『キャプテン翼』開始時、「サッカー漫画が他になかった」というのは本当か
高橋陽一先生曰く
1981年に始まった『キャプテン翼』は、「サッカー漫画」というジャンルを大きく切り開き、日本のサッカーに絶大な影響を与えました。
作者の高橋陽一先生は、どちらかといえば野球の方が好きっぽいのですが……。
という理由で、サッカーを選んだそうです。
補足
実際、当時野球漫画が圧倒的に主流だったのは、間違いありません。
『週刊少年ジャンプ』誌上でも、1970年代には、
……といった野球漫画が連載したのに、サッカーの連載は数作品だけ。
漫画界全体でも、1981年以前に「大ヒットしたサッカー漫画」と言えるものは無かったと思います。
「サッカーマンガがほかになかった」
それで、『キャプテン翼』の高橋陽一先生は、次のように仰っています。
しかし、この「サッカーマンガがほかになかった」という話には、若干、疑問があります。
『キャプテン翼』の10年くらい前
いちおう、今日の本題は、『キャプテン翼』が始まる直前の数年間に『週刊少年ジャンプ』に連載していたサッカー漫画の話なのですが……。
1960年代後半ごろの話も、少しだけ書いておきます。
『ハリスの旋風』
とりあえず、『ハリスの旋風』や『夕やけ番長』など、「スポーツ万能の主人公が色々な競技をしていく漫画」の中で、「サッカー編」が描かれることはありました。
サッカー専門の漫画ではないのですが、サッカーを題材にした漫画で、早い時期に人気があったものだとは言えます。
『赤き血のイレブン』
そして、1969年から『週刊少年キング』に連載した『赤き血のイレブン』は、「サブマリンシュート」「ブーメランシュート」などの必殺シュートが出てくるサッカー漫画でした。
月曜の夜7時からテレビアニメも放送されて、
『近代映画』1970年5月号では、スポーツ漫画の新番組として、サッカーの『赤き血のイレブン』とボクシングの『あしたのジョー』を並べていました。
曰く、
とのことで、1970年当時、サッカーが静かなブームだったらしいです。
なお、この『赤き血のイレブン』には、美杉 純(みすぎ じゅん)というキャラクターも登場します。
なお、『赤き血のイレブン』の美杉純も、こんなゴルゴみたいな顔で「美少年」という設定らしいです。
『青春にキック!』
また、『小学五年生』1969年3月号~『小学六年性』1970年4月号には、横山まさみち先生の『青春にキック!』が連載。
第1話はこんな感じで……。
1ページ以上使って丁寧にトラップの説明から始めているのは、60年代っぽいかも知れません。
『くたばれ!! 涙くん』
『週刊少年サンデー』でも、1969年7号~1970年45号に『くたばれ!! 涙くん』が連載。
これはネットで全話無料で読めるので、レトロ漫画が好きな方にはオススメしたいです。
ちょっとだけご紹介すると、この漫画、相手選手を踏み台にしてジャンプしたりするノリで……。
コイツが、いままで一度も失点したことがないというキーパー「ゼロの黒豹」さんです。
この「Vキャッチ」から得点しようと思ったら、死を覚悟する必要があります。
時代背景?
1968年10月、メキシコ五輪のサッカーで日本が銅メダルを獲得。
世間は大いに盛り上がり、7得点をあげた釜本選手は少年たちの憧れになりました。
さらに、『週刊少年マガジン』の野球漫画『巨人の星』が大ヒットしたので、他誌が「ならばこっちはサッカーで…」と企画したりして、
など、サッカー漫画が一時的に増えました。
そうして、1969~1970年ごろに、サッカー漫画の「静かなブーム」みたいなものがあったと言えそうです。
しかし、ここから大きなヒット作は生まれず、1973年~1978年ごろは、サッカー漫画の新連載が少なくなります。
『ヘッド!牙』
てことで、ここからは『週刊少年ジャンプ』の話をいたします。
少年ジャンプでは、他誌より少し遅れた感じで、
1971年11月から『ヘッド!牙』という短期連載を載せました。
試合当日、主人公チームの主力6人が留置所に入っていて試合に出られないというピンチに。
しかし、そこから6人が留置場を脱走して試合に駆けつける! という感じの熱い漫画でした。
あと、相手チームは審判を買収していて……。
と、試合中に殴ったり蹴ったりしてくるのですが、主人公たちは、歯や肋骨を折られながらも、骨折した足でボールを蹴って勝利しました。
『ザ・キッカー』
さらに、『ヘッド! 牙』から半年ほど後、同じ作者(望月三起也先生)による『ザ・キッカー』という短期連載も載りました。
実話ベースなので『ヘッド! 牙』ほどハジけた内容ではないのですが、最終回でキーパーに殴られるのは同じでした。
補足:単行本のこと
『ヘッド! 牙』『ザ・キッカー』のジャンプコミックスは出ませんでしたが、だいぶ後になって、ひばり書房からこの2作をまとめて収録した単行本が発売されました。
ただ、この単行本、雑誌掲載時は「チンポコすれすれ」だった台詞が「チンポコごしごし」に変わっているのが謎です。
元々、「菊川選手がお風呂に入っていたら、祖父が風呂に突き立てた日本刀が、菊川選手のチンポコすれすれを通過した」という、理解しがたいシーンなのですが……。
「チンポコすれすれ」なら意味が通るところ、「チンポコごしごし」だと菊川選手が脈絡なくオナり始めたみたいで、修正の意図が分かりません。
『さよなら初恋さん』
それから、1972年48号には、平松伸二先生(新人)による『さよなら初恋さん』が掲載。
この読切には、のちの『キャプテン翼』の「スカイラブ・ハリケーン」に似た技が登場します。
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