ジャンプノベルの思い出
私の感覚では今日は11月3日のハズなのですが、カレンダーを見ると11月7日と書いてあって、何がなんだか分かりません。
更新間隔が開きすぎてしまったので、過去に雑誌に書いた記事の再掲載をさせていただきます。
以下は、2002年6月の『二次元ドリームマガジン』vol.5に書いた文章の再掲載となります。
(やや現在視点の加筆改稿をいたしました)
ジャンプノベルとは
いまから30年近く前。
『週刊少年ジャンプ』は1991年3・4号で600万部を超えて、お化け雑誌と呼ばれていました。
そんな1991年の夏に、『ジャンプノベル』という雑誌が作られました。
ジャンプ読者の若い衆に活字も売ろうと企画されたもので、年2回発行で8年ほど続きました。
『ジャンプノベル』に掲載された小説は、次の3種類に分けることができます。
(1)ジャンプの人気漫画を小説化したもの
(2)ジャンプ読者向けに、実績のある小説家が書き下ろした新作
(3)「ジャンプ小説・ノンフィクション大賞」で発掘した新人の作品
そのすべてに、ジャンプでおなじみの漫画家による挿し絵が付きました。
ただし、(2)の原稿料の高そうな方々の挿し絵は、それなりの人気漫画家が担当。
(3)の新人さんには、10週打ち切りの新人漫画家などがあてがわれるケースが多かったように思います。
ジャンプノベルの表紙
『ジャンプノベル』の表紙の歴史を振り返ってみます。
創刊当初は、何を思ったのか、有名人の似顔絵シリーズでした。
(シュワルツェネッガー、夏目漱石、コロンブス)
しかし、vol.4で、普通に『ジャンプ』の人気漫画を表紙にした方がウケが良いという事実に気が付いたようです。
それから、たまに人気アイドルを試すこともありましたが……。
おおむね、「ジャンプ漫画の小説版が載っていますよ」というアピールに落ち着きました。
並べると、次のような感じです。
(基本的に『ジャンプ』と同じサイズですが、Vol.1だけ横幅がデカくて読みにくかったです)
アイドルは内田有紀さんと広末涼子さんということで、懐かしいですね。
基本的に、ジャンプノベル発のオリジナル小説は表紙になりませんでしたが、vol.13のみ『おいしいコーヒーのいれ方』が表紙を飾りました。
ジャンプノベルについて
新聞報道などによると、『ジャンプノベル』の発行部数は12万部前後。
2002年の時点で、集英社の『小説すばる』は3万部。一番売れている小説誌でも10万部程度なので、小説誌としては売れていたと思います。
ただし、漫画誌と比較すると、先日休刊になった『エースネクスト』の半分ほどの発行部数となります。
2020年現在、『小説すばる』の印刷部数は9000部。文芸誌で比較的売れているのは『オール讀物』の4万部弱といった感じです。
『ジャンプノベル』に載った小説は、「ジャンプ ジェイ ブックス」という新書サイズのレーベルで単行本化されました。
イラストが多くて、余裕のあるデザイン。
漫画好きの子供が取っ付きやすくしようという工夫がされていました。
『きまぐれオレンジ★ロード』や『バスタード』の小説版の単行本は30万部を超え、『スラムダンク』も20万部ほど売れたそうです。
ちなみに、これを見た講談社も似たようなことを始めて、テレビドラマ化に合わせて出した『金田一少年の事件簿』の小説版は、2冊で130万部を超える大ヒットを飛ばしました。
それから、エニックスなども似たような「漫画の小説版」を出していきます。
(1)人気漫画の小説化
話を『ジャンプノベル』に戻します。
『ジャンプノベル』で小説化された漫画を列挙すると……。
『ジョジョの奇妙な冒険』『シティーハンター』『MIND ASSASSIN』『地獄先生ぬ~べ~』『ワンピース』『Dr.スランプ アラレちゃん』『ろくでなしブルース』『遊戯王』『キャプテン翼』『スラムダンク』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『WILD HALF』『ソムリエ』『I''s』『CAT'S EYE』『テニスの王子様』『人形草紙あやつり左近』『銃夢』『BOY』『サラリーマン金太郎』『るろうに剣心』『アウターゾーン』『北斗の拳』などなど。
バトル・スポーツ・ラブコメ・青年向け・女性向け・新作・旧作……。
試せることはだいたい試している印象です。
(『ドラゴンボール』がなかったのが不思議でしょうか)
