既存ソフトのキャラクターや背景を加工して「自作のファンアート」と騙って投稿することは、何が問題なのか


ある「自称絵師(以下A氏)」が、3Dソフト(カスタムキャスト、コイカツ等の類)のキャラクターモデルを手描き風に加工して、それを「自身が描いた」と称し、VTuberのファンアートとして投稿しているのを発見しました。
今回、これは流石に問題であろうと、急遽記事を作った次第です。


何が問題か

まず「描いていないものを、描いたと称している」時点で虚偽の報告をしており、そこには明確な悪意が存在しているワケですが。
一先ずそれは置いておいて、写真や素材を手描き風に加工するといった手法自体は比較的普通に行われておりますが、では本件は具体的にそれらと何が異なり、どこが問題となるのでしょうか。

実は、VTuberさんは自身に送られてきたファンアートを、動画や配信のサムネイルとして使用するケースが多く見られます(今回対象となったVTuberさんもそう)。
で、もしその慣例に則って、何も知らずに、その既存ソフトのモデルを加工したファンアート(?)を動画・配信サムネイル等に使用してしまい、かつその動画・配信が収益化されていた場合、本人の意図とは別に、「他者の著作物を無断で商用利用してしまった」ということになり得るのです。

3Dソフトのモデルの商用利用は、殆どの場合許諾されていないか、メーカーに対し一定の支払い義務が生じます。
A氏は、そのファンアート(?)を「自身の著作物である」と虚偽の報告をすることで、推しにそうしたリスクを背負わせていることは理解しているのでしょうか。想像力ゼロかな。

あくまで「〇〇というソフトを使用して、●●さんを再現しました~!」という表現であったならば、問題にはならなかったでしょうに。


背景も素材を加工しただけだった

また、A氏は、背景については「模写した」と主張しています。
しかし、実際にはご覧のとおり。

比較用

元素材:「きまぐれアフター」様
https://k-after.at.webry.info/201402/article_3.html

完 全 一 致

色味を加工しただけですね。これを模写とは言わん。

笑っちゃったのが、「駅 背景」とかで画像検索すると、このきまぐれアフターさんのイラストが真っ先に出てくるんですよ。隠す気ゼロか。

また本人は「模写」と主張しておけば、類似(というか完全一致なのですが)していても問題にならないと考えている様子ですが、そんなことはありません。仮に模写であっても、立派な著作権の侵害です。
素材について明記しないどころか自分が描いたと言い張り、元の画像を意図的に加工しているので、同一性保持権の侵害にもあたります

ただ、ご存知の方もいるかもしれませんが、こちらの素材配布元である「きまぐれアフター」さんは、実は規約上、商用利用や加工について禁止しておりません。
ではこのA氏の行為が何の問題もないかといえば、当然そうではありません。
いくら商用利用や改変が可であっても「自作発言を許可したわけではない」からです。

素直に「こちらの素材を使わせてもらいました」と報告しておけば、問題にはならなかったのかもしれないのに。
いや~、余計な自己顕示欲を満たそうとしたばかりに、権利侵害になっちゃいましたね。


とはいえ、やはり最後は感情の問題

上記のとおり、法令的にも十分にアウトなワケですが、やはり本件の場合、それ以上に、クリエイターに対するリスペクトの無さが問題でしょう。
大変な労力を要して制作したソフトや背景を無断使用…どころか自作発言。完全にバカにしています

また、きちんと自分自身でファンアートを仕上げている、他の絵師さんにも失礼です。
何時間、場合によっては何日もかけてファンアート制作している人たちを横目に見ながら、既存のソフトでパーツの組合せだけで安直にモデルを作り、フィルターをぽんとかけて「ハイ描きました」とか、不快感は当然ありますよね。

最後に

今回のA氏のような輩は、気付いていないだけで他にも沢山存在しているのでしょう。

VTuberの皆様には自衛をお願いしたいと思いますし、善良なファンの皆様がこういった事態に気付いた場合は、推しが不本意な形で著作権侵害を犯してしまわないよう、それとなく伝えてあげてくださればと思います。

それにしても、今回は我ながら嫌な気持ちになりながらも、必要であろうと思い、しぶしぶこのような記事を制作しました。
次は、もっと楽しいファンアートについての記事を書ければ良いなぁと思いつつ。

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