企業が国内投資をせずに内部留保を積み上げる理由は儲からないからではない
日本の民間企業の借金の総量は、諸外国のように右肩上がりに増えておらず、金融ビッグバンの時に極度の低下の後に停滞、量的緩和後に多少上向き始め、すでに解除されてしまっているゼロゼロ融資でようやく一時的に上昇しました。(おそらくゼロゼロ融資終了後にまた停滞すると考えられます)
企業が借金を増やさないという事は、国内投資を増やしていないという事にもなります。
また、企業は期末にお金を余らせて内部留保をひたすら積み上げています。
なぜ日本企業は、投資せずに内部留保を積み上げるのでしょう?
この理由は、あらゆるメディアや緊縮派も反緊縮派も、少子化や市場規模の縮小、低生産性を起因として、企業が日本国内で儲からないから投資せずに内部留保を積み上げるんだと説明されます。しかしそんなエビデンスは私が探した限りありませんでした。
※ちなみに、日本においては企業売り上げがマクロで停滞していますので、内部留保を増やしつつ企業投資も増やすという二つは両立しません。内部留保か、企業投資どちらかを優先するかという事になり、企業は内部留保を優先しています。
なぜか隠される企業が内部留保を積み上げる本当の理由
企業が内部留保を積み上げる理由は、東京理科大学経営学部佐々木隆文先生によりサーベイ分析されており、1位は「 将来のキャッシュフロー不足に対する備え」83.9%となっています。つまり、資金ショートを防ぎ、企業の持続性確保のために内部留保を増やしているのです。
この理由が報道されることはなぜかありません。
2位は「将来予想外の投資案が生じた時の備え」となっていますが、投資しても儲からないからとはニュアンスが違い、私の考えでは、この予想外の投資案とは、同業他社が投資を行い、自社製品のシェア縮小が見込まれる場合に同じような投資を行うための備えという意味合いではないかと思います。
むしろ
(15)余剰資金の運用収益率と負債利子率の差
(16)余剰資金の運用収益率と総資本コストの差
(17)余剰資金と他の投資機会からの収益率の差
ここら辺が内部留保を儲からないから積み上げるという意味合いに近いかと思われますが、いずれも重視する企業は2割前後しかいません。
企業はなぜ資金ショートを回避するために内部留保を積み上げる必要性に迫られるのか?
私はこの理由を、BIS規制と、その後の1998年の金融庁の誕生による日本企業が借金できない仕組みに日本が転換させられたからだと考えています。
つまり、企業が窮地(資金不足)に陥ったときに銀行が金を貸してくれない、むしろ金を借りていると貸しはがししてくるような仕組みにしてしまったからだと考えます。
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