トーラーとは

ヘブライ語の聖書の冒頭には5つの書があるらしい。創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記という。これらのことを『モーセ五書』と言い、これがすなわちトーラーである。このモーセ五書は、世界の三大宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の基礎となっている。

五書は、伝統的にはシナイ山でモーセに授けられたと信じられてきたが異説もあるようだ。トーラーは紀元前10世紀から前6世紀のあいだに書かれたものだと考えられてきた。文書仮説という。

創世記は、私達にも馴染みがある。あのスティーブジョブズの映画の中で、世界は5日間で作られたのだから、なんとかできるだろ!という台詞などでも使われている。天地創造の物語が記されているものだ。このほか、レビ記は神に礼拝するときの規則と儀式、申命記はイスラエルの人々の歴史と道徳上の教えについての説教で構成されている。

トーラーは当初から口伝で伝えられてきた。トーラーを完全に理解するためには口伝が欠かせないとされた。後に文字で記録する必要性ができ口伝律法の集大成ミシュナーが編纂されたが、こののち律法学者たちラビによってトーラーとミシュナーをめぐり討論された議論をまとめるための解説書として、タルムードが書かれた。ユダヤ教では、トーラーのテキストを使って数々の規範や習慣を導き出してきた。

ちなみに、キリスト教徒は、モーセ五書に加えてユダヤ教文書を加えたものを旧約聖書と呼んでいるという。なんとも狭いところで3つの宗教が入り混じり、複雑化し、長い年月で熟成されていることか。世界は風通しが悪い。


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