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バンド遠隔同時生配信で見えたニューノーマル

2020/5/17にライブハウス新代田FEVERの公式YoutubeアカウントからLITEのライブ配信が行われました。コロナ禍で自粛を要する中、ライブハウス会場からの配信ではなくライブハウスのYoutubeアカウントからバンドメンバー全員が家から同時演奏を生配信するというこれまでにないやり方で。
スーパーチャットによるライブの収益は全額FEVERに寄付という、外出自粛で集まることもままならない状況で僕らが大好きなライブハウスFEVERを応援するために考えた企画でした。

当日の2時間弱のライブ配信は、ちょっとしたフェス級のインプレッションを残すことができました。

・ユニーク視聴者数 6226人
・同時視聴者 980人
・Super Chatによる寄付 350,000円

そこで起こったことはちょっと先の未来のスタンダード(ニューノーマル)を彷彿とさせると共に機知に富んだ出来事ばかりでしたので、一連の流れを一つのロールモデルとしてシェアできればと思いました。

いつまでアーカイブを残すか未定ですが当日のライブ配信を全公開しています。実際の映像を見てもらうと雰囲気が分かると思うので、ぜひ時間のある時にどうぞ。

バンドメンバーが各自宅から配信

今回行った”Stay Home session”はバンドメンバーが家にいながら同時に演奏を行いカメラ付きで配信を行うスタイルです。詳しいやり方は前回のnoteにまとめていますので参考にしてみてください。

通常ライブを行うとなれば当然会場をレンタルし、サウンドエンジニアを依頼し、機材を倉庫から運び移動・・・と沢山の工程が発生します。この配信方法であれば会場を押さえるどころか一歩も家の外に出ませんので工数もコストもかかりません。空気の揺れを体感するというライブの本質の話はともかく、この配信方法のメリットは手軽さに他なりません。

唯一無二の観客とのコミュニケーションが生まれる

このライブスタイルの最大の利点は「観客とのコミュニケーションの密度」にあると思いました。
アイドルやソロアーティストのライブ配信を見ることに慣れている人にはごく当たり前のことを言っているように聞こえるかも知れませんが、バンドが自宅からライブをすることで「会場での通常ライブ」にも「会場での無観客ライブ配信」にも無い、コミュニケーションスタイルが生まれていることに気が付きました。

具体的にはメンバー全員が配信画面を見ているためライブ中にも関わらず常に全員がチャットを見られ、メンバー全員がチャットに応えたり、チャットから話を広げたりできたりできることにあります。普通のライブでもMC中に叫んで積極的にコミュニケーションをしてくれる人もいますが(個人的に好きですw)、シャイな日本人はなかなかできるものではありません。僕が観客でもできないですし(笑)
また、ライブ会場の無観客ライブ配信でもチャットを見ながらの配信は物理的に可能かと思いますが、楽器を持ちながら全員で携帯でチャットは結構不自然な気がします。

一方、自宅配信のチャットであればPC画面や携帯を見ながらの配信になるため自然に双方向のコミュニケーションが可能になります。
ライブ中にチャットをバンド全員で出来るというのが画期的と感じました。

「伝わる」画面共有とチャット

コミュニケーションといえば、宣伝や告知も充実させたいところ。
LITEでもリアルライブではMC中に物販の説明やこんな新しいことを初めたみたいな話をしますが、言葉だけではイメージが上手く伝わらなかったり、ライブ終演後は忘れていることがほとんどで、観客の次のアクションに繋がりづらいという課題があります。ビジネスシーンでも口頭だけで説明されるよりもWEBページや動画、プレゼン資料があると内容を理解しやすいことがあると思いますが、自宅配信ならそれも応用できるように思います。

今回のライブでは、曲間のチャットタイムで物販の話や、同時配信方法をまとめたnoteの話、クラウドファンディングなどの紹介などを画面を見せながら話をしています。またサイトのアドレスをチャットに送ることで見ている人がすぐに閲覧するというアクションに繋がるのも配信ならではで、話をしている最中noteをフォローしてくれり、ライブ終了後のTweetでクラウドファンディングでリターンを購入してくれたことを明かしてくれた人もいいました。

ゲストミュージシャンは国境を超える

今回のライブではサプライズを企画していました。
USツアーもLITEと一緒に行った台湾のバンド「Elephant Gym」の女性ベーシストKTをゲストに迎え一曲を一緒に弾いてもらうという企画です。

