手っ取り早く「スペシャリスト」になりたい人たち

稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形』今回は稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形』をご紹介します。 最近出た本で話題になっている本です。コロナ禍で動画配信をみんなが当たり前に視聴する中で、2倍速で見たり、10秒のコマ送りで観る人たちが増えています。また、映画を勝手に切り抜きしてあらすじを紹介するファスト映画がyoutubeで人気を集めているというお話しです。 本の中で面白いなと思っ

哲学者二人の「言語」に対する絶大な信頼感

國分功一郎・千葉雅也『言語が消滅する前に』今日は國分功一郎さんと千葉雅也さんの対談本『言語が消滅する前に』をご紹介します。 この本は千葉雅也さんと國分功一郎さんは40代の哲学者です。この対談本は、國分功一郎さんの『中動態の世界 意志と責任の考古学』と千葉雅也さんの『勉強の哲学ー来るべきバカのために』というそれぞれの著作が刊行された際の対談などを含めた計5本の対談本になります。 今月シン図書館とサタデーブックス共催の読書会では中島岳志さんの『思いがけず利他』を取り上げます。

「利他」とは、「与える」ものではなく「受け取る」もの

中島岳志「思いがけず利他」 4/24(日)10:30~12:00に「シン図書館」とお隣の「サタデーブックス」と共催で読書会を開催します。毎月最終日曜日に読書会は開催していますが、今月は「シン図書館」で選書を行いました。課題図書は中島岳志さんの『思いがけず利他』です。 「利他」という言葉を聞くと、ついつい「誰かに何かをしてあげる・与える」ようなイメージを持ちますが、中島さんは“利他が起動するのは「与えるとき」ではなく「受け取るとき」です“と説明します。 また、利他にはタイム

「原子力時代における哲学」を読む

東日本大震災が起きた時 昨日で2011年3月11日から11年が経ちました。 私は当時、大学4年生で卒業制作を終えて、我慢していたテレビゲームを日中やっていました。家には誰もおらず、1人だけでゲームをしている時に東日本大震災が起きました。何が起きたか分からず、とりあえず自分の家の庭にでました。自分の見ている景色が揺れているように感じて、「なんだかすごいことが起きた」と思いました。地震が大きいとかというより、今まで体験したことがない大きな揺れに、思考がついていきませんでした。

職業の道楽化について

私は「働くとは何か」ということをよく考えます。 最近読んだ中で「働くこと」「仕事」について論じている本で、面白いと思った本を紹介します。夏目漱石の「私の個人主義」という書籍に収録されている「道楽と職業」です。 この本には、夏目漱石が晩年の45歳の時に全国で行ったの講演会の内容が収録されています。 夏目漱石という文豪が「職業」について論じているので、どのような職業観が描かれているのかと思うと、意外にも俗っぽく、現実的な内容でした。 「要するに職業と名のつく以上は趣味でも

ティーンに薦めたい人生の本

私が主宰する設計事務所と私設図書館のお隣の古書店サタデーブックスさんが、先月「ティーンに薦めたい人生の本」というテーマで読書会を開催しました。 テーマの趣旨としては、『もし、高校時代や大学入学したてくらいの時にタイムスリップするとしたら、その時の自分にどんな本を薦めたいですか? オススメの本を3つ持ち寄って、その本との出会いや、本から得たものをご紹介ください。』ということでした。 私も参加したかったのですが、予定が合わず参加ができなかったので、私の選んだ3冊の推薦文だけを

悩める建築学生へ

最近建築学生と話す機会が多く、「自分は建築に向いていないのでは」と相談を受けることがあります。建築学生に限らず、他の分野を学ばれている学生や社会人にもおすすめの一冊を今日はご紹介します。平野啓一郎さんの「私とは何か」です。 私もこの本を読んで、生き方や考え方にゆとりが持てました。 この本では、「人間には、いくつも顔がある」ことをまずは受け入れようと言っています。ついつい誰に対しても同じような自分でないと、「自分を偽っている」ような気分になり、後ろめたさを感じてしまうことが