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noteで学べるシステマ講座 第24回「人はなぜリラックスを拒むのか」

クラスに来たらマッサージ

システマ東京では会場に集ったら練習時間になるまで、お互いにシステマ式のマッサージをしてもらうようにしています。

着替えたらパートナーを見つけて、交代で背中を踏むのです。やるのは定番のボディーウェイトマッサージと、「背脂剥がし」と呼んでいる、肉をつまみあげるもの。あと時間があればお腹のマッサージもやります。

背中を中心にマッサージするのは、一人ではできないからという単純な理由です。体の前面は普段のセルフマッサージでも可能ですが、背面は手段が限られます。だから背中はお互いにほぐしあいます。

マッサージをクラスの初めにやるのは、システマ東京の特徴じゃないかと思います。モスクワやトロントも含めて、多くのクラスでは練習の最後の整理体操のような位置づけでマッサージが行われます。システマ東京では、それをあえて最初にもってきました。

サーシャの4時間マッサージ

ここにはいくつかの意図があります。

・システマ東京は仕事帰りの人が多いことから、まず体をほぐしてから練習に参加して欲しい。
・日本はハグやスキンシップの習慣がないこともあって、他者と触れる恐怖心を溜め込みやすい環境にある。よりリラックスした状態で練習を始めたほうがワークがうまくいくし、怪我も予防できる。

などなど。

それに例えば週2回練習にするとしたらまずまずのペースです。

でもこれがマッサージ屋さんだとしたらどうでしょう。かなりのハイペースだと思います。ここから分かる通り、練習よりもマッサージのほうがリラックス効果が高く、かつ効果が持続するのです。リラックスを追求するなら、かなり効率の良いトレーニングと言えます。

そのヒントとなったのが、モスクワ本部の小サーシャと呼ばれるインストラクターのクラスです。「バーニャのサーシャ」とも呼ばれる人ですが、リラックスを徹底的に追求して、一緒にバーニャ(ロシア式サウナ)に行くと、さまざまなマッサージを繰り出してとことんゆるめてきます。

10年ほど前、彼のクラスでマッサージばかりやっていることがありました。夜9時から11時のクラスでは二人組でずっとマッサージです。2時間ずっと交代しなかったので、これで終わるのかと思ったら「交代」の声。そこから2時間の延長です。つまり深夜1時までクラスが続いたのです。それも私が途中が抜けたのが深夜1時だったので、小サーシャ達がいつまで続けていたのかは分かりません。

小サーシャに言わせれば「マッサージにはシステマに必要なことがすべて含まれている」とのこと。確かにそれもそうかと思ったのが、システマ東京でマッサージを重視するひとつの要因となっています。

また、ミカエルという例もあります。

ミカエルは若い頃、凄まじくハードなミッションや訓練を積んだこともあって、特にいまはフィジカルのエクササイズをやっていません。おそらく運動不足解消のために歩いたりするくらいじゃないかと思います。でもほぼ毎日欠かさないのが、マッサージです。本部専属のマッサージインストラクターや生徒にやってもらったり、「ハリハリシリーズ」ことリャプコ・アプリケーターを使ったりと、こまめにマッサージをしています。

おそらくそれが奥底に潜んだ緊張を見つけ、解消するトレーニングになっているのでしょう。だからこそミカエルはいまなおとどまることなく、進歩しているのです。

マッサージはごまかせない

根深い奥底の緊張ほど、自覚できないものです。

だからリラックスするには「自覚した緊張をほぐす」ことよりも、「自覚できない緊張を探す」ことに重きを置くべきです。腰や肩に緊張を感じても、それは氷山の一角です。その下には、はるかに強固で大量の緊張が潜んでいるのです。ここに「自覚できないものを自覚する」というパラドックスが生じます。どうやってそれを具体的なワークにすれば良いのでしょう。

その解決策がマッサージです。緊張があれば痛みを感じます。「こんなところに緊張があったのか!」と驚くこともしばしばです。そういう緊張を呼吸で和らげていくことで、奥底の緊張を少しずつ自覚し、解消していくことができるのです。

これはマーシャルアーツのワークではなかなかうまくいきません。マーシャルアーツの技は、かなりごまかしが効きます。極端なことを言えば、リラックスできていなくても、ちょっと威圧感のある人が「おれはリラックスしてるんだ!」と強弁してしまえば、リラックスしていることになってしまいます。その強引さにおされて技もかかってしまうのです。

だから「技がかかる=リラックスしている」とみなしてしまうと、大きな勘違いにはまり込みます。その落とし穴にハマるのを防ぐのも、やはりマッサージなのです。緊張していれば痛い。その簡単な事実が、否応なく緊張を自覚させてくれるからです。

確実にリラックスが進む。それは本質的な向上が見込めるアプローチということ。それをやらない手はありません。

でも実際にやってみると、興味深いことがわかりました。

リラックスを拒否するのです。

リラックスを拒否する理由

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