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【一幅のペナント物語#8】つわものどもの夢の爪痕でもある

◉圧倒的な未来感。しかも僕たちが昭和チビッコ時代に思い描いていた系のヤツである。宇宙へ飛び立つロケットのような紅白タワー。サンダーバード格納庫のごとき輝くチューブ状建造物、その向こうに連なるのは・・・・太陽光発電のパネルじゃなかろうか? 堂々たる「仁尾太陽博」の文字からは『西部警察』のOPテーマが聴こえてきそう。すべてが圧倒的存在感で迫りくるペナントなのだが、「こんな博覧会があったんだ」というのが率直な感想である。

◉当然ながら「仁尾太陽博」について調べてみよう、ということになるのだが、Wikiにも単独項目として存在しないくらい情報量が少ないこの博覧会、1981年(昭和56年)から1983年(昭和58年)にかけて開催されていたこと、当時、新時代のエネルギーとして世界的に注目を集めていた太陽光発電をメインテーマに、国家的プロジェクト「サンシャイン計画」推進の一環だったことなどが解った(厨二っぽいネーミングw)。国内の太陽光発電推進の出発点として、人口1万人にも満たない香川の小さな町が開催地に選ばれた理由は、仁尾町が当時、日本で最も日照時間が長い場所だったからだそうである。なるほど、理にはかなっている。

◉ペナントに戻ろう。まず、宇宙ロケットのようなのは、太陽光を集めて蒸気を発生させそれをタービンへ送る集光タワーだ。この塔の周囲をグルリと太陽を自動追尾するミラーが囲んでいる。日本ではあまり見かけないが、アメリカのモハーベ砂漠やスペインのセビリアには同様の仕組みを持つ発電所が建設されている。そういえばスペインのヘマソラール発電所はゲーム「グランツーリスム6」のフォトセッションで選べるロケ地にも登場していた。

『グランツーリスモ6』で登場したヘマソラール

◉タワーの後ろに整然と並んでいるのは、それとは別の曲面集光方式のミラーで、各ミラーの前に設置された集熱管を温めるもの。今、各地で見られるような、太陽電池で直接光を受けて発電させるソーラーパネルとは根本的に仕組みが違うのであった。しかしながら、これが日本の太陽光発電のはじまりなのだ。

◉この博覧会終了後、跡地に1985年(昭和60年)、仁尾サンシャインランドというテーマパークが誕生するも、その後、開業したレオマワールドに客を奪われる形で衰退、1995年(平成7年)に閉園している。サンシャインランドのペナントもあるのかな?と思って検索するが見当たらず。代わりにこんな動画を発見した。

物悲しいBGMとかつての利用者たちのコメントが切ない。サンシャインランドの後にも地域の産直市や、サンシャインパーク仁尾という名前のメガソーラーが建設されたようだが、それも現在は継続されていない様子(Googleマップ上ではまだ巨大なパネルの姿を見ることができる)。ちなみに隣のレック㈱は「激おちくん」や「バルサン」などを開発している全国区の企業だ。

◉ペナントの中には、こんなふうに「期間限定イベントもの」というジャンルが存在する。前回の「失われた観光施設」同様に、二度とこの世にペナント化されることがないという点では、貴重な一品といえそうだ。

◉最後に「仁尾太陽博」のキャンペーンガールが歌うイメージソングを紹介したい。歌っているのはこの5年後にアニメ『タッチ』の浅倉南役でブレイクする声優・日高のり子さん。これが歌手デビュー曲とのこと。しかも作曲は、すぎやまこういちさんだったりして二度ビックリである。

仁尾太陽博イメージソング「初恋サンシャイン」歌:日高のり子


【MEMO】このnote記事を書きながら、どんなアーカイブにしていきたいのか自分でも模索中なのだけど、なかなか答えは見つからず。誰かのためにとも思っていないし、ペナント復活の狼煙を上げたいわけでもない。ただ、限られた不安定な△空間に収められた絵や文字には、そこにしかない味わいがあるし、半世紀前のニッポンがどんなふうに自分の国を愛でていたのかのメモリーがある気がして、それを自分なりに言葉にしてみたいと思っただけなのだ。どこまで続くか分からないけど、いつか立ち止まって見降ろした時に「あー、これってこういう感じになるんだな」と気付ければいいかなと思っている。

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