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国公立大学入試分析⑮ 埼玉大学

おはようございます。5日連続の更新になります。(たぶん)

少しずつ首都圏を南下しております。

今回は、この業界の知り合いが複数卒業している埼玉大学です。教育学部のイメージが強い大学ですが、どのような大学なのか分析していきます。

〇全体概観

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・時間 
 90分(教育学部の現代文は45分位で解く。経済学部は現代文のみ)
・分量 
【大問1】4,000~5,000字程度 
【大問2】4,500~5,000字程度 

・文章 
【大問1】が評論
【大問2】が評論(※経済学部のみ
・設問 
記述3題(合計300~400字程度)

<コメント>
記述分量がなかなかハードであることが特筆。東日本の大学は基本的に「端的にまとめきる」能力を要求することが多い中で、大問ごとに400字弱の記述量を課しているのは珍しいといえる。西日本の大学に近いイメージ。


〇各年度の短評

では、ここからは各年度の問題について簡単に評していく。

◆2016年 全体:標準
【大問1】標準
難易度
【文章】★★★★  
【設問】★★

<総評>
文章はやや難しい。社会契約論について丁寧に説明しているが、内容の解釈に苦しむ受験生が多いかも。
設問は標準的。実質的には「指示語の指摘事項の記述」に収斂される印象。でも、文章が読めていないと苦しいんだろうな。

【大問2】やや難
難易度
【文章】★★★★    
【設問】★★★

<総評>
文章はやや難しい。経済学部独自問題らしく、貨幣を記号と捉えていくときに、人間とのかかわりはどうなるのかを論じている文章。このように書いているだけでもなんだか難しい笑
設問は標準的。聞いてくる箇所も妥当。答える内容もそんなにひねっているわけではない。でも「これでいいんだよ」という感じがする。


◆2017年 全体:やや難
【大問1】やや難
難易度
【文章】★★★★★   
【設問】★★★

<総評>
文章は難しい。自然科学と人文科学を二項対立的に捉えるのではなく、相関性を持たせて理解することの重要性を「人類の起源」という観点から論じている。いやー、なかなか重いよ。
設問は標準的。問われていることはそんなに難しくない。指示語換言、因果関係の構築…など、基本的な作業ができればそれでよい。

【大問2】やや難
難易度
【文章】★★★★   
【設問】★★★

<総評>
文章はやや難。定義と論理展開が明確なので、そこまで難しく感じないかもしれないが、それでも受験生にとっては文章量の多さも含めて苦しいと思われる。
設問は標準。聞いてくるポイントに苦しい点はほとんど見当たらない。

◆2018年 全体:やや難
【大問1】やや難
難易度
【文章】★★★★   
【設問】★★★★

<総評>
文章はやや難。それでも例年に比べると多少読みやすいかも。AIが人間の知能を超えることがないことを哲学的観点に基づいて論じている文章。
設問はやや難。これまでの年度は指示語や因果関係の把握が中心だったが、この年は文体がそうだからともいえるが、比喩表現の把握が問われている。そしてこれがそれなりに難しい。

【大問2】難
難易度
【文章】★★★★★    
【設問】★★★★

<総評>
文章は難しい。もちろん高校範囲の政治経済の知識が入っていることが大前提なのだが、、それでも受験生は「置いていかれる」思いをしそう。
設問はやや難。特に問3は……。比喩解釈からの理由説明。難しい

◆2019年 全体:やや難
【大問1】やや難
難易度
【文章】★★★★    
【設問】★★★

<総評>
文章はやや難論理展開は非常に明快なのだが、やはり内容そのものがかなり重い。
設問は標準的。解答根拠の把握が分かりやすい。

【大問2】標準
難易度
【文章】★★★  
【設問】★★★

<総評>
文章は標準的。難しいテーマだが、具体例を交えて読みやすくなっている。少なくともここ数年の埼玉大学の問題では最も読みやすい部類である
設問も標準的。いつも通りの難問奇問がない良問。

◆2020年 標準
【大問1】標準
難易度
【文章】★★★  
【設問】★★★

<総評>
文章は標準的。非常に明快な論理展開。何より「信頼」と「信用」というテーマに絞られて推移しているのが分かりやすい
設問も標準的。部分の把握と全体の把握の両方が問われている。

【大問2】標準
難易度
【文章】★★★  
【設問】★★★

<総評>
文章は標準的。2020年は全体的に比較的くみしやすい問題構成。
設問は標準的。特筆して難しいものも平易なものもない。

〇過去問から考える埼玉大学が求める力

①難しい文章の論理展開を押さえる力
文章内容のレベルは大学入試の中でもかなり高い部類に入ると思われる。よって、そもそも背景となる知識の蓄積やこの手の文章を読んだ経験値は活きてくる。受験生は専門書でなくともよいが、せめて社会科学関連の新書などを読む習慣をつけておきたい

②基本的な記述解答のスキル
記述は100字程度なのでそれなりのボリュームがあるが、奇をてらうような難しさはない。上部にリンクが貼ってある筑波大学と同じ印象である。

〇埼玉大学の対策に役立つ他大学の過去問

①文章の難度が近いもの
神戸大学の問題を解くことを推奨。特に文章レベルは神戸大学に勝るとも劣らない。

②設問の難度が近いもの
静岡大学の問題を推奨。経済学部独自問題は静岡大学も同様に社会科学系統の文章を出してくるのでちょうどいいかもしれない。

〇補足:高校受験とのリンク


記述と客観式という違いはあるが、早大学院で出題される文章と近い印象。早大学院が「国語で逆転可能」なのはこのレベルの文章に向き合うことができるか、によるといえる。


明日は千葉大学の過去問分析をお送りいたします。

それでは!

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