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事前に複数回リハを重ねましたが台湾と日本という距離と、KTのネット回線に左右されるレイテンシーはかなり大きく、楽曲が成り立つかどうかのギリギリのラインでした(笑)
当日は本編でなくアンコールに登場してもらい、レイテンシーはありましたが良いセッションになったと思います。

海外からのゲストや日本の遠隔地のアーティストも移動なく参加できるのは配信ならではの新しい経験でした。

SuperChatが仮想ドリンク代になる

今回のライブの趣旨はFEVERの活動資金をSuperChatで寄付を募ることでした。ライブ中、本当に沢山の人が「ドリンクを買います」と仮想ライブハウスよろしく投げ銭をしてくれたのが印象的でした。少しでもライブハウスに来てくれている感覚になっているのかなと、改めてライブハウスFEVERのアカウントで配信をする意味合いについて考えさせられ、コメントからも心が動いた投げ銭だということが伝わってきて、なんだか感動して涙が出そうでした。
アジカンのゴッチさんも見に来てくれていて、そっと高いドリンクを買ってくれるという嬉しいサプライズも。

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結果、35万円の投げ銭を集めることができました。

初めてSuperChatを経験した僕には基準がわからなかったのですが、よくYoutubeを見る友人はこれだけ盛り上がったSuperChatは初めてと言ってくれましたので、きっと大成功だったんだと思います。

終演後の物販はオンラインへ

当日の数時間のみリンクが有効な物販サイトを作成し、あえてライブ会場では買えないアイテムを主に揃えました。ライブ終了後にYoutubeのチャットにアドレスを投下して物販スタート。配信ではライブ会場と異なりその場でアクセスして貰えるのが嬉しいところ。

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デットストックがほとんどで数に限りがあったこともあり、開始5分ほどで全てのアイテムが瞬殺Sold Outしました。

自慢じゃないですが僕らの普段のライブではこんなことは絶対に起きません(笑)

プラットフォームとしてのライブハウス

無事配信が終了し結界としてユニーク視聴者数6226人、同時視聴者980人に見てもらうことができました。FEVERのキャパが300人だと考えるとその伝播力はやはり配信ならではと感じます。

・ライブハウスのチャンネル登録数
もちろんこのインプレッションはFEVERのYoutubeチャンネルの登録者数が4万人いるからに他なりません。LITEはまだYoutubeが1,000人と(汗)まだまだ少ないので、既にファンのいるFEVERのチャンネルで配信されて貰えれば自分のバンドで配信するよりも沢山の人に届くのは明らかで、そこにもバンドがライブハウスアカウントで配信するメリットがあると感じます。

・SuperChat
またYoutubeのアーティストチャンネルではSuper Chatができません。
どれだけアーティストがアカウントを育てても投げ銭が難しいとなれば、やはりそこはSuper Chatができるライブハウスアカウントで配信させてもらうメリットがここにもあります。

ライブハウスがリアルでもオフラインも音楽好きが集まる「プラットフォーム」を提供してくれるというのは、個人的に概念的でとても素敵なことだと思います。

これからのライブハウスでおきること

ライブハウス内部の人間ではないのですがこうなったらいいなーという思いで勝手に書かせて頂きます(笑)

ご存知の通りライブハウスはコロナの自粛要請により営業自粛を余儀なくされましたが、その一方で個々にYoutubeのアカウントの登録数を伸ばし配信機材を整えるなど新たなオンラインの「場」が生まれてきています。

そのオンラインの場を今後も活用することが望れますが、今回僕らが試した自宅からの配信であれば会場を使用しないため、このやり方を用いれば他のバンドがライブを会場で行っている間にもYoutubeのチャンネルを使って裏の時間で配信が出来るのではと思っています。

ライブハウスがいわゆる「2毛作ライブ」をできるのでは無いでしょうか。

オンラインでもオフラインでも音楽と音楽ファンを繋ぐプラットフォームとしてのライブハウスが今後も一層盛り上がっていく未来を勝手に想像しています。

終わりに

今回の壮大な実験に快く協力してくれたFEVERに感謝を込めて。
また、この実験で得たものが少しでも世の中のバンドマンのためになることを願って。