19-20シーズンのマンチェスター・ユナイテッド③補強ポイントを考える
①、②はこちらから。
■スールシャール1年目の補強
今回は来シーズンに向けたユナイテッドの補強ポイントを考えていきたいと思うのですが、まずは19-20シーズン(スールシャールフルシーズンの初年度)の補強を振り返ってみましょう。金額はみんな大好きTransfer marktを参考にしました。
IN
夏
ハリー・マグワイア(レスター 8700万ポンド 120億円)
アーロン・ワンビサカ(クリスタル・パレス 5500万ポンド 76億円)
ダニエル・ジェームズ(スウォンジー 1700万ポンド 23億円)
冬
ブルーノ・フェルナンデス(スポルティング 5500万ポンド 77億円)
オディオン・イガロ(上海申花 ローン)
OUT
夏
ロメロ・ルカク(インテル 7400万ポンド 103億円)
アンデル・エレーラ(パリ フリートランスファー)
クリス・スモーリング(ローマ フリートランスファー)
アレクシス・サンチェス(インテル ローン)
アントニオ・バレンシア(フリートランスファー)
主要選手を抜き出してみました。これ以外では冬にアシュリー・ヤングをサンチェス、ルカク同様にインテルへ放出しましたが、左サイドバックとしては守備面、攻撃面でも物足りなさが出てきていましたし、ブランドン・ウィリアムズに目途が立ったというのもありました。
マグワイアはヤング移籍後キャプテンマークを巻きました。ファーディナンド、ヴィディッチ退団後CB2枚とも固定できませんでしたが、マグワイアともう1枚というチョイスができるようになりました(基本的にはリンデロフでした)。最後は昨年まで所属していたレスターを抜いて3位になれたのはマグワイアが1年を通してディフェンスラインの中心にいてくれたことも大きいはずです。
ワンビサカはギャリー・ネビル以来の純粋な右SBと言えるでしょう。バレンシアは長きに渡ってレギュラーとして戦ってくれましたが、元々はウイングでしたからね。しなやかな体の使い方、ノーファウルで奪いきるスライディング。何度となく右サイドの守備を助けてくれました。来シーズンはビルドアップでの貢献、攻撃面でのサポートを期待したいところです。リバプール、シティを見るとより思います。
フェルナンデスは言わずもがな。冬に加入するとすぐにチームにフィットし、一人でチームを変えてくれました。彼の加入によってポグバにかかる攻撃面での負担も軽減されていました。守備でも奔走してくれるし、本当にいい選手を補強できたものです。
イガロはルカクを放出したことで不在になっていたターゲットマンとしてやってきました。本人がユナイテッドファンということもあり、SNS上でも相当ポジティブなコメントを出してくれていました。カップ戦ではスタメン、リーグ戦でもリードした場面で登場し、時間を使う役割を担ってくれました。
こうしてみると補強に関してはかなり評価できるのではないでしょうか。もちろんどこまでスールシャール含めて現場が関与できているかは分かりませんが、少なくともファン・ハール、モウリーニョのときのように大金を積んで獲得したのに結果を出せないという選手が誰もいませんでした。
プレミアリーグで実績がある(マグワイア、イガロ)、若く将来がある(ワンビサカ、ジェームズ)、長くスカウティングを行ってきた(フェルナンデス)と一貫した補強をしているなという印象です。この考えは来シーズン以降も変わることはないでしょう。
■現在上がっている名前
補強についてアレコレ妄想するのはファンの特権。ということで現在ユナイテッドの補強について出ている名前をさらってみましょう。今回は『Sky Sports』の「Manchester United transfer news and rumours」を参考にしました。ゴシップ紙の報道含めてユナイテッドの補強をまとめたリストです。上に書いている2名を詳しく見てみましょう。
まずはドルトムントのサンチョ。シティのアカデミーからドルトムントに加入。19-20シーズンはブンデスで17ゴール、17アシスト。20歳という年齢、スピードに溢れる。スールシャールが好きそうな選手です。
ドルトムント側はサンチョが移籍した場合に備えた代役の補強も考慮し、プレシーズントレーニング前に交渉を終わらせたかった様子。ドルトムントの公式TwitterでもツォルクSDが「サンチョは我々の計画の一部だ。来シーズンもドルトムントでプレーをする。これですべての質問に答えられる」とコメントしています。
しかしユナイテッド側はまだサンチョ獲得を諦めていないとも言われています。
続いてアストンヴィラのジャック・グリーリッシュ。ヴィラのアカデミーからそのままトップチームに昇格。24歳で10番を背負って、キャプテンマークを巻いています。昇格1年目のヴィラの残留に貢献しました。中盤でダイナミックにプレーをするタイプ。8ゴールも挙げているだけに、より攻撃にアクセントがあるプレイヤーのようです(それほど見たことがないので何とも…)
極端なことを言ってしまえば、ヴィラが降格していれば獲得へのハードルは一気に下がったのかもしれませんが、残留を決めた以上ヴィラ側もそう簡単には手放さないでしょう。
