2週間前
深夜のバス停で知らない人に話しかけられた。
たぶん泥酔しているらしかった。
ねねね、と声をかけられたのでイヤホンを片方外して返事をすると、調子どうですかと聞かれた。
よく分からなかったのでご覧の通りですと返しておいた。
知らない人はそれから自分が人を殺した話をし始めた。
拷問の果てに殺して細かくして捨てたのだと教えてくれた。
その拷問の内容が前に読んだことのある漫画のそれと同じだった。死体処理の方法はその漫画とは別の作品にあったやり方をそのまま語っていた。
ふたつの漫画に共通していたのは殺されたのがいじめ加害者ということだったから、知らない人に向かって「いいじゃないですか、もう怖くないですね」と言うと知らない人は引き笑いをした。
バスが来たので乗った。
知らない人は乗らなかった。
窓の外見ると大きく手を振ってくれていたが、よく見ると眼鏡とネクタイが同じ方向にひん曲がっていた。
その晩は、眼鏡とネクタイがひん曲がったあの人が逮捕されたというニュースが流れる夢を見た。
殺人でも死体遺棄でもない全然別の罪状だった。
罪状よりもキラキラネームすぎて驚いた。
夢で良かったかもしれないが名前はそうだといいなと思ってしまった。
私の頭の中で町尾プリウスさんと名付けられた知らない人は今日も頭の中で誰かを殺すんだろうか。
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