ノンポリ

 普段インスタグラムに投稿していると、フォロワーの友達からいいねを貰うことができる。本当にありがたいことだ。しかし僕が政治に関する投稿をすると、驚くことに誰も反応しない。そう、僕の周りは皆、政治や社会の出来事に蓋をして見えないフリをするというノンポリに陥ってるのだ。この事態は日本全体の傾向であり、年を重ねるごとに政治への関心は薄くなっているし、それは投票率などのデータにも出ている。
 ここでノンポリを全否定するのも乱暴なので、なぜノンポリになるのかを考えていきたい。まずは技術革新によるスマホなどの普及で、自分の世界が極めて狭い交友関係に狭められてしまったからだろう。インスタグラムやTwitterの友達なり、界隈仲間で全てが完結してしまい、従来の基礎であったリアルな人との関係を外部化してしまうのだ。さらに日本が衰退しており未来が暗く見えてしまう中で、現実を直視するのを避け今を楽しもうとする人も多いだろう。また長期政権(実際悪いことばかり起きてるのにも関わらず)による謎の安心感(正常性とか何かしらの認知バイアスの一種?)に包まれて、自分で考えることを捨てて偉い人に任せとけという無責任な姿勢も原因となる。また社会の活力が減り無気力感が充満する中で、政治に限らず何かに熱くなっている人を見て、小馬鹿にするような態度が蔓延しているのも大きな要因となると思える。
 ここで自分の世界の縮小、現実逃避、思考停止と他者任せな姿勢、無気力感を原因として考えた。ここからはこれらの観点から、ノンポリが民主主義体制においてどれだけ困った存在なのかを考えていきたい。
 交友関係が狭まり、自分ごとと捉える範囲が狭くなることは、個人主義の進展と考えることができる。しかしながら実際には政治や社会は個人一人一人と密接に関係しており、興味を持たないことは後々自分にそのツケが返ってくることを忘れてはならない。また社会を構成するという意識が失われれば、より自己本位で他者、特に社会的弱者を気に掛けない残酷な未来が待っているだろう。
 現実逃避に関しては言うまでもないかもしれないが、他のあらゆる分野と同様、見て見ぬふりをして放置していると悪化し続け、気づいた時には取り返しのつかないことになるだろう。
 思考停止とそらによる他者任せな態度は、国民主権を骨抜きにし、権威主義体制に陥るだろう。有識者や政治家に任せればいいという無責任な態度は、プーチンのような独裁者を産むだけだ。プラトンの哲人政治のような考え方は人間の可謬性を無視している。人間は必然的に誤ちを犯す以上、少なくとも独裁制は民主主義より劣るのだ。そして民主主義や国民主権の条件は選挙があることだけではない(選挙ならロシアやハンガリーにだってある)。国民主権は国民の参加があって初めて存立するのである。必然的に、民主主義を維持・発展させるためには我々一人一人が考えて参加することが求められてるのだ。前述した通り、民主主義社会では国民が政治に関心を持つことが義務となるのである。
 民主主義は当然のものではない。人間の長い歴史の中で、数多の革命や、戦争、人々の闘争と多くの犠牲の中で作り上げられてきたものである。我々市民が政治について考えなければ、人類が手にすることのできた民主主義はたちまち権威主義体制に陥ってしまうし、現在まさにそうなっている。国民一人一人を考えた時には、現在の日本とロシアや中国と異なる点は、共通する点に比べてはるかに少ないと思える。我々民主主義社会の市民には、政治について考え参加するという崇高な義務があるのである。だから僕は、他者に自分の意見を押し付けることは決してしないが、政治を考えることに関しては他の人にもそれを促すし、考えない人を非難するのである。ノンポリは民主主義の破壊者だ。

追加
僕の興味関心上、国際政治について興味を持つ人が周りにたくさんいる。彼らもまた身近な政治や国内の問題には無関心であり続けるのだ。これもまた最悪の事態である。彼らは国際政治が我々の日常生活と隔絶された高次な何かと勘違いしているのであろう。もしかしたら現実逃避のために国際政治という分野を利用しているとも取れる。しかしながら現実は、我々と国際社会は、中間共同体や地方政治、国内政治を経て繋がっている。国際社会に出ても、各国の動きは内政の影響を大きく受けることは、現在のロシアやアメリカ、中国などの例を見ても自明である。国際政治なるものは、その国々の政治や文化、地理、歴史を考えることが必須である。それらを無視し、ただひたすらに条約を覚えたり国連を崇拝したりするのは、はっきり言って愚かである。それで国際問題を考えていると言ったって、国内政治になった途端何も言わなくなる。こういう人は正義感や自分の確固たる価値観など持つことはなく、非常に薄っぺらくしか世界を見ることができないだろう。世界に出たい人もまた、一市民として、自らの社会や国の問題を考えることはマストなのである。

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