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【一幅のペナント物語#3】たぶん死ぬまで登らない日本一の山

◉頭を雲の上に出し、四方の山を見おろして~♬ という巌谷小波の作になる「ふじの山」の初出は、1911年(明治44年)だそうだ。「尋常小学読本唱歌(二)」という、当時の小学生向の音楽の教科書に載って以来、今も歌い継がれているようで、脳の奥深いところにしっかり刻み込まれている人は多いはず。

◉そんな歌を思い出させる今回のペナントはずばり「富士山」! 日本を代表する山というか、日本を代表する観光地というか、日本そのものを表す名山である。観光ペナント界でも数多のバリエーションが生み出されたことは想像に難くない。実際にネットで検索すると同じデザインのものを探すのは至難の業だ。僕の手元にもたぶん幾つかあると思うのだけど、今回はこの臙脂色の不織布をベースにしたものを採り上げてみた。

◉富士山のディティールや広がる雲海を描く主線は白でプリントされているが、その上からいわゆるピース加工といわれる吹き付け技法で、スカイブルーと薄紫、白が着色されている。おそらく昭和40年代の一品だろう。目を引くのは頂きの向こう、雲海の果てから登るまばゆい金色の朝日だ。神々しいその姿は、どこか日本の誕生を思わせもする。その朝日と同じ金色で描かれた「富士山」の文字。フォントは絵柄にはアンマッチな気もするが、それでも富士山の三文字からは計り知れないパワーを感じるのだった。

◉山岳系のペナントのほとんどには、その標高が併記されていることが多いようだ。このペナントの場合は「3,776m」というのがそれである。これを見て即座に「富士山のように“みななろ”う」という語呂合わせが思い浮かんでしまうのは、昭和世代だけなのか、今の子どもたちもそうなのか。ネットで調べてみると、富士山の正確な標高3776.24mを覚えるための語呂合わせに「皆、南無西」というのがあるらしいが、聴いたことも無けりゃ意味もわからんじゃないか。というか、Wikiによれば最新の富士山の標高は、3776.12mというのが一般的になってるようなので、語呂合わせも新しいのが考えられているのかもしれない。最近、能登半島地震で地面が4m盛り上がった、みたいな話を聴くにつけ、こういうのってそんなに一生懸命覚えるようなデータでもないんじゃない?とは思う。

◉そんな富士山、実は登ったことがない。何度か登る機会もあったのだけれど、結局なんだかんだで登れずじまいで、50歳を過ぎて体も壊した今では、あんな空気の薄いところに行くことは無理だろうなと思っている。皆、元気なうちに行ける所へ行きましょう。

◉ということで、冒頭の巌谷小波の「ふじの山」を調べていたときに、なんともハッピーな気持ちになれる動画を見つけたので、今回はこの、いっちー&なるの歌を聴きながらお別れです。


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