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部活動は、地域移行すべきではない!

中学校教師の働き方改革のため、部活動を地域移行すれば良いという考え方は、私は間違いだと思う。

そう思う一番の理由は、
「貧しい家庭の子供が活躍しにくくなるから」である。

スポーツをするにはもともとお金がかかる。
練習着、ユニフォーム、道具、シューズ、サポーター装具類、などを買うお金。
維持、メンテナンスにかかるお金。
ケガ等の治療費。
移動のための交通費。大会参加費。
飲料代、補食代。

部活動ならこのくらいだろうか。
しかし、クラブチームに入ると、もっとかかる。
指導者への謝礼。
学校で練習できない場合には、練習場所までの移動交通費が毎回かかる。
田舎だと親が車で遠い公民館まで送り迎えするとか、19:00-21:00とかの遅い時間に仕事の都合で行けないとか。
練習場所の使用料、照明、冷暖房費がかかることもある。

急遽立ち上げたクラブチームならば、ボールやネットなど必要な用具を揃えたり、ユニフォームを作ったり、それらに損害があれば修復費用がかかる。
初期費用がかかった上に、ランニングコストもかかる。
学校ならば、備品は学校が直すから安心なのに。

学校部活動ならば不必要な経費が、クラブチームに入れば、かかり増しになることが多い。
学校部活動ならば得られる補助金等も、クラブチームでは得られないかもしれない。

貧しい家庭の子供が、家庭経済事情を気にせず、心おきなく活躍するためには、公共施設たる公立中学校が場所を提供し、公務員たる教員が、他の教員や外部コーチなどとうまく協力しながら、これまでと同等に尽力するべきだと考える。
大変な負担だとは思うけれども。

ただし、教員の手当の引き上げは必要。
時間外手当に当たる「教職調整額」を4%から13%に、という報道もあった。
数値の加減はよくわからないが、方向性は良いと思う。

次に思うのは、教員の働き方が苦しいのであれば、もっと大人数で負担を分かち合えばいいはずだ。

どこの企業も官公庁も、大変な作業はあるし、そこは1人に任せるよりも分担したり、大人数でチェックしたりと、対応を手厚くすることでクリアしようとするはずだ。
教員の数を増やすという報道もあったが、どんどん増やし、どんどん分担するべきだ。

なぜに高校の部活動はなくさないのか?
高校はもともと分担が明確に行われているからではないか?と思う。
高校でできていることがなぜ、小中学校でできないのか?

また、この教員を増やそうとする方針に欠かせないのは、教員という職業の魅力である。
給料が良くて安定しているだけでは、官僚が辞めていく問題を見ても明らかだが、若者は教員を志さない。
魅力の一つとして、部活動を指導したいという思いは、昔から確実にあったはず。それを取り上げないでほしい!

私も教育学部に通っている当時は、バレーボールが大好きだったので、中高バレー部の指導者になりたいと思ったこともあったが、別の種目の指導者を強いられたらどうしよう?と真剣に悩んだ。
結局は、そんなのが嫌だったので、別の職業を選び、趣味としてバレーボールをプレーし続ける人生を選択した。

教員の職業としての魅力に、部活動の指導は、今も昔もなくてはならない重要なピースである。
それをなくしてしまったら、モンスターペアレントのクレーム対応やネグレクト家庭への対応など、ネガティブ要素が増えた現代において、教員を志す若者は減る一方であろう。

これらに加えてもう一つ、強く強く訴えたいのは、田舎にはそれぞれの種目の、ある程度の指導技術を持った「指導者の絶対数が少なすぎる」という問題である。

子供の数も少ないのだから、指導者数が少ないのは相応では?と思う人もいるかもしれない。
いや、そういう問題ではない。
指導者数が少ないということは、将来的なクラブチームの継続性、永続性に不安を抱え続けるということである。

社会人指導者だって、自分の仕事がある。キャリアアップ、転勤などもある。
仕事がないような高齢指導者なら、病気や寿命の心配がある。
多くの指導者によるチームコーチングができれば、万が一の状況も安心できるが、田舎であるほど指導者数は少なく、その不安要素は大きい問題なのだ。

加えて、指導者同士の方針の違い、そこから生まれる対立も考えられる。
教員同士なら異動、同職の可能性があるから、決定的な関係破綻には至らないが、社会人同士の対立には終わりが見えない場合が多々ある。

人口が多い都市部ならば、多数の指導者候補から選べるかもしれないが、こちらは高齢化率と人口減少率の高い田舎である。選べない状況の方が多い。

人口が多い地域が自然と有利になる政策には賛同できない。
それこそ地方切り捨て、東京一局集中の助長ではないか!

田舎は黙っていても子供の数は減っていく。
だから教員の負担は徐々に軽くなっていくはずだ。
そうした実情を考慮して、地域移行一辺倒にならないように、一気呵成に大改革しないように、我々子育て世代が、おかしいと思ったことには、声を上げていかなければいけないと思います。

ちなみに私の考える田舎の部活動が取るべき方向性は、
「現行部活動は継続し、これに社会人外部コーチを有償で複数人確保し、国がこれを副業と見なさない法整備をし、学校と地域が互いに協力・監視しつつ、指導者負担を軽減し合う」というものです。
監督はあくまで教員。
コーチはあくまで補佐役。

みなさんはこの問題について、どう考えますか?

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