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藤田嗣治の大作がある美術館

安藤忠雄の設計による秋田県立美術館は2013年9月28日にオープン。エントランスホールは三角形の吹き抜け空間となっており、支柱がないらせん階段が特徴だ。直島のベネッセミュージアムの、ブルース・ナウマンのネオン作品がある広々とした空間に似た印象を持った。そして、二階に昇るといきなり目の前に広がるのが眼前に公園を望む水庭で、水に囲まれたダラスのフォートワース美術館などを思い起こす。

この美術館は別称として「平野政吉美術館」とも呼ばれているのは、秋田市で米穀商を営み県内でも有数の資産家でもあった平野家の三代目の政吉のコレクションを主に展示しているからだ。特にレオナール・フジタこと藤田嗣治のコレクションはかなり有名で、吹き抜けの展示室に展示されている『秋田の行事』の壮大さには圧倒される。

1937年に制作されたこの壁画は、縦3.65m、横幅20.5mにも及ぶほどの大作で、秋田ゆかりの竿燈や梵天祭り、かまくらや秋田犬など、秋田の祭りや民俗が連なるように描かれている。「世界のフジタに世界一の大壁画を」と平野に要請され、それに応えるように平野家が所有する大きな蔵のおいて、約半年に渡る取材を重ねて制作されたというが、このスケールを緊張感を持って描きあげ、それも高いレベルを維持しながら描ききった当時51歳だった藤田の強靭な精神力に圧倒される。

現在は、藤田が1931年から旅をした南米の国々で残した作品と、彼が現地で買い求めた宗教絵画やフォークアートのコレクションなどが展示されてあったが、南米のフォークアートに関しては藤田とパリで仲が良かった猪熊弦一郎の趣味とかなり同じだ。相当な数の民芸品や土器などを購入しては日本に送っていたようで、彼の審美眼の高さを彼の日常的な収集物からも伺うことができるいい展示だった。