ノベライズの内容は、原作にないオリジナルストーリーで独自の世界観を築き上げた良作から、単に漫画のあらすじをなぞっただけのダメ作文まで色々でした。
『バスタード』の小説版は、漫画の第1話以前、四天王を率いる悪党だった頃のダーク・シュナイダーの話というコンセプトは興味深かったです。
昔のダーク・シュナイダーには少年誌ルールも適用されず、萩原一至先生も、本番シーンの挿し絵を描いてくださいました。
『BASTARD!! II 悪魔の褥に横たわりて』
また、旧作のリバイバルとして力が入っていたのは、『きまぐれオレンジ★ロード』の続編という形で発表された『新きまぐれオレンジ★ロード』でしょうか。
しかし、ひたすら寸止めの三角関係を続けた登場人物たちが大人になった姿は、個人的には懐かしいというより、つらいものがありました。
たとえば、旧作では清純な少女だったひかるちゃんも、20歳になれば当然のように非処女です。
「ひかるは、彼らとの交際で、はじめて恋人じゃなくても、ベッドを共にすることがあるのだということを知った。彼らとは、いまでも向こうで時々会う。寝る時もあれば、そうじゃない時もある」
(『新きまぐれオレンジ★ロード』171頁)
そんなひかるちゃん、見たくありませんでした。
富田祐弘先生のアレ
それから、多くの若い読者がお世話になったジャンプ漫画としては、桂正和先生の『電影少女』も有名です。
(パンツ・乳首は当たり前。本番の描写こそなかったものの、強姦未遂やバケツ放尿など、大暴れでした)
そんな『電影少女』の小説版は、『美少女戦士セーラームーン』や『愛天使伝説ウェディングピーチ』でおなじみの脚本家・富田祐弘先生が担当。
当然、大きなお友だちをターゲットにしたエロ小説であるべきでしたが、なぜかエロ描写はほとんど無し。
(桂正和先生の挿し絵に乳首が出てくる程度)
数少ないお色気シーンは、過去に富田祐弘先生が書いた別の小説からの使い回しでした。
※いちおう、比較を載せておきます。読み飛ばしてください。
(スーパークエスト文庫『超時空要塞マクロスⅡ VOL.3』136~137ページ)
「いらない」
ヒビキが答えると、シルビーは冷蔵庫に向かい、中から牛乳を取り出してゴクゴクと飲んだ。
「コーヒーでも入れるわ」
シルビーの動きは俊敏だ。
肉体は調和がとれ、ひきしまっている。
――裸になったら美しいかもしれないな?
ふいにヒビキの心に邪心がわいた。
ほんの一瞬だが、ガウンをはぎ取ってみたい衝動にかられた。
――いや、それよりも、彼女の硬い鎧のような軍服を脱がしてみたい。
シルビーの裸体の美しさがイメージとしてヒビキの心に滲み込んできた。
――張った胸……しかし、肩は軍服を着ているときと異なってなだらかな曲線だ。
――乳房は性格と同じように高慢に突きたっている。
――右の乳首は少し硬い。訓練で銃を構えるとき銃尻を乳房の位置にあてがうからだ。
――くびれた腰、長く均整の取れた脚。その上部の三角形の影は……。
ヒビキはシルビーの肉体に興味を持ったことに自分自身で驚いた。
それはいままで頭の片隅にさえも感じたことのない思いだった。
――肉体的な魅力を秘めている。
シルビーという女の子の肉体の魅力に強く惹かれた。
いままでの敵意と嫌悪感と苛立ちがいつの間にか薄れていくような気がした。
(ジャンプジェイブックス『電影少女』128~129ページ)
「いらない」
冷蔵庫から持ってきた牛乳をゆうはゴクゴクと飲んだ。
「少し飲む?」
ゆうがスルスルッと修二の近くまで寄ってきて牛乳瓶を差し出した。
動きは俊敏で優雅だ。
近づいてくると、ほのかな化粧水の香りがした。
――ガウンをはいで、裸にしたら美しいかもしれないな?
ふいに修二の心に邪念が湧いた。
ほんの一瞬だが、ガウンをはぎ取ってみたい衝動にかられた。
電影少女の身体がどうなっているのか、調べて見たいと思った。
ゆうの裸体の美しさがイメージとして修二の心に滲み込んでくる。
――まるくやわらかくふくらんだ胸。
――乳房は生意気そうに突きたっている。
――くびれた腰、若鹿のようにすらりと伸びた脚。その上部の三角形の影は……
修二はゆうの肉体に興味を抱いている自分を恥じた。
だが、情念が恥の心を凌駕する。
――魅力を秘めているゆうの肉体。
修二の若い体内に欲望が燃え上がった。
心の中を覆っていた今までの苛立ちがいつの間にか消滅していくような気がした。
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