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実家の犬が亡くなった

家の犬は可愛かった。無駄吠えもせず、噛みもせず、いろんな人に可愛い顔を振りまき、みんなの人気者だった。
先日、約12年の命を引き取った。

家の犬は殺伐とした実家で、いろんなものを繋ぎ止めてくれる鎹のような存在だった。
仲がいいんだか悪いんだかわからない父と母を繋げ、友達が全然いない母と近所の皆さんを繋げ、介護でしんどかったろう母の気持ちを繋げ、相続で揉めに揉めてる状況を繋げ、小さい体でおよそ支えきれないくらいのいろんなものを支えてくれた、それはそれは偉い子だった。
でもそんな子ももういない。

私が実家から出てから飼いはじめた子だった。家にやって来たころはそれはもう子犬も子犬なわけで、とてもとても小さい体でぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねながらあちこち走り回っていた。
私が帰省しても、ちゃんと私を「家族」として迎えてくれた。
でも、もういない。
薄情なことに私は全く泣けなかった。

感情がダメになっているのか、もとから薄情な人間なのか、この子の死を受け入れられていないのか、母や近所の人が家でわんわん泣いているのを見てしまったからか、泣いている母を見て、前述の鎹が外れ、いよいよいろいろ棚上げにしていたことが動き出してしまうことに辟易としてしまったからか、理由はわからない。
ただ、泣けない自分に引いている。

なんというか、疲れてしまったのかも。
今は家族やこの子が穏やかに暮らしてほしいと願うばかり。
内に溜まって沈殿してるこの気持ちははたして。


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