愛しき緊張
恐怖心や怒り、攻撃性に根ざした緊張。
それは比較的扱いやすい。なぜなら当の本人がネガティブなものと受け止めて、取り除こうという意思があるから。
やっかいなのが、愛しき緊張。
素晴らしい体験、甘美な記憶、あるいは苦心惨憺の経験とそれを乗り越えることで得た成長。
こうしたことに起因する緊張はとれない。
ここから水平思考してみよう。
足かせになるのは、恐怖ではなく甘美な記憶。
つまりトラウマではなく、美しい思い出。
それがその人を縛り、成長の機会を奪う。考えてみればトラウマがあるのは、それに対する美しい快い思い出があるから。それを本人は忘れているかも知れないけど、辛い経験は甘美な経験によって相対化されて初めてトラウマになるのではないかと。
だからその人を縛るのは、あんがい愛しい思い出なのではないかと。
緊張は奥が深い。奥をちょっと覗くとそこには恐怖心が鎮座している。でもそのさらに奥には愛情や人情と言った否定し難い感情もまた渦巻いている。それを傷つけられる恐怖が硬直を招いたりしているのだ。
だから僕は安易に「緊張を解け」なんて言うことはできない。
なぜならその一言は、相手の奥底で大黒柱としてその人を奮い立たせ、命を繋いでいる「愛しい記憶」を否定することにもなりかねないからだ。
だから最近は、強くなるように薦めている。
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