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日本一長い「私道」

私の道とかいて私道(しどう)。市で管理する道は、市道と同じ読みですが、全く質が異なります。

自分の敷地内に、自分で作った道が私道となる訳ですが、日本で一番長い私道はスケールがとても大きく、カッコイイ施設だったのです。

その私道は、山口県の宇部興産専用道路(31.94km)です。前述の通り、道路交通法や道路運送車両法の規制がないので、車検、ナンバープレート等はこの道路を走るのに必要がありません。

この道路を主に利用しているのは、コンクリートの原料となる石灰を運ぶトレーラーです。

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手前のマークXが全長4.75mと一般的な長さで、トレーラーは、そのおよそ8台分ほどの全長です。荷台1つで40t、計80t積みのトレーラーということです。

一般道路や高速道路などを走行する場合、総重量25tを超える重量を運ぶ場合や、全長25mを超えるものもが走行する場合は、特別な申請が必要になります。

そんな規格外の車両を走らせる経緯には、何かあったに違いないと調べてみました。

歴史をひも解くと、1955年までは鉄道輸送で石灰が運ばれており、輸送量が多く、ローカル線だった宇部線、美称線が国鉄でいう幹線扱いだったほどだったという。

その後、国鉄時代にストライキが頻発し、高額な輸送コスト、単線故の輸送量の限界など、様々な要因から、1972年より運用開始がされているという。

なるほど、「国鉄がやってくれないなら自分でやるわ」という話でした。

しかし、トンネルはあるは、すごく重たい車が走っても大丈夫なトラス橋はあるわ。そのへんの高速道路が裸足で逃げ出せるクオリティーです。

通行量は年間55万台、年間道路維持費は1.5億円にもなるといいます。

そしてこれがその橋です。ゲートブリッジ(東京都江東区)もトラス構造という同じ仕組みを持った橋で、柱が三角形に組み合わされるのが特徴です。

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※宇部興産専用道路(興産大橋)

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※ゲートブリッジ(東京都江東区)

興産大橋は、1982年(昭和57年)に日本鋼構造協会の業績賞を受賞、翌1983年(昭和58年)には民間企業発注の橋としては初めて土木学会田中賞を受賞しており、日本の橋100選なんてものがあれば、ラインナップに入ってくるのではないでしょうか。

ちなみに、興産大橋はおよそ1000mとなっています。ゲートブリッジ(東京都江東区)が、およそ2600m。ベイブリッジ(神奈川県横浜市)、レインボーブリッジ(東京都港区)は、1600m。

東京タワーが333mですので、3本寝かせたくらいとなり、1000mの橋が比較的大きな橋であることが分かります。

その橋を渡ると、興産道路は、文字通り街中を「ぶち抜き」、山の中の採石場に北上していく。

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そして、驚くことに、私道なのにコストのかかるトンネルを掘っています。工事で、後々そのトンネルを一般道としても利用しようと作られることは多いですが、なかなか私道でトンネルとは・・・

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そして、ついた先は採石場。規模がとんでもない。

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そして最も特徴的なのが、この踏切。

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通常道路が交差するのであれば、信号で交通整理を行うのが普通だが、ここでは、止まると再発進が大変な120tにもなるというトレーラーが走行している。そのため、トレーラーが優先される。工場内ではよくある光景だ。

中に入った事がない人も多いと思うので説明すると、

例えば自動車工場で、完成した車両をモータープールへ移動する場合、場内を走行することになる、何人たりとも横切ることは許されず、場内速度を守らなかったタクシー会社が、出入り禁止になったという話まであるほどです。まさに大名行列。


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