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『大麻がみたアメリカ』 要約

序文

大麻合法化うんぬんのトピックに最近興味があって、Netflixのオリジナルドキュメンタリー "Grass is greener (2019)" を視聴しました。97分。備忘録として、内容をまとめておきます。ちなみに、大麻=マリファナ。

要旨

アメリカの1930年から続く麻薬戦争は、その根幹に人種差別的な要素を持った戦争であった。大麻自身に、中毒性があり、人体にとって有害である、人を狂乱させる、といったような証拠はない。人種差別が名目上撤廃されようとする中で、国民と文化が黒人化されることを政府は恐れ、黒人を抑圧するための理由づけとして大麻規制、すなわち麻薬戦争を行ってきた。1951年のBoggs Act Mandatory Minimumsを皮切りに、クリントン時代の三振法や、再犯の重刑化などが制定され、それらは大麻弾圧による有色人種の大量収監、長期間の収監をさらに容易とした。大量収監は、刑務所が収入増加のために行うが、その結果刑務所が地区最大の雇用主になるなど自ずと政治への影響力が増すなど、その悪循環は甚だしい。2018年にサンフランシスコで、3038件のマリファナ関連の住民の有罪判決が破棄されるなど、改善の兆しも見えはするが、国全体で見ればまだまだ改善されていない色が強い。
近年の大麻合法化の流れは、一見黒人が社会的地位を向上させる機会を与えているようには見えるが、逮捕歴の多さによる社会的な信用損失や、もともと持っている資本力の格差などにより、チャンスを掴め切れないでいるのが現実である。有色人種の視点からしてみれば、「大麻合法化(大麻を共通認識にしたこと)」が勝利とは言い難い。これまで、大麻の正当性を主張し続け、大麻に関わり続けてきた身として、社会の中で正当な評価を受け、チャンスをつかんで初めて勝利と言える。

補遺

具体的な内容とかで気になったとこも文章として残しておきます。正直まだ調べ切ってなくて、適当なところもあります。

大麻の安全性に関する証拠を示すもの
1949 NY市長 La Guardia が作らせた報告書
「大麻は無害で、犯罪にも無関係、中毒性もない」
1973 ニクソン時代に作成された The Shafer Commission Report
「国の方針(=大麻弾圧)を再考すべき」
(参考: https://www.huffpost.com/entry/shafer-commission-report-_b_2925777)
あとは、Jack Hererによる The emperor wears no clothes も大麻啓蒙書として取り上げられていました。
大麻弾圧の流れ
1930s 麻薬戦争開始。財務省麻薬取締長官Ansligerが、Gore Filesと呼ばれる文書を証拠(実際には正当ではないのだが)をもとにプロパガンダを展開。 (参考: http://reefermadnessmuseum.org/chap10/Why-the-Gore-File.htm)
1970 麻薬戦争を牽引したニクソンの時代。Controlled Substances Act(規制物質法)が制定され、薬物政策の基本に。
1973 麻薬取締局 (DEA: The Drug Enforcement Agency)が発足。薬物をschedule 1~5にclassficationした (1から次第に規制度が下がる) のですが、大麻は schedule 1に分類されます。ちなみに、大麻よりも明らかに有害なコカインは、schedule 2に分類。
具体的なプロパガンダの内容
・殺人事件の報道時、実際には分裂症による結果なのに、あたかも大麻が人を狂乱させるかのように報道。
・数日間大麻を使用していない人間よりも数値の低い大麻検出値を、罪の証拠として認める。
・大麻が他の薬物への入り口になる(「根拠がない」)
有色人種を刑務所にずっと入れ続けるシステム
1951 Boggs Act Mandatory Minimums
1956 Eisenhower Narcotics Act
クリントン時代の、バイデンによる三振法
再犯を重刑にできる制度@ルイジアナ州
大麻税法案→大麻禁止法を有色人種に適用して逮捕
「量刑に下限を設定することが、現在の奴隷制度を可能にする」
大麻と文化
大麻の普及には、音楽が大きな役割を担った(大麻と音楽には大きな関わりがあった)らしい。あまり理解できてないので、曖昧部分多め。
・NYのハーレムにおけるジャズ。大麻+ジャズ。白人女性と黒人の融合。
・Mezz Mezzrowと大麻。彼は麻薬禁止法で逮捕。
・Beatnikの改造概念は大麻から生まれた
・ヒッピー文明は、大麻の合法化に論争を引き起こした。ヒッピーは反戦派であったため、ニクソンから敵視され麻薬戦争の弾圧対象に。
・Ginsburgによる大麻合法化運動
・ラスタファリアンとレゲエと大麻(=ガンジャ)
・Peter Tosh 「大麻を開放せよ、身体に良い」
・Bronxでヒップホップが誕生。ヒップホッパーは、コカインの危険性を歌い、大麻への移行を使命とした。Cypress Hill, Snoop Dogg, Redman, Method Manらが大麻文化の祖先とされる。

調べる必要がありそうなところ

有色人種から見た麻薬戦争のナラティヴなので、有色人種に関する話が多かった。人種差別、刑務所ビジネス問題と麻薬戦争を論理的に結びつけるには、もう少し客観的・相対的なデータが必要かなと思った。
ただ、有色人種の当事者目線から見た、やるせなさや麻薬戦争の歴史に関しては感情的に理解させられる部分も多く、ドキュメンタリーとしての役割は十分に果たしていた作品だと思う。最後あたりに出てくる「5世代にわたって(有色人種を大麻を理由に社会的に)踏み潰しておいて、今までは間違いでした、ごめんね。さあ大麻はいいものなので商売を始めましょうね(+それも、有色人種はビジネス参戦が厳しいという現状)、はおかしいやろ」という女性の表現には、考えさせられた。


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