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黒岩よしひろ先生の思い出

本日中にあと3回更新したいです。

このページの記事は、2001年12月の『二次元ドリームマガジン』に書いた文章(に手を加えたもの)です。
『サスケ忍伝』『魔神竜バリオン』『変幻戦忍アスカ』『不思議ハンター』『流星超人ズバーン』のネタバレが含まれます。

 

前置き

黒岩よしひろ先生をご存知でしょうか。

『週刊少年ジャンプ』に4度連載し、そのすべてを10~18週で打ち切られた漫画家さんです。

単純な「打ち切られた本数」では次原隆二先生に譲りますが、『よろしくメカドック』が成功した次原先生と違って、黒岩よしひろ先生は『週刊少年ジャンプ』ではオール打ち切り。
無意味なパンチラ
無念さの漂う最終回によって、打ち切り作家としての印象は強かったです。

以下、その『ジャンプ』誌上での軌跡を振り返ってみたいと思います。

 

サスケ忍伝

全10週。1986年32号から始まった、黒岩先生の初連載です。

1986年当時の連載陣。レジェンドだらけです

「和風ヒーローが妖怪じみた敵とバトルしてパンチラ・乳首・打ち切り」という黒岩作品の基本形は、すでに完成していました。

ヒロインの美琴ちゃんは「忍法・恋のロープをほどかないで」の使い手

主人公のサスケは、「都会派忍者になれ」という師匠の言いつけに従って、一般人の番長を忍法で叩きのめしたり、帯刀したままドッヂボールをしたりと学園生活を満喫。

そんな彼を、悪の変態忍者軍団が狙ってきます。
そうして刺客を何人か倒して、そろそろ物語が盛り上がってくるのかな……というところで打ち切られました

最終回では、

  • 朧の才蔵

  • 青い瞳のスケバン イサミ・デューク

  • 剣道部主将 筧十刀

  • 番長連合第一隊長 望月六狼

など、これから仲間になる予定だったと思われる真田十勇士っぽい新キャラたちが、大量かつ唐突に登場。

最後は主人公が叫びながら突っ込んでいく見開きでした。

「おおりゃあ!!」完

典型的な「戦いはこれからだ!」で、系統としては、のちの『タカヤ』に受け継がれる感じでしょうか。

「よっしゃあああッッ」THE ENDォオ!!

こうして『サスケ忍伝』は、黒岩よしひろ先生のはじめての打ち切りとなったのでした。

高橋よしひろ先生と黒岩よしひろ先生の並び

単行本の「あとがき」では、いつか『サスケ忍伝』の続きを描きたいという思いが語られていました。

はっきり言って、未完です、この物語は…。決着もつかずに終わってしまった。
(中略)
初めての連載作品なのに、こーゆー形で終わるのは、はっきし言って、くやしいもんです。
この物語… いつか決着つけたいです。いや、つけます。何年… 何十年かかろうと、きっと…」

 

魔神竜バリオン

全11週。1987年22号から始まった、連載2作目です。

前作の忍者モノから趣向を変えて、少年が巨大ロボに乗って戦う特撮的な方向性が試されました。

パートナーの女の子は人形サイズのロボットです

この漫画は、ライバルと決着をつけていよいよ敵の本拠地に乗り込むぞというところで打ち切り。

「今! オレと魔神竜が行く!!」

2回続けてのこういう終わり方で、負のインパクトが大きかったです。

『少年チンプ』という同人誌で黒岩うちきり先生とネタにされたりしました。(「10週の連載を乗り越えることなくバサスケンは、3ページで早くも飛び立った」)

単行本の「あとがき」では、そのうち『バリオン』をリメイクしたいという思いが語られていました。

こいつも未完のまま終わっちまったい
(中略)
そのうち、装いも新たにとゆーか、本当の(連載ネームの時に、ボツになってお蔵入りした)バリオンをかくぜ!!
こいつは、一部の人しかしらんけど、本当のバリオンは違うのさっ!
今、おいらのブレーンスタッフと共に、三部作として着々とネタをあっためてるからね」

 

変幻戦忍アスカ

全18週。1988年23号から始まりました。
これまでの単行本は全1巻だったところ、はじめて単行本全2巻を達成した作品になります。

この表紙すきです

前作『バリオン』は編集の口出しが多かったようなのですが、今回は
「担当さんに、好きなテーマで自由にかいてと言われ、のびのびと全力でアタックできました」
とのことでした。

てことで、『サスケ忍伝』のリベンジとなる忍者モノ。
それも、主人公が変身美少女というテーマで勝負に出ました。

ムチムチの女の子がドスケベレオタード姿で戦います。

なお、連載時期は『舞って! セーラー服騎士』と重なっており……。

この3年後くらいに『美少女戦士セーラームーン』が始まって大ヒットすることになるのですが、『変幻戦忍アスカ』と『舞って! セーラー服騎士』を混ぜてもう少し頑張ったらセーラームーンになりそうな気がしないこともありません。(なりません)

※『セーラームーン』が90年代を作ったコンテンツなのに対して、『変幻戦忍アスカ』や『舞って! セーラー服騎士』は70~80年代を引きずった漫画です。でも、セーラームーンに至る歴史の道程にある作品なのかも……とは思います。

ともあれ、『変幻戦忍アスカ』もいつもの感じで打ち切られてしまいました。

今っ! 変幻戦忍アスカが行く!!

ただ、今回は単行本が全2巻ということで、ページに余裕があったようです。

第2巻で51ページほど描き足されて、駆け足ながら、はじめて物語が完結しました。

単行本のラスト。ラスボスを倒して勝利を噛みしめております

この単行本では、ジャンプ本誌に載った最終回のラスト4ページはなかったことになりました。
(先ほどの「行けアスカ!! 変幻戦忍アスカよ!!!」というページも単行本には収録されておらず、もはや忘れ去られたと思います)

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