サンチョとグリーリッシュの2名に文字数が割かれていますが、他に名前が出ているのはレスターの左SBのチルウェル、リールのCBのマガリャンイスです。
■補強ポイントを妄想してみる
上述のような選手たちがメディアで取りざたされていますが、何度も言うように補強を妄想するのは自由。個人的な補強ポイントを書いていきましょう。
①マグワイアの相棒となるCB
マグワイアの欄でも書きましたが、ほぼフル稼働でした。終盤スピードで振り切られたり、ビルドアップでミスが目立つようになりました。ユナイテッド移籍1年目、記事によれば付け根に痛みを抱えながらプレーをしていたともありました。移籍金も相当な額でしたから、心身ともに負担がかかっていたと推測されます。負担を軽減できるCBを補強したいところです。
現在はリンデロフとバイリーが候補になりますが、前者はフィジカル面での不安は否めず、後者は軽率なミスが未だに目立ち何より怪我が多い。スモーリングの去就は不透明、申し訳ないけれどジョーンズでは厳しい。プレミアを勝ち取り、ヨーロッパコンペティションでの復権を狙うのであればもう一枚CBは必要でしょう。
シティはすでに降格したボーンマスからアケを獲得しています。左利きで足元に優れたCBということでペップの理想といえるかもしれません。ユナイテッドも早めに手を打たねば。その点でリールのマガリャンイスの名前が出ているのはそういうことなのでしょう。ポゼッションを譲る相手の際に3バックを使用することを考えるとCBの層は厚くしたいところです。
②マティッチの後釜
ブルーノ・フェルナンデス加入後のユナイテッドの中盤の構成は基本的にフェルナンデス、ポグバ、マティッチとなっていました。前へのパワーが強い二人を中盤の底で支え、バイタルエリアでの守備やディフェンスラインからボールを引き出す動きを一手に引き受けていたのがマティッチ。
シーズン序盤は低パフォーマンスや怪我でフレッジ、マクトミネイ、ペレイラが優先的に起用され、冬のマーケットで放出かという噂まで出ましたが、後半は見違えるようなパフォーマンス。23年まで契約延長をしたくらいです。
とはいえマティッチも32歳。コロナの影響で来シーズンも過密日程が予想されますし、CLもある。シーズンフル稼働は難しいでしょう。4-3-3だろうが4-2-3-1だろうがマティッチのようなプレーができる選手がもう一枚必要だと思います。フェルナンデス、ポグバはより前線と近い位置、相手PAの近くでプレーして欲しいですからね。
今のスカッドだとマクトミネイが一番近い存在なのかもしれませんが、相当なハードワークが要求され、カードの累積なども気になるポジションです。単純に枚数としてもう一枚必要では。グリーリッシュはより攻撃に軸足があるプレーヤーだと思うのですが…
③ヨーロッパコンペティションで通用するアタッカー
スールシャールは基本的に4-3-3、4-2-3-1を志向します。そう考えるとアタッカーが置けるのは3枚(ウイング+センターフォワード)。右からグリーンウッド、マルシャル、ラッシュフォードが基本になっています。ここにジェームズ、マタ、リンガード、イガロがバックアッパーとして控えるという状況です。
CLに挑むことを考えるとスタメンとして起用している3枚に劣らないアタッカーがもう一枚欲しいという気持ちは分かります。そこでサンチョということでしょう。グリーンウッドもまだ10代で彼にあまりにも大きな期待をかけるのは酷ですからね。
イガロは21年1月まで残ることは決まっているけどそれ以降は不透明。リンガードはもう一皮むけきれない。現状考えるとスピードあるジェームズ、今のユナイテッドにはないリズムをもたらしてくれるマタの2枚しかベンチにシーズン通してアタッカーのポジションで計算できる選手はいないと思っています。
④それ以外
①~③が重要と考えている補強ポイントですが、他にパッと補強ポイントを挙げればディフェンスラインのユーティリティー的な選手です。少し前のウェズ・ブラウンとジョン・オシェイのような。最終ラインならどこでもできるような。
右SBはワンビサカにおんぶにだっこだし、ショー以外に左利きのSBがいない。全体的にディフェンスラインは薄い印象です。3バックを採用するときも考えるとフォス・メンサー、ダロト、ウィリアムズあたりにはもっと成長してほしいと思っているはずです。
スールシャールの中にはアカデミーからの昇格組というのも頭にあるはずです。自身もアカデミーの監督を務めていましたし、グリーンウッド、ウィリアムズといった選手を積極的に起用しました。リンガード、ペレイラ、マクトミネイといったすでにトップチームでプレーしている選手、トゥアンゼベ、ガーナーといったデビューを果たしたばかりの選手。同じ能力の選手を外から連れてくるのであれば、彼らを使おうと思っているはずです。
アカデミーと補強の組み合わせ。これがユナイテッドの強さの源泉でもありますから、バランスを見ながらの補強をしてもらいたいなと思います。そしてヨーロッパリーグと優勝して、20-21シーズンを迎えてほしいです。
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