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『マネーの虎』の抱き枕の回について

この記事は、12月31日に間に合わなかった「12月分の更新」を、1月5日に「追記」の形で更新したものです。
(作業量の見積もりが甘く、お正月の間ずっとこれを書いていて、やっとできました。大変申し訳ございません)

今回は、2002年に放送された『マネーの虎』の「抱き枕会社設立資金1000万円欲しい!」の回について、前後の歴史を踏まえた感想です。

現在では、アニメの抱き枕が公式から出るのも普通になって、古くから抱き枕に着目していた志願者の先見性は確かでした。
ただ、もしもあのときに出資があったら、志願者のビジネスは成功していたのかというのは、また少し別の話かも……みたいな私見を、長文で垂れ流します。

 

等身大キャラクター抱き枕の前史

ラブラブシーツ

二次元の「デカい布」としては、抱き枕よりも古くから、シーツがいくつか出ていました。

たとえば、1995年3月発売のスーファミのゲーム『ラブクエスト』では、アンケートに答えると抽選100名にラブラブシーツが当たりました。

『Virtual IDOL』Vol.1・Vol.2

こういうのは『ラブクエスト』が最初というわけでもなくて、もっと前に『ドラゴンナイト』のシーツとかもありました。

 

抱きしめるにはちょうどいいサイズのまくら

それから、1995年には、エルフが『同級生2』のまくらを発売しています。

『Virtual IDOL』Vol.5(PCエンジンファン 1995年11月号増刊)

「ギュッと抱きしめるにはちょうどいいサイズ」とのこと。
抱きしめる用途を想定した枕で、美少女の全身が印刷されているという点では、いまの抱き枕の先祖的なものと、言えなくもないかも知れません。

ただ、90センチに全身が入っているので、かなり絵が小さいです。

現在の等身大の抱き枕は、二次元の女の子がそこにいるような存在感で、添い寝したり抱きしめたりできるリアルな仮想であるわけですが、このサイズだと、そこまでの没入感を得るのは難しいと思います。

今風に例えるなら、『同級生2』のまくらは、小人化で没入できないVR AVみたいなものかと存じます。

 

日本で初めて商品化された抱き枕

一般に「日本で初めて商品化された抱き枕」とされているのは、1996年に発売された、ロフテーのボディーピローらしいです。

(「抱き枕」の定義にもよるかも知れませんが……)
とにかく、ロフテーが「日本で初めて商品化された抱き枕」としているのは、

という感じの安眠目的の無地の寝具で、特にオタク向けのアイテムではないやつでした。

こういうのが1996年から、それなりに世間に広まります

 

現在のような等身大キャラクター抱き枕の誕生

『ときメモ』おやすみシーツ

そして、1997年1月。
『ときめきメモリアル』のおやすみシーツが発売されました。

『イラストレーションズ』によると「97.01」発売

このシーツが、現在広まっているような「二次元キャラの等身大の抱き枕」が世に現れるきっかけとなりました。

というのも、

チャンコ増田さんの同人誌『萌え萌え生活 夏の特大号』(1999年8月)

この本に、石原哲さんという方(HP)が書いた話によると……。

・ある日、おやすみシーツを買った
・その頃、ロフテーのボディーピローみたいな「普通の抱き枕」が世間で流行っていて、単なる寝具として使うつもりで、布団屋で120cmの抱き枕を購入した
・インターネットで「毛布を丸めたものに、おやすみシーツを巻きつけて一緒に寝ている」といった発言を見かけた
・ふと、布団屋で買った抱き枕に、おやすみシーツをかぶせてみたところ、脳が破壊されるほどの衝撃が走った

という経緯で、等身大抱き枕の素晴らしさに気がついたそうです。

そして、布団屋に170cmの枕と、おやすみシーツの加工を注文。
抱き枕カバーとして使う用に加工されたおやすみシーツ(ファスナー付き)を、170cmの本体に装着して、抱きしめたり見つめ合ったりを堪能したということでした。

このことから、石原哲さんは、現在広まっているような等身大抱き枕の原型を考案した人物として知られており、スカパーの番組に出演したりしました。

彼の影響などから、一部の『ときメモ』ファンの間で、「丸めた掛け布団+おやすみシーツ」「加工して抱き枕カバー化したおやすみシーツ」といった、黎明期の抱き枕の愛用者が増えました。

そこで、じゃあ加工済みの抱き枕カバー(等身大の美少女が描かれたもの)を同人グッズとして作ってみようと企画したのが、かの有名なチャンコ増田さんでした。

 

伝説のマルチ

そして、1997年10月26日に開催された「Leaf Fan」という同人イベントで、チャンコ増田さんがマルチの抱き枕カバーを頒布。

アーカイブ

それが「日本で初めての等身大のキャラクター抱き枕の頒布」だと言われております。

1枚8000円で、このイベントだけで200万売った(もしくは200枚売った)という話で、その数字はかなりスゴい気がします。

その後も、チャンコ増田さんは『痕』『機動戦艦ナデシコ』『カードキャプターさくら』などの同人抱き枕を出し続けました。

チャンコ増田さん(増田学さん)は、1993年11月~1997年5月に『ファミ通』の編集者をしていた方。
編集をやめた後は、ぬいぐるみ・ステッカー・カードなど、同人のキャラクターグッズを作って売るのを仕事にしていて、抱き枕も、その主力商品のひとつという感じになります。

 

90年代終わりごろ

それに影響を受けて、あとに続く人たちも現れます。
たとえば、岡山健さんのサイト「抱き枕統一協会」では、

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