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ミカエルとの対話

リアルタイムならではの

ミカエル&ダニールとの日本語付きZoomセミナーが開催中だ。

このセミナーは、ミカエルの提案でトーク形式となった。

「画面を見てワークをするなら、これまでに出したDVDで十分。オンラインセミナーではそれと異なることをやりたい。」という案だ。

ミカエルの日本語通訳付きオンラインセミナー情報はこちら

それはとても良いように思ったので、トーク形式のセミナーということになった。

私自身、ミカエルと一緒に過ごす中で学んだことが多い。

モスクワや来日時に長い時間を一緒に過ごす。自分がセミナーのホストを務める時は、2週間ほどつきっきりになる。ミカエルがいつ、どんな行動をするのか予測を立てて、先回りして準備することになる。

ミカエルは全くマイペースで過ごすため、初めのうちは非常に戸惑った。食事にしても、いつ何を食べたがるか分からない。夕方4時頃に突然「ランチに行こう」と言われるも、ランチとディナーの境目でどこもお店がやっておらず、途方に暮れたなんてこともあった。

ただいつでも助けになったのは、ミカエルのおおらかさだ。ミカエルの要望に物理的に応えられない時などは、事情を話せば普通に分かってくれる。ミカエルもとりあえず希望を出すけど、強要することはない。そうやってアテンド経験を重ねていくうちに、だんだんミカエルのペースや好みがつかめて来た。そのかいがあったのかミカエルは日本を気に入ってくれて、2019年には娘のアーニャや孫娘のエヴァちゃんも連れて来日してくれた。

セミナーを成功させるには、ミカエルに快適に滞在してもらう必要がある。もし不快な思いをさせてしまってはセミナーに支障が出るだろうし、また来ようという気持ちも失せてしまうだろう。そうなったら困るので、ミカエルの一挙手一投足に注目して、何を考えているのか、何を求めているのかを探る。かといって探っている様子が丸わかりでは、ミカエルとしても落ち着かないだろう。だからそしらぬふりをしながら、ミカエルの情報を集めていくことになる。

そんなこんなでミカエルを観察していくうちに、少しずつ日常におけるミカエルの考えが分かるようになってくる。いつ、どんなものを欲するかが予測できるようになってきて、前もって準備することができるようになってきた。

ミカエルと行動をともにして分かるのが、きわめて人間くさいということだ。武道の達人といえば聖人君子のようなイメージがあるかも知れないけど、実際のミカエルはほんとうに人間くさい。ダニールの支度が遅れて待たされるとムッとしたりするし、ある人から高価な腕時計をもらったといって、自慢気に見せてきたりする。苦労してきた人の話を聞いて涙ぐんだり、大好物のお好み焼きを前に頬をほころばせたりする。私達ならもっと気取ったり、空気を読んだりするだろう。でもミカエルはいつでも普通で、とても人間臭いのだ。

ミカエルがインターナルワークを教え始めた頃、古参の生徒たちが大挙して離れてしまったことがあった。その時は「自分のやり方は間違ってたんじゃないか」とひどく落ち込んでたので、「大丈夫。価値あることだからこのまま続けてほしい」と励ましたこともあった。

あまりの人間っぽさに油断していると、ごくたまに見識の高さを覗かせてハッとさせられる。多分、何もかもお見通しなのだろう。それでいてそのことをひけらかすことは全くない。お見通しでいながら、見通していることを相手に悟らせずにいるのだ。

そういうミカエルの近くにいると、とても気が楽になる。そもそも気取ったところで、気取っていることがバレる。別にバレたっていいのだけど、バレてると分かりながら気取るほうが気まずいものだ。

システマをどう日常に活かすのか。それを私はミカエルの日常から学んだような気がしている。誰もが人間臭くて当たり前だと思えるようになったのだろう。ムカつくこともイヤなことも山程あるけど、「ムカつく」「イヤだ」と思ってしまうダメな自分を、受け入れられるようになった。他人の愚かさや醜さにしてもそう。そこも含めて人間なのだと、受け入れられるようになった(あくまでも当社比だが)。

端的に言えば、生きるのがとてもらくになった。疲れたり気が晴れない日もあるにはあるけど、晴れ続きの天気がないように雨が降ったり曇ったりするのは当たり前で、全般的には楽しく日々を過ごせている。これはミカエル効果か年をとったせいか定かではないけれども、同年代でも生きづらそうな人たちがいるのを見ると、たぶんミカエル効果が大きいのではないかと思う。

とはいえ、ミカエルとは言葉で直接コミニュケーションできるわけではない。ミカエルと2人きりになると話すことがなくて、YouTubeで見つけた面白い動画を見せ合って、時間を潰すくらいだ。ダニールやザイコフスキーといった英語が分かる人がいる時は通訳してくれるけど、ミカエルがロシア語で雑談を初めてしまうとからきし分からなくなってしまう。

モスクワ本部にはミカエルを訪ねて多くの人がやってくる。練習に出ず、話だけして帰る人も多い。セミナーなどではロシア語圏の生徒たちがミカエルを囲んで、あれこれ尋ねたりしている。彼らは時に真剣にミカエルの話に聞き入り、時にジョークに笑い転げている。

何がそんなにおもしろいのかと旧ソ連圏の人に聞いてみると、「ミカエルのジョークはロシア語が母語の人なら誰でも笑うくらいおもしろい。でも残念ながらこのニュアンスは英語に訳せない」とのことだった。

だから会話から受け取れる情報はとても断片的だ。それが残念でならない時も多い。でも言葉が通じるはずの日本人同士だって、話が通じないことがあるのだ。だからロスト・イン・トランスレーションがあったとしても、たくさん一緒に過ごして、話を聞けばおそらくそれなりに教えを溜め込むことができるはずだ。ある時からそう考え直したことで気楽になった。

ただ、それが可能なのは私が比較的ミカエルとの距離が近いからだ。システマを学ぶ他の人達に対して、私だけ良いことを学んでいるという後ろめたさがどこかにあった。

今回のセミナーでは、今までミカエルに近い人だけの特権だった、「ミカエルの話を間近に聞く」という体験ができるはずだ。夜だしカメラをオフにしてビール片手に話を聞くのもいいだろう。ミカエルの話はもちろん、話している佇まいから滲み出すなにかが、私達にシステマのなんたるかを掴ませてくれるのだ。

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